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無料記事【トーキョーワッショイ!UC】インカレ準決勝までまとめ&決勝プレビュー(2013/01/05)

早稲田大学のフォワード秋岡活哉

いよいよあす1月6日14時、国立競技場にて、平成24年度 第61回全日本大学サッカー選手権大会 決勝の火蓋が切られる。
「トーキョーワッショイプレミアム!」的観点からはFC東京U-18出身選手が出場する大会としても注目してきたが、準々決勝で明治大学、準決勝で鹿屋体育大学が敗退。FC東京U-18出身選手が所属するチームのうち、残るは二年生フォワード背番号17秋岡活哉ほかが所属する早稲田大学のみとなった。決勝のカードは、その関東地区第3代表の早稲田大学対九州地区第1代表の福岡大学。秋岡は準決勝の対鹿屋体育大学戦でもセカンドハーフに途中出場を果たしており、国立のピッチでも勇姿を観ることができるかもしれない。

◆一回戦

全国から16の大学サッカー部が集結しておこなわれる戦国絵巻。一回戦は以下のとおりの結果となった(2012年12月19日)。
○鹿屋体育大学2-1高知大学
○専修大学3-1関西大学
○早稲田大学3-0徳山大学
○札幌大学3-2浜松大学
桃山学院大学0-1福岡大学○
○明治大学3(4PK1)3中京大学
○中央大学3-2新潟医療福祉大学
仙台大学0-2阪南大学○
まずは順当な勝ち上がり。ことし、FC東京に加入する三田啓貴所属の明治大学は試合への「入り」が悪く、開始わずか4分で失点、先行を許す苦しい展開となるが、延長戦でも決着がつかない3-3の激闘の末、PK戦で中京大学を下して準々決勝に駒を進めた。

【トーキョーワッショイ!UC】明治大学、PK戦にもつれ込む激闘の末に準々決勝進出! 三田実質2アシスト、岩渕1ゴール。次は185センチ級を多数擁する「人間山脈」福岡大学と!_Part2(2012/12/20)


また、2009年度第58回大会以来の決勝進出と初優勝をめざす福岡大学も苦戦。0-0の時間が長くつづく展開をがまんし、85分にオウンゴールで得た1点を守りきって一回戦を突破した。

【トーキョーワッショイ!UC】明治大学、PK戦にもつれ込む激闘の末に準々決勝進出! 三田実質2アシスト、岩渕1ゴール。次は185センチ級を多数擁する「人間山脈」福岡大学と!_Part1(2012/12/20)

◆準々決勝

準々決勝は以下の結果となった(2012年12月22日)。
○早稲田大学2-1札幌大学
専修大学1(5PK6)1鹿屋体育大学○
中央大学1-7阪南大学○
明治大学2-4福岡大学○

関東大学リーグ1部を制して「東の王者」と呼ばれた専修大学が鹿屋体育大学に敗れる波乱。また、第58回大会決勝の再戦となった川口会場の第二試合は、福岡大学がファーストハーフだけで4点を獲る怒涛の攻撃で圧勝。明治大学の反撃を2点に抑えて準決勝ラウンドの西が丘会場へと進んだ。

福岡大学はセットプレーで3点を獲り、42分には前線で勤勉なチェックからボールを奪ったフォワード岸田和人がそのまま持ち込んで自らゴールを奪い、4-0として試合を決めた。
後半、三田のアシストによる、また三田を起点とした2得点で明治大学は追いすがったが、勝利にはあと三歩及ばなかった。

【トーキョーワッショイ!UC】インカレ準々決勝&準決勝_Part2_三田啓貴_明治大学(2012/12/27)

【乾真寛監督(福岡大学)のコメント】

一回戦は200%負けない手堅い戦いでした。

こういうポゼッション型のチームとは相性がいいというか、きょうもパスはたくさんつながれましたけれども、サッカーはパスの本数で勝負が決まるわけではないので。
高さとボールを奪ってからの切り換わりの速さを意識して、持ち前の高さがこの大一番で活き、セットプレーで決まりましたから。
Jリーグを見渡しても、ウチくらい大きな選手が揃っているチームはない。
この雨で我々のセットプレーにかける思いがより鮮明に出たと思います。非常に迫力もあったし。
一回戦で足を痛めた清武(功暉、清武弘嗣の実弟)のかわりにキッカーを務めた平田(拳一朗)のボールがよくて。

