ヴォルティススタジアム

Number8 |背番号8座談会(倉貫一毅×青山隼×岩尾憲)完全版

――サッカーって背番号に特別な意味合いはありますか? 例えば「8」とか。

倉貫 俺に聞く? サッカーの話になるで。

――よろしくお願いします。

倉貫 例えばの話。ウイングって聞いたら、外に張っている選手なんやなという『概念』として捉える。シャドーって聞いたら、内側に入り込むタイプの選手なんやなって捉える。でも、いまのサッカーに置き換えると、例えば[4-3-3]。アンカーがCBの真ん中に落ちてSBが攻撃参加すると、SBがWBになったりする。そうなると初めはWGでやってたポジションは押し出される形でシャドーポジションに変化したりする。そのときにポジション名で呼んでしまうと概念がついてしまうやん。だから、俺は番号で呼んだ方がいいんちゃうかなと。例えばSBを2番と呼ぶ。さっきの話で言うと、SBがWBになっても2番は2番。その方が適正がわかりやすい。だから、ユースでは番号で呼んでる。なので、今日の4番は青山、8番は岩尾。そう伝えれば、4番の役割はCBにピックアップで落ちたりとか(チーム内で共通理解が生まれる)。そういう意味で言えば8番は「こういう選手」って言うことはできるんちゃうかな。

――ということは、倉貫さんは背番号に関して、ポジションをベースとした考え方で呼んでいるということですか?

倉貫 そうやな。

――ポジションとは別の観点で、徳島ヴォルティスの過去の系譜を観ていくと、キャプテンシーがあるタイプの選手が8番をつけている印象も受けます。

倉貫 なるほどな。
岩尾 それは偶然かもしれない。8番だからというわけじゃないと思うよ。
倉貫 じゃぁ、青山はキャプテンしてたか。
青山 して・・・、ないですね(苦笑)。
倉貫 一応、話として触れとかなあかんのかなって思って(笑)。
全員 (笑)。
岩尾 例えば、ざっくりですけど『10』がエースみたいな印象はありますよね。でも、それ以外は大きく意味はないんじゃないかなぁ。
青山 ただ、キャプテンという話に関してはポジション的なこともあるかもしれませんね。SBがキャプテンすることってあんまり聞かないじゃないですか。
倉貫 確かに真ん中の方がしゃべることも多い。昔、俺がサイドをやったこともあったやん。でも、サイドからだとゲームコントロールは難しいよ。
青山 そうですよね。それとキャプテンって、やっぱり人間性だと思います。
倉貫 俺はお前が思っているほど、いい人間ちゃう。
全員 (笑)。
倉貫 俺と憲の決定的な違いは、そこや! 憲は良いやつ。俺は悪い人間。でも、俺が上手なのは、根本が悪い人間やから、真面目じゃないやつの気持ちは非常によくわかる。ユースの選手でもちょっとヤンチャなやつの扱いは抜群に上手! 外国人の扱いも! 天才的に上手よ。だから、指導者はめっちゃ向いている思う。

――理想のキャプテン像ってありますか?

岩尾 僕はないです。人が変わると、すべてがゼロにリセットされる。毎年、チームが変われば同様に。加えて期限付き移籍とか、年上とか、チーム編成って変数が多い。なので、理想をあまり作ってもしょうがない。この3年間でそう思いました。もちろん最初は「キャプテンとはこうあるべき」という青写真はありました。でも、やっていくうちに、そのやり方では意味ないなと。そこへ自分がはまりにいくのか、自分が変化してアジャストしていくのか。そうなると絶対に後者じゃないと無理だと感じました。特に2年目の夏以降。なので理想像は、あまりないです。そこに答えはないと思います。毎年探していくものなのかな。例えば、どうやったら(藤原)志龍は言うことを聞いてくれるのかなぁとか(笑)。
倉貫 (笑)。
岩尾 難しいですよ。(一見陽気そうな)外国人も、彼らなりのストレスを溜めている中で一緒にやっている。ただ、出場している選手、していない選手にかかわらず、1つのチームとしてストレスを溜めているのは「これだ!」ってわかったときは、結構みんなに喋るようにはしています。そうやって行動しながらチームを1つにしていかなければいけないなとは毎年感じています。
青山 僕は若い世代のときにキャプテンを任せていただいたこともありますが、プロになってからはありません。昔は「気持ちで引っ張る!」みたいな感じでしたね。話は逸れるかもしれませんが、引退して思ったのが、キャプテンシーのあるタイプは、どんな世界でも常日頃からアンテナをはっていると思います。いろんなことに気を使える人が、いろんな人をカバーしているとか。そういう所がサッカーにおいてもプレーで出るんだろうなと。引退したからこそ、気付けたというか。やっぱり人間性が出るんだなって。
倉貫 人間性にこだわるよな?
青山 すごく思いますよ。試合を観ていても、そういう人間性が出ているって感じます。一毅さんが先ほどお話しされたように、もちろん現代サッカーのようなサッカー要素もあるんですけど、僕はそれ以上に人間性が出るスポーツだなと思いながら観ていました。


――いまのお仕事にも通じる話ですか?

青山 そうですね。僕はサッカーしかやってきていませんが、他の世界に出てもサッカーに例えて考えています。例えば1つの映画を作るにしても、1つのチームで作るわけなので。今日の俺はベンチみたいな役だなとか。途中から出て、この一言だけでも結果を残したなとか(笑)。通じるものはあります。

――お二人が在籍していた頃から、クラブとしてポジティブに変化した部分はなんですか?

倉貫 俺が来たときは、ずっと最下位やったから。いろんな意味で変わったと思うよ。順位もそうやし、予算もそうやし。いまはクラブとして、「こういうサッカーがしたい」とはっきり打ち出そうともしている。同様にアカデミーでもこうやって指導して欲しいって具体的になってきている。クラブが15年間を経て、良くなってきているということだと思う。J1昇格も経験して、上のカテゴリーがどういうものなのかも肌で感じた中で、変化していっていることが多いんやろうなと思う。まだまだ足りないこともあるだろうし、そこは今後が楽しみな部分。俺らがやってきたことが良いとか悪いとかはわからんけど、いまは憲とか、いまの選手たちが新しいクラブの歴史を作っている最中やろうから。それを楽しみながら観ている感じです。

青山 僕が入ったときは選手補強も含めて組織がガラッと変わったタイミングでした。そして、最下位も経験していたときだから、ビジョン云々以前に「とにかく勝利!」。そのために、ただガムシャラでした。少しでもこのクラブの順位を上げようと。J1昇格なんて、ほど遠いというか。でも、「ちょっとでも上を」と頑張って中位に入れたりして。その中で何となくですけど、こういうサッカーをやっていこうとできてきたように感じます。タイミングよく僕は伸二さん(小林監督※現・北九州監督)の下で昇格できましたが、その背景にはいろんな歴史があったと思います。その後、残念ながら降格しました。でも、降格もクラブにとっては歴史の1つです。その後に憲や新しい選手が来て、新しい歴史を作ろうと次の変化を模索しながら挑戦しているところだと思います。僕が在籍していたときとはクラブの進み方は違うかもしれません。ただ、選手にとってはクラブハウスも含めていい環境がある中で、自分たちの現状を受け入れながら、いい変化をしていってる最中だなと感じています。

前のページ次のページ

1 2 3
« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