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無料記事 【監督・選手コメント】2012 小平グランド J1第26節から第27節に向けて、監督・選手コメント(2012/09/26)

内容の追求か、それとも勝ち点3か?

理想と現実、内容と結果の二項対立で、常に理想側、内容側の言説を選択するランコ ポポヴィッチ監督。そうした物言いは、白星、勝ち点3を渇望している人間からすれば、素直に受け入れられないものかもしれない。
しかしポポヴィッチ監督が理想主義に傾倒するあまり、結果をまったく意識していない、ということはありえない。直近の二試合で「勝ち点5」を取り逃がしているいま、勝利を渇望する言葉を、直接本人が発している。
それに、シーズン当初から掲げている「トップに当てて落として三人目が連動することで始まるタテに速いパスワーク」だけでなく、ショートカウンター一辺倒のカウンター型チームに変貌した試合が何試合かあった。

結果を得ながら理想を追求するというバランスは、それぞれがその人なりに持っているはず。
理想を追い求める姿勢がぶれない羽生直剛にしても、内容を追求したうえで「結果がついてくればベスト」と、勝つことを忘れてはいないし、そもそも勝つための手段としてボールを支配して主導権を握るサッカーを認識しているフシすらある。

所謂立ち上がりの時間帯、スムーズに試合に入ることができずに失点する。ファーストハーフに先制できず、0-0で折り返したセカンドハーフに失点。
そうした試合運びの拙さ、「スイッチ」が入る遅さ、立ち上がりの悪さは何度も指摘されてきたことで、しかしいまだに修正しきれていない。
気がつけば中位。この状態に危機感を抱く選手もいる。個々に抱く危機感に深刻度の差はあっても、いまのままでいいと思っている選手、スタッフはいないはずだ。

26日の練習後、ポポヴィッチ監督と羽生に、前節の反省、次節に臨む姿勢について訊いた。
興味深いのは、前節の対川崎フロンターレ戦後に羽生が自分たちを「未熟」と評していたのとほとんど同じ部分、セカンドハーフ序盤の拙さについて、ポポヴィッチ監督もまた「成熟していない」という言葉を用いて評したことだ。

○ランコ ポポヴィッチ監督

──二週つづけてホームで試合をできることが、コンディション維持の点で有利に働いていますか?

ポポヴィッチ もちろん。移動がないだけ有利だ、ということは言えます。また大勢のサポーターのみなさんとともに戦えるアドバンテージもあります。この試合に関しては内容に結果がついてくるように、みなさんにこの前の試合(前節対川崎フロンターレ戦)の借りをお返ししたいと思います。

──いい内容で負けたとなると、勝つ確率を高めるためには、さらにチャンスの数を増やしたり、支配する時間を伸ばすことが必要になりますか?

ポポヴィッチ 単純にチャンスの数を増やすと言っても、前回の試合に関してはチャンスの数はたくさんありましたし、バーを叩いたのも2、3本あった。もしそのうちの1本がバーに当たってゴールに入ったとしたら、またちがった話になっていた。
いまいただいた質問も、ちがったものになっていたと思います。どう思いますか? もしバーに当たったシュートがすべて入っていたとしたら。そうやって結果がついてきて勝っていたとしたら、何を修正したらいいと思いますか。いい試合をして、結果も出していたとしたら。

──それと同じレベルのプレーを何回も、次の試合でもできるように、安定させていくことだと思います。

ポポヴィッチ それはそのとおりだと思います。ただ、自分たちも継続していいサッカーをする、ということは意識してやってきています。この前の試合に関しては、チャンスをつくれなくてやられたわけではなく、チャンスをつくったけれども、入らなかった。決められなかった。少し、運に見放された部分もありましたし。
相手が前半、ウチに対して撃ったシュートは1本だった。後半に入って2本目のシュートがゴールを捉えた。やはり、そのところがまさに修正点だと思います。相手にその日、2本目に撃たれたシュートをゴールに決められたこと自体が、反省点だと思いますし。その失点の場面では、四つのミスが連鎖して起こっている。
川崎のようなすばらしいチームを相手にしっかり抑え込んで決定的なチャンスを二回しかつくらせなかったことは評価していいと思います。前半の中村憲剛のシュートと、後半の1失点目ですね。2失点目に関してはセットプレーですから、崩されたわけではない。
だから決定機を、試合全体を通してチャンスをつくられたのは二回。そういう質の高いサッカーを見せることができたからこそ、結果がついてこなかったのは残念です。しかし何かを変える必要はない。
内容が悪くとも勝てば、いい試合だった、よくやった、と。まだサッカーをそういう眼で観ている人はたくさんいます。すべてに於いて相手を圧倒していても、負けてしまったらすべてが駄目だ、という論調には、やっぱりなってほしくない。サッカーを正当に評価してほしいですし、みなさんにそういう眼を持っていただきたいと思います。
ただ、この前の試合に関してはシュートが入っていれば、ゴールを決めるべきときに決めていれば、パーフェクトだったと言える試合だったと思いますけれども、それができなかった。だからこそわたしたちはまだまだ成長しつづけないといけないですし、もっともっといいサッカーをして、そしてもっといい結果を出していく必要があると思います。

