松沢呉一のビバノン・ライフ

「戦争に反対するロシア人(RUSSIANS AGAINST WAR)」がロシアのテレビ番組をジャック—おそらくOxxxymironに呼応-(松沢呉一)

プーチンは無能な諜報員に踊らされた?—粛清している場合ではなく、すぐさま攻撃をやめて引退すべし」の続きです。

 

 

ロシア・チャンネル1でプロデューサーが蜂起

 

 

 

 

ロシアでもっとも歴史と権威のあるテレビ局チャンネル1のニュース番組です。現在は国営ではないようですが、政府に近い存在(追記:どこも「国営」と紹介しているので、私の読み間違いだったかもしれない)。

プラカードを出しているのはチャンネル1のプロデューサーであるマリナ・オヴシャニコワさん(おそらくこの番組が担当ではない)。プラカードには「戦争反対。ヤツらのプロパガンダを信じるな。ほらヤツらは皆に嘘をついている。戦争に反対するロシア人」と書かれています。

「あっ」と思いました。プラカードの最後に「RUSSIANS AGAINST WAR」と英語で書かれています。

本日、Oxxxymironによる「RUSSIANS AGAINST WAR」がイスタンブールで開かれます。ロシア国外ということもあって、「RUSSIANS AGAINST WAR」は英語です。

私は「RUSSIANSとなっているので、このライブにはOxxxymiron以外のロシア人も出るのだろう。あるいは在トルコのロシア人は集まれというメッセージか」と思いました。

マリナ・オヴシャニコワさんは自分も立ち上がることでRUSSIANSにすることを選択したのではないか。そう考えると、複数になっている意味がよくわかります。

このあと彼女は警察に連行されました。彼女は局員ですから、その場にいることは咎められないとしても、業務妨害やらフェイクニュースやらで実刑を食らいそうです(タス通信は軍隊の信用を落とす行為として行政犯罪法に抵触する可能性があると報じています)。

職を失い、投獄されてもやらないではいられなかった人。

 

 

Oxxxymironの「RUSSIANS AGAINST WAR」の広がり

 

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Oxxxymironの影響力は絶大です。ミュージシャンの行動はしばしば「そんなことをしてなんになる」と揶揄されがちですが、そんなことを言っているヤツらよりは人を動かし、社会を変革します。

日本で言えばNHKの夜のニュース番組ですから、少なくとも数百万人が観ていたでしょう。あるいは数千万人か。

リテラシーのある人たちはすでに政府の言うことは嘘だらけ、ロシアの報道は嘘だらけであることに気づいていて、この行動に続く人が出るかもしれない。

鈍感な人たちの中にも少しは「なんかヘンだぞ」と薄々気づいているのがいて、その層の中にはチャンネル1のプロデューサーのメッセージで目が覚めるのが少しはいそうです。

すでに多数の人が目にしてしまってますから、この行動は政府系メディアも無視できず、タス通信も報じています。具体的に何をしたのかについては伏せていて、妨害をしたということになっていて、画面も出していませんが、わかる人にはわかるでしょうし、わからなかったら記事を探す。あるいは友だちに聞けば何人かに一人は観ていて、「報道は嘘ばっかりだって言ってたよ」と教えてくれます。

 

 

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