ティナ・カロルが歌う「ウクライナはあなたです」(Україна це ти)に打たれる—Jinjerのタチアナも無事国外で活動-(松沢呉一)
「ウクライナ民謡「おお、草原の赤いカリーナ(Ой у лузі червона калина)」の聴き比べ—ピンク・フロイドから難民たちの歌声まで」の続きです。
ウクライナを代表する歌手、ティナ・カロルに魅せられました
恵比寿駅で、英語や韓国語と並んで使われていたロシア語の表記が消されたって話があったじゃないですか。駅名の表示だけだったようです。それでもロシア語特有の変換があり得るにせよ、おそらくキリル文字一般の変換です。
キリル文字を否定すると、ウクライナ語も否定することになるでしょうに。ロシアに対して同じく楯突いているブルガリアの言葉も。仮にロシア語特有の言葉が入っていたとしても過剰な対応ですけど、それ以前の話。これだから無思慮は困るのです。
なんて書くと、いかにも私はウクライナ語やロシア語がわかるみたいに思えるかもしれないので、誤解されないようにもう一回説明しておくと、キリル文字の読みがわかるだけで、意味はまるでわからんです。私が覚えたのははブルガリアのキリル文字で、ロシアもウクライナも少しずつ違うため、読みも完全ではないです。
ブルガリア語はまだしも少しは単語を知っていて、ロシア語でも「はい」はブルガリア語と同じДа(ダ)であるように、ロシア語でもたまーにわかる言葉がある程度です(ウクライナ語で「はい」はTak)。
言葉はわからながらも、少しずつウクライナの理解が進んでいます。「ウクライナ民謡「おお、草原の赤いカリーナ(Ой у лузі червона калина)」の聴き比べ—ピンク・フロイドから難民たちの歌声まで」で、「ティナ・カロルがムチャクチャいい」と書きました。ホントにいいのです。
ティナ・カロルは1985年生。2005年にデビューして、あっという間にウクライナでもっとも人気のある歌手の一人となり、2006年のユーロヴィジョンにウクライナ代表として出場。ファイナルに残ってます。
演奏がチャルガっぽくくて琴線に触れますが、今の方がもっといいな。
ウクライナは私です ウクライナはあなたです
ティナ・カロルはメチャ歌がうまいです。どこの国でもプロの歌手はたいていメチャ歌がうまいですけど、音域が広く、多彩な表情の声を出せます。タイプは全然違いますが、Jinjerのタチアナと言い、このティナ・カロルと言い、ウクライナには表現力の豊かな歌手が多いかも。
「ウクライナ民謡「おお、草原の赤いカリーナ(Ой у лузі червона калина)」の聴き比べ—ピンク・フロイドから難民たちの歌声まで」で取り上げた動画で彼女が歌っていたのは、「ウクライナ・ツェ・ティ」(Україна це ти)って曲(「ウクライナはあなたです」の意味)です。詞は共作で、作曲はティナ・カロル。2015年の曲で、愛国ソングです。
クリミアに糞ロシアが侵攻してきて以降ですから、着々とウクライナ国民はロシアの脅威を感じ、ホロモドールの記憶に裏打ちされた決意を固めていたのだと思います。
その曲が今回の戦争でなおのことリアルに感じられているようで、ティナ・カロルはボーランドでのコンサートやテレビ番組でよくこの曲を歌っています。
以下はアメリア・アニソヴィッチちゃんが国歌を歌ったウクライナ支援のコンサートじゃなかろうか。
楽屋で弁当を食った時にソースを胸にこぼしてます。
空襲警報から始まって、男の声が流れます。ゼレンスキー大統領かな。
1曲目は「目を閉じて(Закрили твої очі)」という曲。これもいい曲です。こんだけ表現力のある人が言葉にならない言葉、声にならない声を吐き出そうとするところで私まで息が詰まりました。
この曲では背景にウクライナの都市名が出てますが、「ウクライナ・ツェ・ティ」になって(3分過ぎ)、背景がひまわりになり、アメリアちゃんの登場です。
「Україна це я〜Україна це ти」(ウクライナは私です。ウクライナはあなたです)ってサビで泣くわ。
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