──たしかにチャンスはたくさんつくっていたと思います。だからチャンスを増やすという解決法は難しいなと思ってさきほどの質問をしたのですが、勝つための方策は何かという問いに対する答えとしては、いまのお話で答えになっていると思います。勝つためには、決定機を相手につくらせないことが大事だということですね。0-0なら負けませんから。

ポポヴィッチ まだそのレベルにウチが達していない、ということは言えますね、たしかに。自分たちが決めきれないならば、相手にもそれまでは決めさせない(必要があるが)、そういう意味で成熟しきれていない面があると。
昨シーズンはJ2で戦っていました。J2ではそういうミスをして隙を見せても、ほとんど失点にはつながらない。でもJ1では失点になって返ってきますから。

○羽生直剛

──もう少し試合をやり込まないと、おっしゃっていましたが、コンディションはいかがですか?

羽生 コンディションはよくなっていると思う。意識的に動くようにしているし、試合にはこのあいだより慣れているはずなので。
相手はちがいますが順位表の上にいるチーム(ジュビロ)。まとまっていると思います。組織的なハードワークを求めるイメージですが、そのなかで個性のある選手はいる。かんたんに崩れないですね。規律がありながら個性を活かす。
相手は上の順位にいるチームなので、まずはしっかりとチャレンジする気持ちでいたいですね。ぼくらがその順位にいてもいいはずだ、順位が逆でもおかしくないというゲームを立ち上がりからする姿勢を見せて。
このあいだの前半のような流れに持っていきたいし、その流れで得点することが重要。攻守両面でアグレッシヴに主導権を握ろうとするサッカーをしないといけないと思っているので、それにトライしつづけたい。見せつづけるというか。

──やはりつづけることが大事ですか。

羽生 どこが相手でもしっかりとやれば、ぼくらが多くの時間、主導権を握ることが可能だと思っています。その時間が半分だけなのか、10分なのか70分なのか、そこを追求していってもいいのかなと。
いまの順位とか置かれている立場、クラブの目標から言えば、いまやらなければいけないことは、相手云々というより、自分たちが示そうとすることだと思う。難しい試合にはなると思いますけど、その姿勢だけは崩さないようにしたい。

──支配する時間を伸ばしたい?

羽生 そうですね、そこがぼくらがめざしているはずのところなので。ぼくはそう思っています。クラブもそうですし、監督もそうですけど。
バルサも退屈だって言われたことがあると、シャビが言っていましたけれども。そういう意味では、ぼくらも「シュート撃て」と言われても、ぶれさせてはいけないところがある。結局、自分たちが支配している時間を長くするというのをぶれさせずに、それに結果がついてくるのがベストですけど。次の試合も順位が上のチーム、そこにもしっかりと支配しようとする姿勢は見せたい。

──ファンは、内容もけっこうだが結果が欲しい、と思っています。

羽生 見せないといけないですね。でも勝つために、いままでやってきたことを捨てて、まずディフェンスを敷くというサッカーにしていいのかどうか。
つなぐのは得意じゃないけど、ディフェンスだけは絶対に負けないとか、フィジカルが強い人を置いて、潰すところだけを意識する、それを90分トータルで必死でやって、最後のワンプレーで勝ちました、というサッカーにするのか。
それだけやって最後のワンプレーで負けました、となったら(納得はいかないはず)。みんなが、東京の多くのサポーターがそれを待っているのかと言ったら、そうではないと思うので。
このクラブが内容でもサポーターを呼べるようにするためには、自分たち首都のチームが、試合の主導権を握るサッカーをすることが目標になると、ぼくたちは思っているので。そこは、ぼくがやっている以上は(ぶれないようにしたい)。
ぼくはそういうサッカーが好きだし、ぼくが試合に出ている意味とはそういうことだと思うので。もし試合に出られたら、そういうところを意識してやりたい。やりつづけたいと思います。

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