ヴォルティススタジアム

【コラム】シーズン折り返し。現状を整理しながら、岸田一宏社長にも前半戦総括いただいた。

21節を終え、シーズン折り返しに入った。現状は勝点25で15位。20得点21失点、7勝4分10敗という内訳。自動昇格圏内の2位山口が勝点39、プレーオフ進出圏内の6位横浜FCが勝点35。埋められない差ではないが、同時に簡単に取り返せる差ではない。

やはり、目下の課題は得点数。6月の4連敗で失点数が重みはしたが、それでも守備面はリーグ上位の失点数の少なさを維持している。一方の攻撃面は自陣でブロックを敷く相手をいかに崩すかということに主眼をおいたプレシーズンだったが、押し込みながらも決定打を作りきれない試合も多い。そこに怪我人の影響が重なり、万全な状態で試合に臨めた試合が少ない前半戦だった。特に攻撃に直結する選手は現在も呉屋大翔、ナタンジュニオール、杉本太郎が長期離脱中。そこに山﨑凌吾の湘南移籍が重なった。また、来週は週中に天皇杯3回戦・鳥栖戦も控えており、直近の課題としては目前の3連戦をどう乗り切るかどうかだろう。

変化がありそうな点としては、第24節・大宮戦以降にピーターウタカの登録が完了する見込みだが、その特徴を現有戦力にどうフィットさせられるかどうか。また、シーズン序盤に多かった敵陣に押し込んで攻撃回数を増やす方法だけではなく、5月頃からはミドルゾーンでブロックを形成して切り替えを意識しながらスペースを上手く利用した縦に早い攻撃も模索している。ビルドアップの中心にいた大﨑玲央の神戸移籍もあり、少しずつ戦略は変化して行きそうだが、まずは7月をどう戦うのかどうかに着目したい。

ポジティブな面としては、長期離脱していた広瀬陸斗が確実に出場時間を増やしている。また、大学時代まで左サイドが主戦場だった大本祐槻の両サイドでの存在感が目立ちはじめた。そして、シーズン途中で加入した杉本竜士と狩野健太が基本的なフィットに時間を要することはなく順調な仕上がりぶり。岩尾憲とシシーニョが試合によって役割を変化させるバリエーションが出始めたのも好材料だろう。

そんな『収穫と課題』が見えた前半戦。岸田一宏社長にも前半戦総括、夏場の選手獲得などを含めた現状について話してもらった。

――前半戦総括を聞かせてください
全体的にはいいサッカーをしながらも結果が出ていないのが一番もどかしいですし、それだけに課題と修正の方法が難しい前半戦だったと思います。その中で監督はあの手この手を考えて、直近の大分戦(3○0)は少し工夫をした戦い方をしたと思います。これで1つ成功したとなれば、バリエーションを増やして色々な戦い方をできると思います。まだまだ結果はついてきていませんが、後半戦に向けていい弾みになったと思います。後半戦で必ず巻き返します。順位ほど勝点差はない混戦です。しっかり追い上げていきたいです。

――大分戦は、さまざまな戦略に対応できる柔軟性という見方、これまでの徳島とは異なる戦略という見方。色んな捉え方ができます。どう、ご覧になられましたか?
色々な見方があると思いますが、これまでとすごく違うかったかどうかで言うと、すごく違ったわけではないと思います。相手のポゼッションの取り方に対応した方法で、これまでと同じコンセプトは要所要所でありました。その中でリスクヘッジをしながら安定した戦い方だったと思います。ご質問の答えとして、いままでやってきたことに対して“徹底的に”という点では異なる視点もあったと思います。しかしながら、バイタルの使い方であり、崩し方やボールの動かし方といった攻撃方法は積み上げてきたものだったと思います。ただ、その中でハイプレスは若干薄まり、相手のポゼッションを分析した方法だったのも事実です。

――大分戦では極端に変化がわかりやすい戦略だったのでいつもと異なる印象を受けやすかったですが、これまでも昨季の湘南戦や松本戦ではコンセプトに変化をつけましたし、昨季の山形戦も戦略として守備戦術を変更したのを記憶しています。
おっしゃる通りです。ただ、大きな軸という点で戦い方は変わっていないと思います。

――軸という点で、主力選手の移籍や怪我の影響がある現状です。まだ夏場の登録期間まで時間はありますが、そのあたりはどう捉えていますか?
まだまだ順位も勝点もわからない状況です。夏の動向で他クラブがどういった選択肢を持って動いてくるかどうかで後半戦の流れが変わってくるでしょうし、まず我々としてはプラス要素としてウタカを獲得して第24節・大宮戦以降の登録見込みです。彼の良さを引き出すために戦い方のアレンジが入ったり、アクセントがついたりする部分もあると思いますが、リカルド監督は皆さんもご存知の通りの監督です。私自身もまったく心配していません。戦い方の幅が広がり、プラスの要素が増えると思っています。

――主力選手の移籍について。現状では引き抜かれているという表現が正確だと思います。特にいいパフォーマンスをしながらもJ1昇格できなかった翌年は、わかりやすく戦力ダウンに直結することもあると思います。しかしながら、クラブ方針として伸び代のある選手を中心に獲得し、チームとしても個人としてもJ1を目指していくという視点ではしっかり歩めているのではないかと思います。この半年で別の課題も新たに見えたかもしれませんが、総合的にはしっかり歩めていると受け止めて構いませんか?
おっしゃる通りだと思います。クラブが掲げているスタイルに沿って進んでいると思います。現状ではJ1チームに引き抜かれるという表現を使いますが、クラブが目指してきたスタイルが実っているからこそ成功している側面として、しっかり成長したことが評価されて出て行くことは嬉しいことでもあります。もちろん、その反面としては残って欲しい戦力です。また、心情としても「おって(居て)ほしい」という気持ちがあるのも事実です。

――このコンセプトを決めた時点で、良くも悪くも起こりうるサイクルがいま起きていると思います。しかしながら、常に成長できる環境と人材を整え、同時に魅力的なスタイルでJ1昇格を狙い、定着するために底力をつけて行こうと尽力している最中だと思います。とはいえ、昨季からこの夏までに起きた事柄のように、主力選手が引き抜かれる可能性に対して怖さを持つことも同時にありませんか?
そういう状況も踏まえて編成しています。チーム比率を考えながら若手だけではなくチームの力を引き上げてくれる選手もバランスよく獲得しながら、徳島に来たすべての選手が成長できるように考えています。だからこそ、選手移籍が起こりうることを脅威には感じていません。逆に成長するために徳島へ行きたいという選手が出てくることにもつながると思っています。
もちろん色々な声があると思いますが、そのすべてが期待の大きさだとプラスに捉えています。だからこそ、その期待に対して現状の結果がついてきていないことは申し訳なく思います。先ほど申し上げたように、後半戦で巻き返しを図ります。

明日から後半戦に向けた準備がスタート。心身ともに過酷な夏のシーズンに突入するが、「夏場に強い」とまことしやかに囁かれる徳島ヴォルティスに期待したい!

reported by 柏原敏

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