松沢呉一のビバノン・ライフ

呪いの藁人形でプーチンを殺せるか—プーチンが死なないのであれば誰も呪いでは死なない-(松沢呉一)

 

 

今も呪いの藁人形は生きている

 

vivanon_sentenceそれなりに手間がかかっているので、本気じゃないですかね。

 

 

 

 

今の時代にも、呪いの藁人形は実践されています(「ムカデによる死者は事実だった—ムカデと五寸釘 2」を参考のこと)。ただ、これだと効き目は弱いと思います。藁人形には髪の毛や爪など、対象とする人物の身体の一部を使うか、本人が身につけたものを使いたい。名前だけだと、同姓同名の人を誤爆しますので、生年月日を添えたのはよし。

御神木に釘を打つと、そこから枯れることもありますから、生きた木ではないところに釘を打つか、ブードゥの呪いの人形のように、釘を使わない方法を選択したいもの(あれは火にくべるんじゃなかったかな)。

もうひとつ気をつけなければならないのは、ソ連時代は熱心に超能力の研究をやっていましたから、呪い返しの秘術をロシア保安庁(FSB)は会得している可能性があることです。まんま自分に呪いが戻ってきます。五寸釘を刺すところを見られても自分に呪いがかかりますが、今回はその点は無事だったようです。

推奨はできないながら、呪い殺したくなる気持ちはよくわかります。私自身、これだけ世界の人が「プーチン死ね」と願っているんだから、そのうち死ぬのではないかとの思いが生じたことは一度や二度ではありません。しかし、まだ死んでいないので、「プーチン死ね」の念がまだ足りないのか、呪い返しをやっているのか、念で人を殺すことはできないのかのどれかです。

このままでは念で人は死なないということになりかねないので、怨念業界の奮起を期待したいところです。

 

 

独裁者の強さと弱さ

 

vivanon_sentence呪いがストレートに効いて死ぬことはないにしても、「自分はそこまで呪われているのか」と知ることで精神的に追い詰められて発狂して死ぬ、あるいは自分で死を選択するくらいのことは起きるかもしれない。起きないかもしれないけれど、起きないと断定してしまうと、人間社会の潤いみたいなものが失われてしまいそうです。

しかし、「自分は嫌われているかも」と気に病むような人は最初から独裁者にはなれません。独裁者はいつ自分は殺されるかもしれないとの恐怖を抱いているから、力で他者を抑えこもうとするわけで、強さの裏にある弱さをも感じないではいられませんけど、「嫌われるのが怖い」なんてことはきっとないのでしょう。

じゃないと、あんだけ嫌悪される行動をやり、あんだけ嫌悪される発言を続けることは不可能。

プーチンの顔つき、プーチンの発言はどれもこれも腹立たしいですが、最近ではこれ。

 

 

プーチン、死ね。

 

 

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