(明治大学は)2009年に我々としては初めて全国制覇(総理大臣杯)した年に敗れてグランドスラムを阻止された相手でした。今回の組み合わせはそういうめぐり合わせになっている。
明治さんのパス廻しはバルサであるので、我々はチェルシーで行こうと。高さと強さと速さ、そういうちがう要素で勝負できるものはある。それがきょうは鋭いかたちで出たというところで、それもこれもうしろのキャプテン牟田(雄祐)を中心とした──最後は緩んでしまって2失点しましたけれども──センターラインにJリーグに行く選手や全日本大学選抜の選手が揃っているので、Jユース(出身者)によるパスを廻すサッカーが大学でも主流になってきていますけれども、我々はそれを追求しないわけではないですけど、せっかくフィジカルに強みを持つ選手が揃っているのでそれを前面に出した。
だからきょうは好対照。うしろと横は何本つながれようと(かまわない)。
去年、天皇杯で大宮(アルディージャ)さんに勝たせていただいて、どんなに廻されてもへこたれないという自信はある。
その意味では廻されましたけれども、あまりスピードアップするところはなかったので、対応できていたかなと思います。
後半も失点ゼロならよかったんですが、ここであまり完璧になってしまうと、満足してしまうので。(これを薬に)しっかりと締めて。
次の阪南さんは夏の優勝校。(その夏の総理大臣杯で)我々は二回戦で当たったんですけど、前半の出だしを失敗してしまって、0-2。後半は持ち前の強さ、速さで2-2に追いついたんですが、後半の途中で牟田がイエロー二枚で退場になったこともあってPK戦で負けている。
阪南さんもことしはバランスがとれたすごくいいチーム。ずっとライバルとしてやってきて。今回はリベンジシリーズ。2009年の永井(謙佑)がいなかった(インカレ)決勝のリベンジはまず果たせたので、次は今シーズン夏のリベンジを果たしたい。

マンUとシティの、マンUが強い気持ちで借りを返したプレミアの試合を見せた。それでぐっと力が入ったと思います。きょうは集中力が高く、勝負強さがしびれるくらいだった。フォワードがゴールをめざす気持ちが非常に強かった。シンプルでしたけれども、相手の守備が整う前にそれを衝いた、福大らしい、タテに力強いゴールだったと思います。
明治大学はなんとか乗り越えたいチームだったので、満足しています。

──一回戦で見せていない部分があると仰っていましたが、きょう見せたのはやはり……?
セットプレーですね。チーム(先発メンバー)の半分以上が185センチを超えていますから、Jを見渡してもなかなかないくらいの大型チームで。セットプレーやロングスローにはまだまだとっておきもあるので(笑)。少しずつ。

──4点目は守備の規律を崩さないなか、前線の守備から獲ることができましたが?
そうですね、(明治大学は)バルサスタイルというか2バックの状態になって両サイドバックが高い位置をとられるので、(こちらが)奪った瞬間はバランスが悪い状態になる。
10番の三田くんは非常の技術のある子ですけれども、ボランチの位置から出てくるので、奪った瞬間にはほとんどディフェンス二枚しかいない、ボランチがいてもひとりだけという状態ですから。その三人のところを、すばやく切り換えて攻めようという考えだったので。そこがことごとくはまってしまって。
きょうはシュートはできすぎです。ふだんはあんなに入らない。

強い気持ちで借りを返そうと。(2009年の)決勝戦のときは永井がA代表で呼ばれたんですけど、永井がいなくても絶対に勝ってやると言ったんですけれども、やられたので。きょうは正真正銘、新しい脱・永井で。
牟田たちが一年生のときに決勝戦に行っているので、なんとかこの牟田たちがいるあいだに、四年のあいだにもう一回行けると、国立が近いものになるんじゃないかなと。
(しかし)国立、国立というのではなく、阪南に夏の借りを返して、一個前に進めればなと思います。

──天皇杯でもそうでしたがこういう大きな大会になると田中(智大)くんの決定力が光るのでは?
まあ、一回戦は田中だけで5点は(決定機が)あったと思うんですが(苦笑)。あまり考えないで撃ったらよく入るという、そういうタイプなので。
きょうは本来、清武が入るポジションに田中が入って、それが結果的にうまく機能したかなと。明治の立ち位置というかポジショニングがどうしてもあそこのところが空くので、田中のところに流れが来たんじゃないかと思います。無心というか、きょうはフロー状態、とてもいい集中力の状態だったんじゃないですか。一回戦はおまえ高校生じゃないかというくらい力みまくっていて、からだのバランスが崩れるくらいだった。「来ているから、リラックスして撃て」と言ったら、きょうは当たりに当たりましたね。

