松沢呉一のビバノン・ライフ

対独戦勝記念日スピーチ戦争はゼレンスキーの圧勝—衣装代戦争はまたもプーチンの勝ち-(松沢呉一)

戦地で負傷して捕虜になっている間にガールフレンドは他の男を連れ込んでいた—ロシア兵の正体[下]」の続きです。

 

 

チーナ・カーロリ来日

 

vivanon_sentenceうわー、ビックリした。

 

 

 

 

普段着で手ぶら?

飛ばしている人が多いと思いますけど、「ティナ・カロルが歌う「ウクライナはあなたです」(Україна це ти)に打たれる—Jinjerのタチアナも無事国外で活動」を是非お読みください。この人の歌はホントに素晴らしいです。

私は英語版Wikipediaを見ていたので、ラテン文字表記のTina Karolに合わせて、「ティナ・カロル」にしてましたが、キリル・文字ではТі́на Ка́рольで、発音はティナ・カーロリが近いかな。

Ті́наはТатья́наの略のようで、Татья́наという名前は日本語ではタチアナで定着していますから、チーナでいいのか。

表記がいくつもあると混乱するので、以降、チーナ・カーロリで統一します。言いにくいですけどね。

「国民的歌手」という言い方は「大ベテラン」というニュアンスが加わるので、彼女はまだ似つかわしくない感もありますが、まあいいか。歌なり会見なり、中継して欲しいです。

ついでにあの回の冒頭に書いた恵比寿駅の表示ですけど、その後確認したら、六本木と中目黒のローマ字表記をキリル文字変換したものですね。ロシア大使館は飯倉で、六本木に近いっちゃ近いですが、ウクライナ大使館は西麻布ですから、似たようなもん。それとローマ字経由の変換なので、日本語も混じっていると言えます。

キリル文字はロシア固有の文字だと思っているアホが文句をつけたんだべな。たとえば、どっかの国で中国が嫌いだからって、台湾も日本も区別なく、「漢字を使うな」って言い出すのがいたら、「バカか」って話なのと一緒です。

 

 

5月8日のゼレンスキーの動画と9日のプーチンのスピーチ

 

vivanon_sentenceさて、本題。

ロシアでは5月9日である対独戦勝記念日のプーチンの演説は、意地でも戦争を続ける意思は感じられつつ、予想よりずーっと後退した感があります。戦争宣言はなく、総動員令もない。それでも自己肯定のために西側諸国に原因を押し付け、意地だけで戦争を続けるつもりです。だっせえ。

相変わらず、衣装代戦争ではプーチンの圧勝ですが、スピーチ戦争ではゼレンスキーの圧勝。

以下、英字幕入り。

 

 

ナチスの恐怖をプーチンが蘇らせたことをほぼモノクロの画面で見事に表現しています。こちらには瓦礫となった建物と国旗しかない。しかし、今回もまた最後は勝つと宣言。

一方で民間人の虐殺や略奪を繰り返しているくせに、対独戦勝記念のパレードをやっていること自体、どんだけ厚顔。プーチンはもっと派手にやりたかったのでしょうが、リハーサルで登場したZ型の編隊も、終末飛行機「イリューシン80」も本番では出番がなく、軍人数も例年より少なく、他国首脳の参加もなし。

戦争開始した当初、プーチンがイメーシしていた理想を10とすると、1か2しか戦果を上げられておらず。その1か2である東部はウクライナ軍が失地回復に着々成功しつつあって、黒海艦隊もボロボロになってきている現実を反映した戦勝記念日でした。

こういった現実があろうとも、突っ走るのがプーチンの特性だと思ってましたが、ここまでの失態を重ねると、さすがにプーチンも国民の反応を考えざるを得ないんだなと今回実感しました。

クーデターが起きにくい体制になっているロシアですが、それよりは末端の兵隊の蜂起の方があり得ます。一部で反乱が起きても潰されておしまいですけど、プーチンらを恐怖させることはできましょう。

その条件が、少しずつでしかないにしても整ってきてます。電話の傍受から、命令に従わない兵士が続々出てきていることが報じられていますし、ロシア兵捕虜の25パーセントが自分から投降している事実を見ても、あと100歩くらい前に進むと蜂起に至りそうです。

 

 

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