松沢呉一のビバノン・ライフ

農業の現場からも「食糧危機が来る」との警告が出始めた—原油・資材・肥料・農薬・飼料の高騰で廃業する農家が激増か?-(松沢呉一)

 

飢餓に直面しているのは難民だけではない

 

vivanon_sentence駒沢公園で無数の難民がテント暮らししている夢を観ました。

私は食料配布の活動をしているのですが、彼らに「どうして難民になったのか」「どうして日本に来たのか」を聞いてもしょうがないし、宗教や民族対立の話を聞いても理解できないので、そんなことは一切聞かず、ただ「どのくらい腹が減っているか」だけを聞きとりし、その程度に合わせて食料を配布することにしました。

ところが、全員揃って、「餓死寸前」と答え、聞く意味がありませんでした。食料は数分の1に渡る程度しかなく、子どもに優先的に渡すとして、大人は餓死やむなしかと思い始めましたが、そんなことになったら暴動が起きます。どうしようもなくて途方に暮れました。

という夢。

駒沢公園に難民はいないですけど、世界中の難民はこういう状態。干ばつや洪水など気候変動のために小麦やトウモロコシが高騰し、援助の予算でもっとも安価に買える食料の量が減っていて、助かる人の数も減ってます。

オーストラリアが顕著であるように、穀物生産量が減っています。もともと世界の食料生産量はすべての人類が十分に食べられるほどはなく、億単位の人が栄養不足の状態に置かれており、これは難民だけではありません。この生産量がさらに減る時、飢える人たちがさらに出ることは避けられない。

というのがここまで見てきた食糧危機の構図ですが、日本国内の農業生産者からも「日本でも遠からず食糧危機の時代になる」という警告が出てきています。

※YouTubeに繰り返し出る国連UNHCR協会の広告

 

 

「日本農業新聞」が伝える農業の危機

 

vivanon_sentence昨年11月に出た「日本農業新聞」の記事が農業関係者に大きな衝撃を与えたようです。

 

2021年11月4日付「日本農業新聞

 

 

この記事の中でも、酪農家にとっては飼料の高騰がダメージになっている旨が書かれていますが、全体としては原油の値上がりよる影響が大きそうでず。タイトルにある「重油、資材、飼料、肥料」のうちの「重油」は、ハウス栽培用です。「加温期の11~3月の燃油代は400万~500万円ほどに上る」とあって、月100万円以上かかっているのです。もちろん、方法や品目にもよりましょうけど、これが月々20万円から30万円上昇。

 

 

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