──サイドからのボールはある程度跳ね返せるという計算があったんでしょうか?
もう、真ん中はキーパーもディフェンスもボランチも高さがありますし、身構えているところに入れてこられても競り負けるということはないし。その部分は、外はある程度持たれても真ん中では、と(は考えていました)。
最後は折り重なって、ゴール前のところでからだを張って守備するというところは、ウチはいちばん鍛えているので。
ポゼッションのうまみとか、きれいさ、美しいサッカーではない、専修大学のように美しいサッカーではないんですけど、力強いサッカーを、あるいは勝負強いサッカーを磨いて。
足許、足許のポゼッションサッカーが主流ですけど、永井がいたときは速いサッカーは、ことしはこれだけ高さがあるので、そういうスケールの大きさ、日本にない要素を持っている。
それを前面に出して戦っていきたいと思います。

──ロングスローからのゴールは気持ちいい?
きょうはもう、はい。ごちそうさん、という感じです。
ロングスローも投げるのが四人くらい。いまサガン鳥栖にいる藤田(直之)が36メートルとか38メートル投げますけど、ウチはいまの時点で逆のポストまで届くのが四人いるんですよ。
大武(峻)は(飛んできたボールを)競るほうですけど、投げるほうでも30、35メートル以上投げることができるので。投げるほうもいっぱいいますし、競るほうもいっぱいいる。
その辺もフィジカルが一段高いところにあるから、できることだと思います。
鳥栖が今シーズンあれだけJ1でがんばったというのは、すごくわれわれにも影響していますし。鳥栖の強化指定である選手もいたり、ウチの卒業生が鳥栖で活躍してもいるので、そこで感情移入しているところもあるんですけれども。
でも鳥栖さんもいっしょで、ほんとうに、ひたむきにサッカーを一所懸命やるというところで、がんばっているので。美しさはないかもしれないですけれども、ほんとうに自分たちのサッカーというものを、きょうはよく出せたのかなと思います。

──清武くんの足の具合は?
きょうは休ませられたので、次はもう大丈夫だと思います(※次戦、準決勝は先発は回避した)。

──ロングスローワーの使い分けは?
先発、中継ぎ、抑え。

──(一同笑)。基本は清武くん?
清武が投げればでっかいの、全部競り合いに行きますから。ゴールキーパーの周りに四人立てとけば、そこにピューと投げれば、コン、と当たっただけでね。
(セットプレーは左右で使い分ける)きょうは平田が左足で当たりましたからね。使い分けます。そこは秘密。

【神川明彦監督(明治大学)のコメント】

力不足。それだけです。

1対1も(福岡大学は)強いですよね。守備に関して。簡単に抜かれないですし、守備の構築の、レベルの高さには驚きました。
一年を通して何試合か大量失点の試合があった。その課題が埋まりきらなかったところはあります。
両方とも入りが悪かった。トーナメントで先制点を獲られたら、勝てるものも勝てない。ウチもいちからチームをつくっていかないと、という気持ちにさせていただきました。
来年監督10年目なので、ゼロからやります。
後半は一所懸命に自分たちのサッカーをやってくれたので恥ずかしくはない。
つなぐサッカーをやります、来年も。徹底して。

(相性の悪い川口に)セットプレーが入るね、ここね(苦笑)。

(一度、取材の輪がとけるときに)大学サッカーをよろしくお願いします。

**********

なかなか、個性の強い選手が多いものですから、まとめきれなかった感はあります。あきらかに福大さんのほうがチームワークがよかった。チームとしてやることが明確だなという気がしました。
ただ、ああいうチームづくりをするのがウチらしいかと言えば、ちがうと思うんですけれども。コミュニケーション、みんなで一体になって戦い抜いていく太さは、福大さんのほうがあった気がします。

受け身になってしまうというか、ふわふわした感じがなきしもあらず。来年はもっと精神的に強いチームをつくりたい。どしっとしたおとなの風格が漂うチームにしたいですね。

(失点時、ボールウオッチャーになってしまったことについて)競りに行ったときのセカンドボールと見てしまって落ちたときのセカンドボールはちがう。競りに行ったときは守備側が予測可能なのでしょうけれども。
九年やってきて規律が緩んだのかもしれない。審判にファウルを要求してみたり。ちょっとぼくの好きな状態ではなかった。

ああいう状態になったときに戻せないんですよことしのチームは。
わたしもコーチも含めて、われわれにやらされるサッカーはやめようと彼らに言っている。そういうふうに接しています。自分たちで修正できないといけないということ。きょうは一回も前に出なかった。ことしはここから解決する力が足りなかった。

