青赤20倍!トーキョーたっぷり蹴球マガジン

無料記事 第92回 天皇杯全日本サッカー選手権大会 2回戦 【横河武蔵野FCvs.FC東京】:<今週のピックアップ> 石川直宏(2012/09/12)

先発も、56分間のプレーでベンチに下がった石川直宏。ランコ ポポヴィッチ監督は体力面を考慮しての交替であることを本人に告げていたようだが、はたしてそれが理由だったのか。横河武蔵野FC陣内にスペースがないことから、異なるタイプの選手にシフトする戦術的な理由もあったのではないかと推測できるが……。

ピッチ上とベンチから試合を観た石川が、下部カテゴリーのチームが「Jクラブ喰い」を狙う天皇杯特有の難しさ、反省を語った。

「かなり独特の雰囲気でしたね。獲った瞬間、ウラに狙いに行く部分を前半、特に意識していました。ただ、そこで慌ててボールを蹴ってしまい、相手のボールになると自分たちの攻撃ができない、リズムを失う怖さもあった。そこを統一できなかった部分も……。

抜け出せるシーンは動きのなかではあったように思うし、ボールが出てくる出てこない、というだけであって。攻め急ぐリスクも考えながらプレーをしていて。いろいろと考えながらプレーすることが多かったですね。それだけ相手もそういう(考えさせる)戦い方をしてきた、というのは、あると思います。
自分たちは最初、うしろを四枚で行こうとしていたんですけれども、相手が5バック気味で来ることがわかったので、その辺りは前を柔軟に当てはめてウイングバックで、うしろ三枚でというような、柔軟なかたちで対応できたと思います。

フォーメーション云々というよりは、自分たちがつなぐなかで、リズムをつくり、相手の隙を衝くサッカーを変わらずにやろう、ということはずっと練習でもやっていましたし。ただ、その隙を衝けなかった。相手の集中力は非常に高かったと思います」

──独特の雰囲気とは、たとえばこの昼間の時間も?

「そうですね。この時期に、昼間に試合をするということもあまりないですし。会場にいればそういう雰囲気を感じられると思うんですけど、毎年感じられる。
去年もそうだったんですけど、最初を突破することの難しさは非常に感じました。あらためてそういうことを思い知らされたので、そこから学ばなくてはいけない。次につなげなくちゃいけないなと思います。

この雰囲気は、毎年、戦ううえで乗り越えなくてはいけない部分なのかなと。この暑さで連戦だし、と、交替するときに監督には言われたんですけど。体力的には問題なかったと思います」

──引かれると難しいですか?

「どこも(引いた相手には)苦しんでいると思う。たぶん、横河もリーグ戦ではこの戦い方をしていないと思うんです。勝つための手段を徹底的にピッチで表現してきたというか、そこを越えられなかった悔しさがあり、相手がよかった部分もあり。非常に悔しいけど、この敗戦からも学ばなくてはいけないと思います。こういうやり方をしてくる相手はそんなにいないですけど、学べることは多いと思う。そこから得られるものを、次につなげないといけない」

──これで、ACLに出るにはリーグ戦3位以内を狙わなければならなくなりました。

「そこはみんな理解していますし、自分たちにはまだそのチャンスがあるので。去年からJ2、天皇杯、ACLと、いろいろな経験をしていますけれども、成長するうえで、ことしはまたいろいろな経験を消化しながらやるべき一年なのかなと思うし。経験を整理することができて自分たちの力になったときには、また同じような相手だったらこういうふうにやることができる、という引き出しの多さにつながると思う。さきほども言ったようにこういう出来事、悔しさも含めて、今後のチームの糧にしなくてはいけないですね。それだけの材料は揃っていると思うので。きょうもそうした一戦だった」

──ACLでは自分たちが格上の相手に向かっていったわけですが、こういうカップ戦では、イギリスでも3部のチームに負けたり、逆の立場になりますね。

「ぼくも試合前に思っていましたけど、海外でもそういうかたちでやられるシーンを結果として観てきているし、どこの国のどのレベルの選手であっても、難しい戦いなのかなと思います」

──ことしももう5チーム(コンサドーレ札幌、FC東京、ヴィッセル神戸、サガン鳥栖、サンフレッチェ広島)、J1のチームが敗れました。

「年々J1チームの登場時期が早くなり、もう少し先だったら、ということもあるのかもしれないですけれども。でもそれだけレベルの差がなくなってきているところもあるし、サッカー自体のレベルが上がってきていると思うので。戦ううえで隙を見せるような部分は、きょうはなかったし、ぼくは、いつもどおりの入りをしたつもりでいるので。

