松沢呉一のビバノン・ライフ

ウクライナでもロシアでも医薬品不足は深刻—経済制裁に関する疑問[5]-(松沢呉一)

味方かもしれないロシア人をも敵に回す経済制裁—経済制裁に関する疑問[4]」の続きです。

 

 

 

ウクライナ民謡「おお、草原の赤いカリーナ(Ой у лузі червона калина)」の聴き比べ—ピンク・フロイドから難民たちの歌声まで」の続きです。

無料部分だけ読んで誤解する人がいるとまずいので、冒頭で説明しておきますが、医薬品は制裁から外されています。しかし、流通の停滞や買いだめによってロシアでは医薬品不足が生じているのです。

 

 

ウクライナ人たちによるベラルーシ経由の輸送トラック妨害行動

 

vivanon_sentence前回出した動画で、「制裁は民間人に対してではなく、政府に対して導入すべきです」と青年が語ってましたが、できる場面ではそうすべきだと私も思います。

以下は逃げた先のポーランドで、ベラルーシに物資を運ぶトラックをストップさせる闘争をしているウクライナ人たち。

 

 

この行動にはベラルーシの人たちも多数参加しています。ベラルーシには反ロシア派がいっぱいいて、とくにこの戦争について賛成する人はわずか数パーセントです。ロシアと大違い。

これをやりたくなる気持ちはわかります。わかりはしますが、この行動自体、私は支持できない。

輸入品についてはウクライナが重要な経路になっていたのが、ロシアの侵攻により停滞。そこでベラルーシ経由が俄然重要になっていて、それもストップさせようとしています。

ベルギーのチョコが入って来なくなったり、ドイツ産の自動車が入って来なくなっても、ロシア人はそんなには困っていないと言われています。プーチンを筆頭として政府寄りの人たちがそう言っているだけで、実際には失業者が溢れ、物価が軒並み上がり、とくに輸入品が上がっているために、買い控えも起きて経済が停滞することは避けられないようですが、スマホも自動車も服も中国産を買えばいい。セレブたちもシャネルに愛想を尽かしていて、イタリアのブランドに執着するのはブランド狂いのプーチンくらいです。

ゼロコロナをやり続けることで経済が低迷する中国にとってもロシア・マーケットから欧米諸国が撤退してくれたのは幸運です。ゲス国家とゲス国家の麗しき連携。

ウクライナ人たちがベラルーシ・ルートをストップしてくれると、いよいよマーケットの空白が生まれて、中国は大歓迎。

 

 

品不足が深刻なのは医薬品

 

vivanon_sentence物価が上がっているため、貧乏人は生活が苦しくなっていましょうけど、兵隊の知人がいれば「ウクライナ人からテレビをかっぱらってきて」と頼めばいいのです。プーチンは国民から金を巻き上げ、国民は他国から巻き上げる。盗賊国家。

中国のおかげで、経済制裁の影響は少なくて済み、兵隊やその家族はかっぱらいで潤っているのに、戦争に反対する人たちはマクドナルドのようなコミュニティの場が消滅したと嘆いています。経済制裁ってなんなの?

また、経済制裁の影響をひどく受けているのは病人です。ウクライナ同様、ロシアでも輸入の医薬品不足が起きています。ないと困るので、先々の分を買いだめする人たちが増えていて、いよいよ品不足になっています。

「メデューザ」によると、ものによっては500パーセントの値上がりだそうです。たとえば月に3千円の薬代だったのが1万8千円に。貧乏人は買えない。兵隊に頼めばウクライナの薬局からかっぱらってきてくれましょうけど。

ロシアの動物園でも動物用の医薬品が値上がりして困っているそうです。

 

 

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