松沢呉一のビバノン・ライフ

自分で考えて答えを出そうとするより思考停止する方が得—全体主義体制における賢い生き方[4]-(松沢呉一)

ロシアのインターネット普及率は日本と変わらないのに、なぜ情報源がテレビしかないと言われてしまうのか—全体主義体制における賢い生き方[3]」の続きです。

 

 

捕虜になった兵士を信用しない親族

 

vivanon_sentence泥酔してウクライナ陣地に迷い込んで捕虜になったロシア兵—ロシア兵の正体[中]」「戦地で負傷して捕虜になっている間にガールフレンドは他の男を連れ込んでいた—ロシア兵の正体[下]」で捕虜になったロシア兵のインタビュー動画を取り上げましたが、あのシリーズを出しているウクライナ人のウラジミール・ゾルキンが、先週末に生中継をやってました。日本語の字幕が出せるように設定されてなかったので、ちょっとしか観てないですが、完全に反ロシアになっていると思わしき捕虜たちとゾルキンが、家族なり親族なり恋人なりと電話で話していました。

おそらくゾルキンとしては、捕虜一人一人の事情ではなく、「ロシアの一般的国民は何を考えているのか」を知ろうとしていたのだと思います。「なぜあんたらはプーチンに反対をしないのか」と。

その電話をしている時にゾルキンは苛立って声を荒らげていました。なにしろ言葉がわからないので、はっきりとしたことは言えないですが、電話の相手の煮え切らない態度に苛立っていたのだと思います。

同じような苛立ちは過去の動画を観てもしばしば生じています。

たとえば以下。

 

 

 

3月のものです。この捕虜はロシアの侵攻初日にウクライナ軍の反撃によって足を負傷して、ロシア軍に見捨てられます。「仲間を見捨てるロシア軍」の様子はドローン映像でも確認できますが、ロシア軍は仲間に対して冷たすぎます。

救ってくれたのがウクライナ軍であり、足の手術をしてくれたのはウクライナの医者でした(おそらく軍医)。

その経緯から彼はすでにロシア軍に対する信頼は一切なく、この戦争は侵略戦争だと言ってます。

彼はシベリアのノヴォシビルスク州の出身です。足を切断したことが事実であることの証拠として、ふくらはぎから先がない足を見せてます。

いつものように、親族(この時は叔母)に電話をします。彼も少数民族なのかもしれず、叔母は、ゾルキンも聞き取り不能の言葉をしばしば使っています。

ロシア兵は叔母に「自分がどこにいるかは教えられない。捕虜がどこにいるのかがわかるとロシア軍に砲撃される」と言っています。ただでさえ仲間に冷たいのに、裏切ったとあれば殺害の対象。

叔母は彼からの電話を驚き、泣きながら話を聞いているのですが、彼の言うことを受け入れようとしません。「政治的なことはわからない」と。そんな難しい話をしているわけではなく、この戦争はロシアの侵略戦争であると言っているだけです。

この回も、会話を公開することを了承しているはずですので、下手なことは言えないということもあるのだと思いますが、おそらく彼女は本心を語っています。スマホを持っていて、インターネットも見られるはずなのに「見ない」と言っています。

なぜ見ないのか。見ると考えなければならないからです。全体主義国家では考えないことがもっとも賢い生き方です。

 

 

麻のタトゥでMVに出たのが麻薬の宣伝になるロシア

 

vivanon_sentenceU2のボノとジ・エッジはキーウのシェルターへ—「戦勝記念日のパレードよりやるべきことがあるだろ」と政府に楯突いたロシアのラッパー、モルゲンシュテルンはUAEへ」に書いたように、モルゲンシュテルンは国外に逃げたわけですが、本人不在のまま裁判が行われて、罰金刑になった旨が「メデューザ」に昨日書かれてました。

私はてっきり歌詞の中で麻薬を推奨したり、売買を匂わせたりしていたのだろうと思っていたのですが、現実はもっとバカバカしいものでした。モルゲンシュテルンは大麻のタトゥを入れていて、MVでそれを見せたことが「麻薬の宣伝」に該当するというものでした。

このMV。

 

 

 

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