ロシア国内では何もできないんだろうと思いつつ、「左翼戦線」に注目してみた—ロシア内反プーチン左翼勢力-(松沢呉一)
「ロシアの戦艦が沈没。それでも戦争は続く—「どうしたら終わるのか」と銭湯で言っていたじいちゃんに回答する」の続きです。
それでも可能性を探りたい
前回書いた、戦争を終わらせるいくつかの方法は、実現の可能性がゼロではないにしても、相当に低い。
たとえばナチスドイツの時代に、数万人といった単位でヒトラー退陣を要求するデモが起きても、親衛隊は銃口を向けて、全員を射殺して終わったでしょう。歯向かう者は自国民でも殺せる政権は強い。ナチスドイツや中国、ロシアです。
そもそもナチスドイツにおいて、それを組織できる左翼勢力は殺されるか転向するか国外に逃げていて、残った活動家は、ユダヤ人救済、ビラ配り、落書き、国外勢力との連絡といった地味な活動を続けていました(これらは左翼活動家ばかりではないですが)。彼らは潰されるとわかっている大衆運動を組織しようとは思わなかったと思います。
現在のロシアも似たようなものです。白い紙を掲げるだけで連行されます。デモ参加を呼びかけるだけでも捕まります。呼びかけができるのは、すでに刑務所にいるナワルニーくらい。これ以上は捕まらず、懲役が加算されるだけ。
100人くらいだと射殺しかねないですが、万になると、さすがに全員射殺なんてことはできないと思うので、なんとかして万単位の人で広場を埋め尽くし、警察が手をこまねいている間に、プーチンの居場所に突入できないかと思うのですが、これを実現するのに必要なのは組織でしょう。5人10人でできることではない。
そんな組織がロシアにあるのか?
※2022年3月23日付「NHK NEWS WEB」 何をもって詐欺罪としているのかわからないですが、裁判所までが完全にグルですからムチャクチャですよ。まさにナチスドイツと一緒。
ロシア共産党にはほぼ期待できない
ロシアの最大の反プーチン団体はロシア連邦共産党(КПРФ)ではなかろうろか。
1991年にソ連が崩壊するとともにソ連共産党(КПСС)は禁止されます。1993年その復活を目指して結成されたのがロシア共産党です。ほとんど途切れることなく結成されていて、看板をかけ直しただけのように見えます。それを象徴するように、党旗は槌鎌で、思想的にもそのまま引き継いでいます。ロシア正教との関係も強いので、LGBT弾圧路線も継承。
ロクなもんじゃないですけど、プーチン打倒につながるなら、この際、なんでもいいでしょう。党員は16万人もいますから、本気で蜂起すればプーチンを止められるかもしれない。
ところが、ロシア共産党は、クリミア半島併合に賛成していて、今回のウクライナ侵攻も賛成なので、お話にならんです。暴力的にソ連時代を復活させたいという思いはプーチンと同じってことです。似たもの同士の勢力争い。
ただし、同党の議員3名は今回の侵攻を批判しています。SNSでの発言ですが、党の方針に反する発言をするのは異例とのことですし、政治家が特別軍事作戦に反対することも異例。この3人はクリミア半島併合については賛成なので、今回の侵攻は、この人たちにとっても別の意味合いを持つことだったようです(すぐに削除していますから、党としては、作戦に反対することの方がやってはならないことだったようです)。
※Wikipediaよりロシア連邦共産党のロゴ
路上で意見を聞くことさえもできない
ロシア共産党には期待できないですが、もう少し期待できそうな組織を見つけました。
1時間以上ありますし、全編ロシア語なので、ロシア語がわかる人以外は観なくていいですが、なーんも悪いことをしてそうにないのに、最後に警察が来ます(このあと連行されています)。
ライブ中継のアーカイブです。
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