松沢呉一のビバノン・ライフ

チッチョリーナは偉大—日本の要友紀子と世界のセックスワーカー出身の議員・候補者[上]-(松沢呉一)

 

選挙期間中に公開しなかったリスト

 

vivanon_sentenceあんまり見る人がいなかった要友紀子チャンネルの動画の中でもとくに人気のなかった1本。

 

 

「ビバノン」の購読者数より少ない再生回数はさすがにまずいと思いました。

「ビバノン」においても、セックスワークに限らず。国外のネタは読む人が少ないものです。あとは歴史ものも人気がない。このふたつの条件を満たしているのにナチス・シリーズだけは人気があります。

欧米にさえ興味がないくせに、「欧米ではテレビでこんな番組は流せない」と脳内欧米を持ちだしてデマこくヤツはホントに腹立つ。

それはともかく、要友紀子のこの構想は、たぶん私の提案から始まってます。要友紀子が立候補することになって、「何をすべきか」と聞かれて、「セックスワーカー出身の国際的議員リストを作って公開するといいんじゃないか」と私は提案しました。SWASHの特筆すべき点は世界的なネットワークの強さであり、それを見渡せるようにしたい。

しかし、これはけっこう難しい。たとえばヨーロッパの人が「日本でセックスワーカー出身者が国会議員になろうとして立候補した例はないか」と思って自動翻訳で探しても、なかなか要友紀子に行きつけないと思います。選挙公報にそのことは出てないですし、ニュースでも取り上げられていないでしょう。

元セックスワーカーであることを隠していなくても、選挙の時にそのことを大々的に掲げていないと、国外から探すのは難しいのです。動画でしか公開していなければ、言語的なギャップがなくても、探すのが難しくなります

まして地方議会だと、情報自体が少なくなるので、さらに探すのが困難になります。

数を集めるには、各国のセックスワーク関連団体に問い合わせるしかない。各国の団体もリストを欲しがるのではなかろうか。たとえば選挙に出る場合、それらの人々に応援メッセージをもらったりすることが容易になります。

たぶんこの話から国際的な議員連盟構想が出てきたのでしょうけど、各国の団体に問い合わせている暇はなかったようです。

※オランダ語版「Cicciolina 091494 Perfect」 チッチョリーナの絶頂期に出たフォトブック。定価が日本円で74,399円もします。

 

 

チッチョリーナは革命的な存在だった

 

vivanon_sentenceそこで、検索して見つけられる人だけでも私がリスト化しようとしたのですが、いろいろ問題が出てきてしまいまして、選挙期間中に発表するのはやめました。もう選挙は終わったので、出していいでしょう。

セックスワーカー出身の国会議員として真っ先に名前が出てきたのはイタリアのチッチョリーナの芸名で知られるエレナ・アンナ・シュターレルです。

1951年にハンガリーのブダペストで生まれ、1070年代からイタリアのラジオやテレビ、映画でチッチョリーナとして活動。

1979年、イタリア「緑の党」から出馬し落選。

1983年からハードコア・ポルノに出演し、1987年、政党「イタリア急進主義者」から出馬して当選し、イタリア下院議員となったことが世界的に話題になりました。私もこの時のことはよく覚えています。

1989年に最後のハードコア映画に出演してポルノ女優を引退し、1991年、米国の現代美術家であるジェフ・クーンズと結婚。同年、愛の党(Partito dell’Amore)を結党、1992年、離婚。

以降も政治活動を続け、祖国ハンガリーでも立候補してますが、落選しています。結局、国会議員だったのは1期のみです。

彼女は歌手でもあって、歌がエロかわでいいんですよ。

 

 

 

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