ひさびさに都内で街娼を見たかもしれないけど、興味がない—売春とAVの違いについて聞かれたけど、興味がない-(松沢呉一)
街娼を見たかもしれない
一週間ほど前の夜10時頃のこと。線路の脇を歩いてました。前方にラブホがあって、そのすぐ前に女が立ってます。明るい時間ならともかく、夜遅くだと人通りがあまりない暗い道です。
デリヘルによってはホテルの前で待合せということもあるし、人目を嫌うカップルの中には、利用者以外は通りかからないラブホの前で待ち合わせるのが稀にいますけど、街娼かもしれないと思いました。
この周辺は時々歩いているのですが、この通りで街娼を見たことはありません。20年前だったら観察をして、確信が持てたら声をかけて話を聞かせてもらうところでしたが、すっかり私は関心がなくなっていることに自分で驚きました。
興味がないので、しげしげと見ていないのですが、30代か40代だろうと思います。街娼だとすると若い。いつも立っているのではなくて、たまたま金がなくて立ってみたってところか。
それを素通りするようになった自分が悲しくもありましたが、街娼に限らず、性風俗全般、セックス全般に興味がなくなってます。何をしようとも、どうせ今までのヴァージョンだろうと思えてしまいます。どうせ今まで書いたことのヴァージョンだろうと思えるので、書く気にもならない。
歳をとってエロの欲望が涸れるとともに好奇心が失せたとも言えるのですが、好奇心一般はまだ衰えていなくて、M777榴弾砲はどういう兵器かについてだったら調べる意欲が湧いてきます。知らないことだから知りたい。
※本文に関係ありませんが、これもラブホです。
AVは売防法に抵触するか否か
その数日あと、SWASHの要友紀子から電話があって、こんなことを聞かれました。
「AVは売防法に抵触するのか否か」
全然知らなかったのですが、AVについての法案が検討されていて、その議論の中で、AVの本番はそもそも風営法で取り締まるべきだといった暴論・愚論・駄論が出ているらしい。条文も読まないまま、おっぱい募金は風営法違反だと騒いだ弁護士のようなのがまたぞろ湧いているんじゃな。
これについては前にどこかに書いた記憶があります。たいていのことはもう書いていて、だから、このジャンルについてはもういいやという気分です。同じことの繰り返しにしかならないのです。
前に書いたものがどこにあるのかもわからず、もう消しているかもしれないので、記憶でざっと説明しました。
AVの金の流れは売春の金の流れとまったく別です。
正確を期するために佐藤文哉編『刑事裁判実務大系/風俗営業・売春防止』から引用します。
売春が成立するためには、「対償」が授受され、又は、授受が約束されなければならない。単に「営利の目的」があっただけでは「売春」にならない。
「対償」の授受の主体、授受の約束の主体は、いずれも売春者とその相手方である。
(略)
「対償」は売春の反対給付であるから、その授受ないし授受の約束行為は性交と密接な相関関係をもってなされる必要がある。
では、AVはこれに該当するか否か。しませんね。
AVにおいては、個人や法人が介在することがありつつ、支払うのはAVを販売するメーカーです。セックスの相手方は男優だったり女優だったりですが、相手側も通常ギャラをもらうのであり、「対償」は性交と密接な関係にないのです(金銭の流れにおいて。その金銭の流れこそが売春の要件です)。
では、メーカーは何に対してギャラを払うのか。
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