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無料記事 【プレビュー】2012 Jリーグディビジョン1 第26節第1日 FC東京対川崎フロンターレ(2012/09/21)

あす、多摩川クラシコ

Jリーグ加盟以降の対戦記録を遡り、20回目に計上される多摩川クラシコ。川崎フロンターレとのJ1第26節が、あす(9月22日)、東京・味の素スタジアムにておこなわれる。
直近の変化をとり、前期に対戦した川崎フロンターレとはちがう、と警戒する選手もいれば、監督が変わってもこの何年か、同じ哲学で戦ってきた攻撃的なチームであることにかわりはない、と評するランコ ポポヴィッチ監督もいる。
寄って見るか、引いて見るかのちがいで、どちらの見方も外れてはいない。ひとつだけ言えるのは、相馬直樹前監督のときとは異なるチームになっているということだ。

4-4-2の陣形を維持してバランスが安定、失点が少ないかわりに爆発力がなく得点も少ないという、ここ数年の川崎の「大量得点/大量失点」サッカーとは、別の色をしたロースコアのチーム。それが相馬フロンターレだった。
監督が風間八宏に交替すると、どちらかと言えば「大量得点/大量失点」のほうに舵がきられた。ボールを失わないかぎり失点することはないという、極端なボールホルダー優位の思想から入るサッカーで守備ありきではないから、得点も失点も同時に(あるいはシュート数も被シュート数も同時に)多くなる試合がある。関塚隆元監督との思想上の共通点はないが、結果としてはフロンターレ文化に適合した、と、言えるのかもしれない。

白星に餓えているはずの川崎

川崎フロンターレはここのところ結果が出ていない。リーグ戦での勝利は7月28日のJ1第19節で大宮アルディージャに4-1と大勝(シュート数は大宮の16本に比べて13本と少ない)して以来なく、その前も第15節から第18節まで勝ちがない。ちなみに風間宏矢と風間宏希が先発メンバーに名を連ねたのは大勝した第19節以降だ。
直近の一〇試合は●△●○△●△●●△。ことしのFC東京は例年の弱きを助け強きを挫く善人ぶりとは様相がした……かと思っていたら、大宮に負けてサンフレッチェ広島に勝つなど、いつの間にか、いつもどおりのキャラクターに戻っている。
なぜ東京が下位チームに苦杯をなめさせられるのか。相手が連敗中であったり残留争いの渦中にいるなどして勝利に餓え、集中力を高めているときに、偶々ぶつかってしまう、というめぐりの悪さも、原因のひとつにはあるだろう。
そうであるならば、白星のない川崎は、じつに警戒すべき相手ということになる。

川崎は弱いのだろうか? 順位表を眺めれば、順位は東京と三つしかちがわない。勝ち点差は4。引き分けと負けばかりで足踏みしているにもかかわらず、中位にいるのだから、やはり舐めていい相手ではない。

ボール保持をめぐる戦い

具体的には何が特徴なのか? 権田修一が強い関心を抱いている個人戦術の部分、一つ一つのプレーの選択に根拠がある、というところだろうか。止める、蹴るについての思慮深さ。そして可能なかぎりボールを保持して前進する。思想的にはFC東京の今季のサッカーに親和性がある。似たもの同士と言う選手もいる。

石川直宏は言う。
「多摩川クラシコはやりがいがある。前回とは監督が変わっていて、チーム自体の印象も変わっていますね。
(ポゼッションサッカー同士で)もしかしたら点の獲り合い、撃ち合いにはならないかもしれないですけど、同じ攻撃的なサッカーをめざすチーム同士の勝負にガチンコで勝ち、結果を出して上に行きたい」

大量得点/大量失点のスコアにならないかもしれないというのは、お互いにボールを保持する時間が長くなることで、ノーガードでオープンな乱打戦にはならず、攻撃し合っている印象が強いわりには、点が入らない展開もありうる、ということだ。
ボールキープ合戦のロースコアなのか。それともフィニッシュの回数も増えてたくさん点が入るのか。東京は前節の反省をもとに連動性やすばやい判断を磨いている。そう、だらしのないサッカーはしないだろう。

