松沢呉一のビバノン・ライフ

チョルノービリ原発で明らかにされたロシア軍のマヌケすぎる危険性—赤い森に塹壕を掘るわ、金目のものを略奪するわ、放射性物質までかっぱらうわ-(松沢呉一)

「モスクワ」の艦長は死亡し、黒海艦隊の司令官は逮捕され、8人目の将官も死亡—サーシャ・スコチレンコの抵抗は拡散されている」の続きです。

 

 

 

チョルノービリ原発で明らかになったこと

 

vivanon_sentenceロシアは得体の知れない不気味さを持つ国です。この不気味さは「マヌケすぎて、危険の度合いが計り知れない」ということだと今回よくわかりました。一定の知力があれば決してやらないことをやってきます。そもそもウクライナ侵攻だって、賢ければもう少し慎重になったはずです。プーチンが好む情報ばかりを側近たちがプーチンに伝えていたと言われてますが、とりもなおさず、判断力がなくて、とりまきの言うことを鵜呑みにしたプーチンが底抜けにマヌケだったってことに他なりません。

よく記事のタイトルに「美人すぎる」というフレーズが使われます。「美人すぎる消防士」とか。日本だと、消火活動に当たる女性消防士は少なくて、見かけるのは現場の記録をとる係くらいだと思いますが、国によっては火災の第一線で女性消防士が活躍しているので、その意外性を込めたフレーズです。

対して、「マヌケすぎるロシア兵」と言っても、「みんな知ってる」ということになってしまって意外性ってものがないですけど、チョルノービリ(チェルノブイリ)原発でのロシア兵の振る舞いを見ると、「マヌケにもほどがある」と思え、行き過ぎたマヌケはとてつもなく危険であることがよくわかります。

 

 

 

原発の危険性を知っているウクライナ軍が攻撃してこないことで原発周辺は安全だとして、屋外ではもっとも危険とされる赤い森で塹壕を掘って1ヶ月過ごすマヌケさ(塹壕は車両を守るためのものだったらしいのですが、兵士たちもそこで暮らしていた)。コントか。赤い森は私だって知っている危険エリアですから、普通は怖くて近づくことさえしない。

原発を襲ったのは「安全だから」という説は早い段階から出ています。以下のウクライナ・メディアの記事を参照のこと。

 

2022年3月5日付「Економічна правда

 

「なぜ原発を襲撃したのか」の理由を検討していて、「ヨーロッパ全体を脅迫できる」「ウクライナの電力を支配できる」「核兵器に転用できる核物質を入手できる」といった理由の筆頭に挙げられているのが「危険なために攻撃して来ない」という理由です。

 

 

被曝の影響が出るのか否か

 

vivanon_sentenceでは、なぜあっさり撤退したのでしょう。重点が南部に移動したので、チョルノービリに駐留する意味がなくなったというのがもっともありそうですが、1ヶ月の間にすでにロシア兵には体に異常が出ていて、そのために撤退したという説もあります。

ロシア軍内部のことなので確認はできませんが、その後、異常のあった兵士はベラルーシの病院に入院したという説とともに、捕虜になった兵士がいるとの説もあります。

体調不良くらいはあり得るとして、すぐさま命に関わるような反応は起きないはずですが、この兵士たちは赤い森を掘り返して、その中で生活をしていたため、放射線を浴びるだけではなく、放射性物質を体内に取り込んでいた可能性が十分にあります。数年後に次々と癌を発症してもおかしくはない。

甲状腺癌が多発するだろうと見る専門家もいて、それを否定する専門家もいて、実験結果はこれから出ます。

 

 

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