親ロシア派からも反ロシア派からも叩かれるマリーナ・オフシャンニコワ—「ウクライナ人とロシア人は兄弟姉妹みたいな関係」では済まない-(松沢呉一)
ロシアからもウクライナからもスパイ扱いされるオフシャンニコワ
つい2時間ほど前にロシア・メディアで流れていた情報によると、サンクトペテルブルクの教会で銃撃戦があった模様。発砲した男は単独で、31歳としているものと54歳としているものがあります。男は自殺を試みて、病院に運ばれたとのこと。動機等はまるでわからず、戦争に関係しているのかどうかも不明。
では、本題。これまで私は「マリーナ・オヴシャンニコワ」としてましたが、だいたい日本語表記は「オフシャンニコワ」になっていて、たしかにそう聞こえるので(英語圏ではまた別)、「ビバノン」も以降は「オフシャンニコワ」で統一します。タグもそれに合わせますが、ここまでの表記は訂正が面倒なので、そのままで。
オフシャンニコワさんは、先ごろ、独WELTの記者としてウクライナ入りしたのですが、ウクライナ当局からは歓迎されず、Facebookでもバッシングされまくってます。叩いているのは親ロシア派も、親ウクライナ派もどっちもいます。
「私はロシアの刑務所とウクライナの刑務所とどちらに入ればいいの?」と問いかけるFacebookの投稿です。
プーチン支持・戦争支持の人たちが彼女を叩くのは理解しやすい。ロシアの裏切り者がウクライナに行ったとなれば万死に値すると考えるのは当然として、なぜウクライナ側からそうも叩かれるのかがわかりにくい。オフシャンニコワ・バッシングにおいては、ロシアとウクライナは肩を組み合って同調しているようにさえ見えます。仲良しか。
ウクライナ人の中にあるわだかまり
反戦派のロシア人は「ロシア人とウクライナ人は兄弟姉妹のような存在なのに」と言うことがしばしばあります。「ロシアが侵略し、ウクライナ人を虐殺することが信じられない」という意味を込めています。「友人・知人にウクライナ人がいる」「自分自身、ウクライナ人の血が入っている」「ウクライナに住んでいたことがある」といった現実に照らして、嘘偽りのない感情の吐露でしょう。
ウクライナ人でも同様のことを言っている人もいる一方で、ロシア人がそう言ってのけることに対して反発するウクライナ人たちもいます。個人の感情はともかくとして、国家として対等だったことなど一度もないではないかと。独立運動を潰し、ホロドモールで大量虐殺をし、ソ連の時代から、一貫してウクライナは属国として扱われてきたのであって、今回もその延長にあると考えている人たちからすると、「兄弟姉妹である」とするのは歴史を無視している、あるいは改竄しているように感じられるようです。
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