松沢呉一のビバノン・ライフ

プッシー・ライオットのニカ・ニクルシナはプーチンの死を願う—ロシアから脱出した人々の調査[中]-(松沢呉一)

ロシア国民の1%以上が国外に出たとの説—ロシアから脱出した人々の調査[上]」の続きです。

 

 

ジョージア国民のロシア人に対する警戒心

 

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つくづくプッシー・ライオットは正しかった。しかし、そのプッシー・ライオットも、獄中闘争以外、もうロシアで活動することは不可能で、主要メンバーは全員国外に出たと思います。

国を出たところで、生活は楽ではない。前回取り上げたオーストラリアABCのドキュメンタリー「The City where Thousands of Russians have fled since the Invasion」の中で描かれているように。ジョージアに移住したロシア人たちは、自分だって貧しいのに、ウクライナ人の支援をやっています。贖罪意識からそうしないではいられないってことですけど、「私はロシア人ですが、プーチンに反対です。戦争に反対です。ウクライナ人の味方です」とアピールしないと差別されかねないからです。

多くのジョージア人は「いいロシア人と悪いロシア人」の区別くらいついていますが、そうきれいに割り切れない。南オセチアをロシアに侵略されたジョージアでは、ロシア人に対する憎悪や警戒心が強いのです。

南オセチアもそうだったし、ウクライナに対してもそうだったように、ロシアはロシア人を守るという名目で侵略をするのが常套手段です。ロシアを嫌って脱出したと言いながら、侵略の先兵になるロシア人たちがいるかもしれないと警戒をする。

この番組ではそこまで出ていないですが、ジョージアでは宿泊施設、レストランなどで、ロシア人は「ウクライナへの侵略を支持しない」といった文言が書かれた紙にサインをしないと利用できないことがあります。

サインすれば利用できるのですから、たいした手続きではないとも言えますが、ロシア人だけそうしなけばならないのは差別的。ロシアのスパイだとしたら、平気でサインしましょうから、効果はないわけですけど、そのくらいジョージアではロシア人への警戒心が強い。

だからその警戒心を解いてもらう必要があります。

※プッシー・ライオットの一派であり、「Track About Good Cop」に出ているサーシャ・ソフィエフ(髪の毛を青く染めた男)が「The City where Thousands of Russians have fled since the Invasion」でロウソクの台にしているのはロシアのパスポートだと思います。

 

 

ニカ・ニクルシナの願いはプーチンが死ぬこと

 

vivanon_sentenceThe City where Thousands of Russians have fled since the Invasion」に出てくるプッシー・ライオットのニカ・ニクルシナはサッカーワールドカップの決勝戦に乱入した当時は大学生でした。あれによって拘束された4人のうちの1人で、以降、彼女は繰り返し拘束されていて、一度はロシアから脱出しているのですが、その後帰国して、TVレインの番組で司会を担当していたようです(前後関係がはっきりしないのですが、おそらく帰国後)。こういうところもTVレインが当局から目をつけられた理由でしょう。

彼女の父親はゲイで、そのために彼女が10代の時に自殺したそうです。プッシー・ライオットにはキャラや経験の濃いのが揃っていて、話題には事欠きません。

今回は過去の脱国とは違い、プーチンが死なない限り戻ることはないとニカ・ニクルシナは言っています。

 

 

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