松沢呉一のビバノン・ライフ

ロシアの地方議会で議員が反戦演説をして退場に—ロシア人の行動原理は損か得か(ロシア以外でもそうだけど)-(松沢呉一)

 

ロシア沿岸地方の議会で共産党の議員が反戦声明

 

vivanon_sentenceロシア軍は士気が低くて弱いし、武器は旧式である上に補充ができず、人員の補充もできないので、各国から提供された武器で強化されたウクライナ軍がこのままロシア軍をあっさり駆逐するのだと思っていたのに、そう簡単にはいかないですわね。

 

 

で、ここでは地方議会で議員が反戦声明を読み上げたって点に注目。

さほど大きな扱いではないですが、共産党の議員が反戦演説を挙行したことは「メデューザ」も「メディアゾーン」も取り上げていますし、御用メディアも取り上げてます。

以下がその時の様子。

 

 

 

 

ウラジオストクのあるロシアの東南端に位置する沿岸地方の議会です(沿岸地方は一般名詞ではなく、固有名詞)。共産党のレオニード・ヴァシュケヴィッチ議員がプーチンに向けて、「ウクライナから撤退せよ」と進言する演説をぶちかましました。

単独の暴走ではなく、4人の共産党議員の総意です。また、この映像は地元の人たちが公開したそうで、おそらく共産党の支持者たちでしょう。これを拡散することまで計画通り。

この映像ではわからないですが、反戦演説のあと拍手も起きています。たった一人の拍手ですが、これは共産党の同僚、ジェナディ・シュルガの拍手と思われ、2人とも退場させられていて、共産党は彼らにもっとも重い処分を課すとしています。

今までにも共産党からはウクライナ侵攻に反対する動きはあって、どうせだったらタイミングを合わせた方がいいと思うのですが、1ヶ月前だとここまでやる決断はできなかったかもしれない。

しかし、4人の議員の総意です。十分にタイミングを合わせています。複数の議員(と支持者)がこれをやったことの意義は大きい。

 

 

この反戦声明に見える損得計算

 

vivanon_sentence地方議員であり、野党の共産党ですから、汚職で私腹を肥やすようなことはしておらず、この先もそんなおいしい思いをする機会は来ないことも関わっていて、同様の議員たちも内心は同じようなことを考えている可能性がありそうです。

つまりはプーチン政権が続いたところで、損得の得の部分が少ない人たちです。この演説内容からもそのことが窺えます。

自動翻訳も働かないため、演説の全貌は不明ですけど、「軍事行動を止めなければ、孤児が増え続ける。軍事作戦によって、この国に大きな利益をもたらす可能性のある若者たちが死んでいき、障害を負っている」といった内容らしい。

 

 

 

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