日本語を覚えないと仕事は見つからない—そんなに言葉が必要じゃない仕事でも日本語が求められる理由-(松沢呉一)
「戦火を逃れて安心したら、多くの人は働きたくなる—政府専用機に20人しか乗せなかった理由[パート2]」の続きです。
いちご農園で働くウクライナ人
弁当屋で働き出したお母さんのその後。
夫婦で働き出して、しかも自転車までもらって、全部嬉しい。
他にも仕事が決まった人がいます。
またも福岡県。
アナスタシアちゃん、母ちゃんが仕事に出掛けても、元気いっぱいでいい子だな。
いちご農園で働けるのは羨ましい。摘む時にどうしても傷むのが出るので、食ってもいいんだべな。あまおうをいっぱい食えますぜ。
でも、日本で仕事が見つかることが彼らにとってはものすごく大事って実感があまりない人たちもいるかもしれないと思ったことがあります。
金を寄付するだけでは満たされない
半月ほど前のことです。バイトに行くために夜11時台の電車に乗りました。
その時間のわりに乗客が少なかったので、数メートル離れたところにいる、40歳くらいの仕事ができそそうな2人組の会話が聞こえてきました。軽く酒が入っているようです。
AさんとBさんにしておきます。AさんとBさんは別の会社に勤務しているのだと思います。仕事関係よりももっと馴れ馴れしくて、趣味の会で知り合ったのか、飲み屋友だちってところでしょうか。
A「若い部下とメシを食ったら、“うちの会社もウクライナのためになんかしましょう”って言うんだよ。ちゃんと考えてんだなって感激しちゃってさ」
B「なんか今回の戦争って、今まで体験したことのない感触があるよな」
A「ウクライナなんて縁もゆかりもないのに、他人ごととは思えない。その部下の気持ちもよくわかる。それで、他の社員にも声をかけて、酒を飲みながらアイデア出しをしたんだよ」
B「何ができるかって」
A「うん。でも、うちの会社は寮なんてないしさ」
B「住むところは自治体が公営住宅を提供しているから、これ以上いらないだろ」
A「だよな。電化製品の製造や販売だったら、電子レンジや冷蔵庫をプレゼントして喜んでもらえるけど、ほど遠いし」
なんの会社かは最後までわからず。
B「電化製品や家具もいろんなところが用意しているから、それもいらないだろ」
A「結局、“役に立つのは金だろ”ってことになって、その場で金を集めて、帰りにコンビニの募金箱に入れてきたよ(笑)。3万円くらいあったけど、なんか違うんだよね」
この話、面白いな。
実際、もっとも役に立つのは金じゃろ。だけど、その部下が「何かしたい」と思ったのはこんなことではなかったはず。金だと物足りないのは、喜んでもらえた実感がないからだと思います。喜んでいる姿を見たい。直接見ることができなくても、「喜ぶだろう」と想像をしたい。二次的にはそれがテレビで紹介されて、会社の宣伝にもなる上に、お茶の間の人たちにもほっこりしてもらいたい。
※この時の写真ではありませんが、そん時もこれに近い空き具合いでした。
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