松沢呉一のビバノン・ライフ

戦死者数を9,861人と報じてすぐさま消したロシア政府系メディア—ロシアが戦死者数を伏せるもうひとつの理由-(松沢呉一)

ロシア軍の戦死者が膨れ上がっていることと、さらに上昇したプーチンの「支持率」との関係—8割がプーチンを支持するロシアの絶望」の続きです。

 

 

 

ロシア兵の戦死者は何人か

 

vivanon_sentenceロシア軍の戦死者数についてはウクライナ側発表の数字を米国が追認していく形になっていて、時間差はあれども、おおむね正しそうです。つまりは今現在1万人以上死んでいるってことです。

対してロシア政府は3月2日に死亡者498人と発表したっきりです。中国公式発表による大洪水の死亡者数かよ。

中国の場合はそれぞれが責任逃れをするために下から順繰りに数字をごまかしていき、誰も正しい数字を把握していないことがあり得るのですが、いい加減なロシア政府であっても、戦死者ともなると、公表しないだけでカウントはしているはずです。

その数字が約1万人であることを窺わせる「事件」がありました。

※2022年3月22日付「BUSINESS INSIDER」 以下はとくにこの記事を参考にしました。

 

 

ロシア兵の死者は約1万人と発表したロシア政府系メディア

 

vivanon_sentence政府寄りのタブロイド紙「コムソモリスカヤ・プラウダ」は、昨日3月21日付のオンライン記事で、ロシア軍の死者は9,861人、負傷者は16,153人とし、すぐさま非公開にしています。

しかし、すかさずSSを撮った人や魚拓を撮っていた人がいて、ごまかすことができず、「コムソモリスカヤ・プラウダ」紙は「ハッキングされた」と説明しています。メディアのサイトに入り込んで、他には一切悪さをせず、戦死者や負傷者だけを書き換えたり、書き加えたりする丁寧なハッカーがいますかね。いないと断言もできないですけど。

この記事ではロシア国防省の数字を参照したとしていて、ロシア国防省が把握している実際の数字なのではないかと説が出ているのですが、国防省がメディアに公開不可の本当の数字を教えるかどうかとの疑問もあります。教えると、うっかり書いてしまうのが出てきますし、意図して書くのも出てきますから、教えないと思うのですが、これも「教えない」と断言はできず。

数字の信憑性もなぜこんなことが起きたのかの事情も不明です。

ウェブ・アーカイブに残された魚拓です。記者のマリア・パブロワが「出してはいけないことを知っていたはずなのに、うっかり書いてしまった」と思わせる文脈です。ウクライナ軍が発表している14,700人という数字を出して、「そんなに死んでねえよ。ロシア国防省の数字では〜」としているのです。これでもウクライナ軍の発表よりは少ないことのアピールです。ウクライナ側では残された遺体の処理をしなければならないため、その数を加算していけばいいのに対して、ロシア側の確認は遅れるための差でしかなく、ウクライナ軍の発表する数字の正しさをかえって裏付けた結果(この数字がロシアの公式なものだとして)。写真は死んだ人ではなく、国防省の広報担当です。

 

 

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