そういったところだけが敗因ではなく、崩しきれなかったところ、戦術的な部分はもうひと工夫必要かなと。入りがよくないとか、相手を見下すようなことはきょうに関しては全然なかったと思うし、いい集中のなかで入れた。原因はちがうところにあるのかなと思います」

──相手もきっちりオーガナイズしてきて。

「そうですね、はい。そういう戦い方をしてきましたし」

☆☆☆[今週のピックアップ]特別篇☆☆☆

<岩田啓佑>(横河武蔵野FC、MF)

川崎フロンターレユース出身の7番、岩田啓佑が放った一撃が、FC東京連覇の野望を打ち砕いた。早稲田大学では渡邉千真とチームメイトだった男。当時、大卒新人ながら2009年JFL2位の立役者となった岩田がこうして全国規模で脚光を浴びる日が来るとは、誰が予想しえただろうか。

──決勝点は。

「気持ちを込めて蹴ったので。結果的にはぼくが点を獲りましたけれども、スタンドでは、ユースの子たち、ジュニアユースの子たち、メンバー外の選手たちが応援してくれていたので。ほんとうに、横河武蔵野全体で、獲ったゴールだと思います」

──試合後はチームメイトとはどんな話を?

「おれ“持ってる”な、という話をしました(笑)。嬉しいですけど、また次もあるので。気持ちを切り換えて、次の相手を倒したいと思います」

──天皇杯の次戦に向けて。

「ここまで来たからにはひとつでも多く勝って、武蔵野のみなさんに元気を。いいニュース、いい報告を届けられたと思いますけど、とにかくぼくらはアマチュアなので、一所懸命ひたむきに、サッカーをしていきたいと思います」

──FC東京のサポーターから勝どきの挨拶を求められていましたが。

「んー、まあ……素直に、気持ちがよかったです(笑)。それに尽きると思います。前回王者ですし、J1でやっている名が知れた選手たち相手に。

ぼくらは全員、昼に仕事をして、夜に練習をしているアマチュアなんですけれども。ぼくらがJ1に勝ったということが、ぼくらも嬉しいですけれども、サッカーをやっているすべての人たちに、夢だとか希望を与えられたのかなと思います」

──職場の同僚も大騒ぎなんじゃないですか?

「そうですね、あした会社に行ったらたいへんなことになるかもしれないですけど(笑)。はい」

──東京都代表として、今後はFC東京の分まで戦うことになりますか?

「そうですね。本大会もそうですけど、予選でもぼくらは非常に苦しんで、苦しんで苦しんで、勝ち上がってきたので。ほんとうに、アマチュア含め、FC東京さん含め、負けたチームの分まで、そういったいろいろな人の思いも込めて、次の一戦に向けて準備していきたいと思います」

──依田監督も、正直、攻撃に関してイメージがわかなかったと仰っていたんですけど、それしかないという状況の、最後のセットプレーで、あれは、直接行こうというのは、蹴る前から決めていたんですか?

「ファウルをもらった瞬間に、時間帯もロスタイムに入っていましたし。ぼくらとしては、シュートを撃てることができていない時間帯がずっとつづいていたので、ここはもう、思い切ってゴール前に蹴って、点が獲れればラッキーですし。シュートで終わって、ぼくとしては延長戦に入るつもりではいたんですけれども。とは言っても、千載一遇のチャンスだったので、しっかりとボールに気持ちを込めて蹴りました」

──軌道自体もキーパーがぎりぎりのところで触れない、すごいキックでしたね。

「そうですね(笑)。あのコースですと、キーパーに向かって速いボールを蹴るのが、常だとは思うんですけれども。キーパーが前に出ているなというのは試合中から見てわかっていましたし、そういった相手の隙をうまくつけたと思います」

──シュートを撃とうと思ってのフリーキックだったんですね?

「はい」

──試合中はほんとうに守備がたいへんでしたね。

「はい(笑)。もう、5-4-1でうしろのスペースをまず消して。ぼくらの前でボールを触られる分には、いいのかなと。ほんとうに苦しかったです」

──数的優位をつくったところで、ようやくひとりが獲りに行く守り方で?

「そうでしたね。ぼくらがアクションを起こして前から獲りに行くというのも考えられたんですけれども、やっぱり相手は巧いですし」

« 次の記事

ページ先頭へ