松沢呉一のビバノン・ライフ

続・プーチンと闘うロシア人たち—映画監督も科学者もアスリートも戦争に反対-(松沢呉一)

プーチンとそれに追従するロシア人に軽蔑を、プーチンと闘うロシア人たちに敬意を—抵抗するジャーナリスト・芸術家・音楽家・一般の人々」の続きです。

 

 

映画関係者たちの声明

 

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前回に続いて、プーチンの戦争を国内で批判するロシア人たちのまとめです。

芸術家たちの声明以外にも医師、IT関係者、映画関係者らが声明を出しています。

映画関係の声明は複数あって、ひとつは2月25日に、映画関係者のユニオンであるキノ・ソユズによって出された「НЕТ ВОЙНЕ」声明。もうひとつは3月1日に発表された「ウクライナとの戦争に反対するロシアの監督の公開書簡」。前者はどちらかというと上の世代、後者は若い世代が多いようですが、どちらも100名前後が署名しています。

後者についてはこの記事が詳しく、署名者の名前もすべて出ています。この中で呼びかけ人が質問に答えてて、注目したのは、「この声明は映画やコマーシャル・フィルム業界の総意と考えていいのか、あるいは戦争を支持している人もいるのか」という質問に対して、「ほとんど全会一致と言ってよく、明示的に戦争を支持している人は一人も知らない」と答えている点です。「失業や作品への資金提供が断たれることを恐れて、意思表示できない人たちがいるだけだ」と。

とくに表現者ではなくとも、若い世代の知的階層について言えば、これがロシアの標準なのではないかとも思います。そうではない人たち、つまりインターネットにアクセスせず、国営メディアの報道を信じている層(数で言えば相当数になる)やプーチンの熱心な支持者たちも無視はできないとしても、私らと同じように今回の戦争をとらえている人が多数いることを知れば、ロシア人だからと敵視するのではなくて、どうつながるのか、どう困難に立ち向かう彼らを支援するのかを考えた方がいいと思います。

※2022年3月2日付「SCREEN DAILY

 

 

科学者たちの反戦声明

 

vivanon_sentenceちょっと意外な気がしたのは、科学者と科学ジャーナリストたちの声明です。その数150人(歴史学者や言語学者、哲学者も入っています)。理科系の人たちはあんまりこういった行動をやらないイメージがあるのですが、核兵器の使用や実験については科学者が反対する歴史があって、プーチンは核兵器を使いかねず、原発も武器として取り込もうとしているので、こうなると、科学者の責任を感じるってことでしょうか。

長文の声明が素晴らしい。以下はその一部です(自動翻訳に手を加えたもの)。

 

ウクライナはこれまでも、そして今も私たちに近い国です。私たちの多くには、ウクライナに住む親戚、友人、科学者の同僚がいます。私たちの父、祖父、曽祖父はナチズムと戦いました。疑わしい歴史的空想に駆り立てられた、ロシア連邦の指導者の地政学的野心のために戦争を解き放つことは、彼らの記憶に対する冷笑的な裏切りです。

私たちは、民主的制度が機能しているウクライナの国家を尊重します。私たちは隣人のヨーロッパの選択を理解して扱います。私たちは、両国間の関係におけるすべての問題が平和的に解決できると確信しています。

 

明快にウクライナをナチスだとするプーチンこそが、ナチスと戦った人々を愚弄していることを指摘しています。

 

 

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