松沢呉一のビバノン・ライフ

加速するロシアの言論統制にナワルニー提唱のデモは対抗できるか—フェイク国家のフェイク情報のみが「事実」になったロシア(松沢呉一)

続・プーチンと闘うロシア人たち—映画監督も科学者もアスリートも戦争に反対」の続きです。

 

 

ロシアではもう事実を報道することはできない

 

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プーチンとそれに追従するロシア人に軽蔑を、プーチンと闘うロシア人たちに敬意を—抵抗するジャーナリスト・芸術家・音楽家・一般の人々」に埋め込んでいたノーベル平和賞受賞のジャーナリスト、ドミトリー・ムラトフのメッセージ動画が観られなくなりました。

政府の息がかからない独立系メディアが次々活動停止に追い込まれているので、ノーヴァヤ・ガゼータもやられたのかと思ったのですが、YouTubeのアカウントはまだ生きていて、新しい動画(音声だけですが)も更新されています。その最新動画でウクライナ侵略についての動画をまとめて削除した事情が説明されています。

 

 

今までは発禁と社の閉鎖で済んでいたのですが、報道管制が次の段階に入って、これからは刑事罰が加えられることになったので、削除したとのことです。

BBCがロシア国内での活動を停止したこととと同じ。

正確には、これまでにもフェイクニュースに対する法律は存在していて、刑事罰もありました。これまでは最大懲役3年だったのがこの金曜日に15年に引き上げられました。

それでもどこの世界でも通じるフェイクニュースの認定が行われるのであれば問題はさほどないですが、ロシア当局は、ウクライナ政府が発表しているロシア兵の戦死者数をフェイクだとし、プーチンはロシア軍がキエフを砲撃していることもフェイクだと言ってます。事実を伝えても、当局が嘘だと言えば嘘になるのですから、事実を伝える報道はすべて違法になり得ます。

ロシア当局の規制によって、すでに英BBC、米政府系のVoice of AmericaやRadio Free Europe / Radio Liberty、独Deutsche Welle、Facebook、Twitterはロシアからのアクセスができなくなっていますし、これらの報道をロシア国内でコピーすると捕まり、ことによるとロシア国籍を持つ者は、国外での発言についても適用されるのかもしれない(ここは確認できませんでした)。

※2022年3月5日付「日本経済新聞」 FacebookやTwitterへのアクセスを封じたのは「フェイスブック上でロシア国営メディアへの接続が制限されるなどの「差別」があったためとしている」とあって、これはSNSの運営の判断ではなく、EUによる規制によるものかもしれない。ロシアの国営放送の報道をEUが禁止していて、これはやるべきではありませんでした。ロシアの言い分そのままにNATO批判をするデモが行われてましたから、ロシアの報道を信じる人たちはいるのでしょうが、報道を規制したら「やっぱりロシアの情報が正しい」になるだけです。これについては「どっちもどっち」に見えます。

 

 

ナワルニーの呼びかけ

 

vivanon_sentenceナワルニーのチャンネルは国外発信だと思われて、悲壮感もありつつ、こちらはなお意気軒昂。

 

 

 

 

「連日デモをやるべし」というナワルニーの提案を具体的にした内容になっています。

 

 

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