松沢呉一のビバノン・ライフ

ブチャで生まれたリュボフ・パンチェンコは最後までブチャで闘った—ブチャ虐殺の首謀者たちを追い詰める-(松沢呉一)

 

 

数で勝てる時代は終わった

 

vivanon_sentenceどこをとってもダメダメなロシア軍ですが、ウクライナ軍より明らかに上回っている点があります。数です。兵士の数も武器の数も圧倒しています。

第二次世界大戦の対独戦では、銃が足りなくなって、丸腰の兵隊までを敵陣に突っ込ませたと言われています。ドイツ軍が丸腰のロシア兵を倒すためには銃を使いますから、いくらか銃弾を消耗させることができます。その程度には銃がない兵隊でも役に立つ。両者ともに武器がなくなったら、兵士の数が多い方が勝つ。

この話が本当かどうかはわからんですが、実際、赤軍の方が戦死者が多かったのは事実です。それでも赤軍は勝ちました。

ロシアはその時代からまるで進歩していないのではないか。連日、あれだけの数の戦車が吹き飛ばされ、あれだけの数のヘリコプターが撃墜されていてなお侵略を続けようとするプーチンを見ているとそう思わないではいられない。

おなじみウクライナ国立通信社が先週公開していた映像。今回はお笑いはなし。

 

 

 

すんごい数の戦車が爆破され、ヘリコプターが撃墜されています。前半と後半で場面は違うかもしれないですが(時間帯が違うだけか?)、たったふたつの場面でこんだけの成果。

多くの場合、戦車やヘリコプターとともに複数の兵士が死んでいるか負傷しているか捕虜になっています。ウクライナ発表で戦死者は2万3千人を超えていて、各国機関の計算でも2万人に近づいていて、負傷したか捕虜になったため使い物にならなくなった人はその数倍。

ロシア軍は部隊を再編成したと言っていましたが、再編成しても大差はなくて、むしろウクライナ軍が各国提供の兵器でグレードアップした分、ロシア軍の被害は増大していそうです。

第二次世界大戦と大きく違うのは、一発のミサイルで複数の兵士が死ぬことです。人がいくらいても足りない。また、その戦争を維持するには莫大な金がかかります。各国の支援を受けているウクライナと違って、ロシアには無理なのではないか。

 

 

ブチャ虐殺の容疑者たち

 

vivanon_sentenceもうひとつ、ロシア軍が第二次世界大戦と変わっていない点があります。民間人の殺害です。

条約違反とは言え、たしかに第二次世界大戦地には各所で民間人の大量殺害がなされ、日本も空襲と原爆で10万単位の人が殺されています。赤軍もやっています。「それしか方法がなく、戦争を終わらせるためにはやむを得なかった」といった言い分もあったでしょうけど、さすがにもう今の時代には通用しない。しかも、今回のロシアの蛮行は、侵略した側が相手を屈服するためにやったことであり、「他に方法がない」といった言い分は一切成立する余地がありません。

私自身、ブチャ虐殺でブチ切れましたが、世界各国そうでしょう。ドイツを筆頭に武器供与をためらっていた国も一線を越え、中立を守ってきた北欧諸国も大きく舵を切りました。

ウクライナ軍も国民も、改めてロシアを許してはいけないと誓ったことでしょう。

ブチャ虐殺に関わったロシア兵の名前は前に発表されてましたが、4月28日、そのうち拷問にまで関与した悪質な10名の名前と顔写真が発表されました。

 

イリーナ・ヴェネディクトワ・ウクライナ検事総長のFacebookより

 

 

 

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