特異な思想を掲げた風間フロンターレとの対戦は異文化との衝突になる。戸惑っているうちに失点することがないよう、それこそ前節で苦渋を味わう原因となった、試合への入り方の悪さを修正し、キックオフから全力で戦えるよう、心を整えておく必要がある。
主導権を握っている者が試合を動かすという考えがお互いに強固なチーム同士の試合であるだけに、弱気になってはいけないし、常に先手をとるよう積極的に動かなければならない。
フォーメーションとかシステム云々ではなく、まず個の局面に勝つこと、それ以前に試合が始まる前から意識を研ぎ澄まし、すばやく正確な判断ができるようにしておくこと。そのレベルが問われる一戦になる。

ランコ ポポヴィッチ監督の談話

「今週のトレーニングは、ほんとうに、いい感じで進んできています。リフレッシュできていますし、(故障者が戻ってきて)これだけ人数がいると、おのずと質も変わってくる。
(取りこぼさないためにどこに気をつける?)
どのポイントというより、自分たちのサッカーをしっかりやりとおすことですね。川崎はオフェンシヴなチームですし……。相手に合わせるのではなく、どんな相手であっても自分たちのやることをやってペースを掴むことが大切です。
(川崎とは点の獲り合いになる?)
そうなると思います。川崎も攻撃的にやってくるチームですし。ただ、川崎は風間さんが監督になったからというのではなく、何年間も同じ哲学で攻撃的なサッカーをやっている。
わたしはセキさん(関塚隆)のときから観ていますが、やることはそのときからさほど変わっていない。チーム力も個人能力も高いと思います。
まず自分たちが何をするのかが、もっとも重要です。
強いチームを相手にした多摩川クラシコということでモチベーションは上がると思います。
ファン、サポーターのみなさんには、おおいに雰囲気を盛り上げてもらいたいと思っています。いい試合にはいい雰囲気が必要不可欠です。みなさんの力でスタジアムを満員にしてほしい」

高橋秀人の談話

「前回(第25節の対清水エスパルス戦)、前半が悪い試合をしてしまったので、立ち上がりからしっかりしたサッカーをやっていきたい。
川崎は一回目の対戦のとき、彼らのホームで負けていることから、死にものぐるいで向かってくるものと思っています。
去年はJ2でダービーを経験しましたけれども、一歩失点するというスリルのある試合でした。いい緊張感のある白熱のバトルになると思う。
チーム状況はよくなっている部分もあります。あとは冷静にやること。
理屈云々ではなく、気持ちや勢いをからだで表現するプレーを求められる。
代表でケンゴさん(中村憲剛)の、オフ・ザ・ボールで動きを外して受ける部分、ボールを止めてトラップするところから淀みなくプレーできる部分を見ているので、そこに気をつけたい。
小林悠選手と対戦するのが楽しみだったんですが、けがをしたらしくて無理みたいですね。残念です。
前節の反省としては、ボールを動かそうとしているときに、からだが止まっていることがあったので、相手のマークを外して動きながらトラップするようにしたい。ボールを動かしているのにからだが止まっているという状況をなくしたいと思います。
川崎は一歩「外す」ことに長けているチームだという印象があります。
清水戦のときもそうだったんですが、権ちゃん(権田修一)がナイスセーブをするので、ちょっとシュートを撃たれても大丈夫という甘えがある。
川崎はシュートにまで持って行くことに長けているのでそこに気をつけたい」

権田修一の談話

「川崎は、相手の監督が替わっているところに興味があります。風間八宏監督のインタビューを読んだり、試合を観たかぎりでは個人戦術を追求している特色がある。メンバーも変わりました。
その風間さんのサッカーをぶれずにやりとおすことができているチーム。難しい相手になる。
誰がというのでなく、選手一人ひとりが風間さんになってから、ボールの受け方、止め方、相手の逆をとるところを突き詰めてレベルアップしている気がする。
止める、蹴るがうまい選手がいい選手だと思います。Jリーグではそういうところをごまかしている選手が多いですが、去年までの、あるいは前回の対戦までのフロンターレとちがって、止める部分への考えが深まっている、あるいは“こうしたい”という部分が高度になっている。
きょう(※19日)の練習でも(自分たちに)あったんですけど、なんとなく(なぜそうなのかという根拠なしに)浮き球のパスを出してしまうことがありました。
川崎にはそれがない。相手の止めやすいところがそこだからとか、意思を持ってパスを出している。
最後にゴールキーパーと1対1になったときに、いいところに置かれたら、キーパーとしては嫌ですよね。
フロンターレとの対戦が楽しみです。
ファン、サポーターのみなさんはいつも雰囲気をつくって盛り上げてくれるし、それはクラブとしての成果だと思うので、期待に応えたいと思います」

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