──自主性と独創性を与えて?
そうですね、そこは絶対に外したくないですね。ぼくも昔のやれやれ、という指導スタンスは手放したので。

【牟田雄祐(ディフェンダー、福岡大学)のコメント】

持たれても最後にやられなければ勝てる。泥臭いですけど、自分たちの勝ち方は。それもサッカーだと思う。
自分たちも欲を出せばバルサみたいなサッカーをしたいですけれども、今は相手との力関係を考えて、自分たちの力を出すことが大事だと思います。

──今大会は落ち着きが勝因になっているようだが?
自分たちが一年やってきた厳しい練習を考えると、……それと、ここに来て慌てても仕方がないですし。自分たちがやってきたことに自信を持ってやればいい、と言っているので。

◆準決勝

味の素フィールド西が丘でおこなわれた準決勝二試合の結果は以下のとおり(2012年12月24日)。
○福岡大学 3-1 阪南大学
鹿屋体育大学 0-5 早稲田大学○

優勝候補の一角、「夏の王者」関西地区第1代表の阪南大学に先制された福岡大学はセカンドハーフに清武を投入するとまたたく間に3ゴールを挙げ、大逆転。終わってみれば、精神的に波のあった阪南大学をいなしたような恰好で、夏のリベンジを果たした。
福岡大学の乾監督は、明治大学と阪南大学に借りを返し、最後は専修大学と戦いたいと言っていたが、決勝の相手は早稲田大学となった。
ファーストハーフはシュート5本の1点に留まっていた早稲田大学だが、後半に中盤から前の流動性と激しいアクションを取り戻してシュート15本で4得点し、鹿屋体育大学に大勝した。来季からロアッソ熊本でプレーする山崎侑輝らFC東京U-18出身選手が所属する鹿屋体育大学は90分間を通してシュート2本にとどまり、ベスト4で涙を呑んだ。

【トーキョーワッショイ!UC】インカレ準々決勝&準決勝_Part1_山崎侑輝_鹿屋体育大学(2012/12/25)

【富山貴光(フォワード、早稲田大学のコメント】

早稲田が体現する、表現するのは速さ。まず前にうかがうという姿勢を忘れてはいけないですし、自分もアクションをしつづけることを意識している。きょうはそれがうまくいきました。

チームに貢献できるのは得点ですけど、そのほかにもやることはたくさんあって。前から自分がハードワークして追い、うしろの選手が楽にできるように自分が守備をしないといけない。失点しないようにするのは前の選手も同じです。
前線で起点をつくることもそうですし、アクションを起こして相手が嫌がることをしつづけるというのも自分の仕事だと思います。そういうことをしっかり表現できるようにこれからもやりたい。

決勝もやることはかわらない。ここからチーム全員で競争意識を持ち、切磋琢磨し、ひとつでも課題を克服して自分のストロングポイントを伸ばしながら、もっともっと強くなって、決勝でも早稲田らしいサッカーをして。泥臭くてもいいので、なにがなんでも、いままで支えてくれた人たちに結果で恩返しをしたい。

(福岡大学の牟田は)厳しく来るかもしれないですけど、そのなかでやれなければ、これから先もやっていけない。自分の役割を果たして、激しく来ても絶対に倒れてはいけない。からだを張って、自分のところ、味方のところにボールがこぼれるようにするのもそうですし、最後まで信じていれば必ず自分のところにボールが転がってきて得点もできると思う。まずは気持ちの面で負けないようにして。いままでやってきたことを出せば、絶対に勝てると思います。
自分だけじゃない。味方が10人いるし、試合に出ていない選手も自分にやれることを精一杯やってきているから、こういう結果になっていると思う。出たくとも出られない選手の思いを背負ってやれるのはかぎられた選手しかいない。自分が先頭に立ってその思いを体現しないといけない。
(試合に出場できない畑尾大翔について)いちばん悔しいのは大翔(ひろと)自身だと思います。そういう姿をピッチでは見せないで、練習のときも死ぬ気であいつはやっていて。練習中から胸にこみ上げるものがあります。大翔だけでなく、ほかにも苦しい思いをしている選手はいっぱいいると思うし、(比べたら)自分の苦しさはちっぽけなことだと思う。そういうことを噛み締めて、優勝という結果でみんなでいい景色を見て恩返ししたいという気持ちが強い。
早稲田大学のサッカーは、切り換えを速くして前からプレッシャーをかけるハードワークと、判断の早い連動した攻撃が持ち味です。当たられても倒れず、倒れてもすぐに立つ。そういう、戦う姿勢や走っている姿で感動してもらいたいですし、子どもに夢を与え、大学サッカーの魅力を伝えたいと思います。

◆決勝戦 展望

大学サッカーは監督も選手もコメンタリー能力の高く、またメディアに対して優しい取材対象が多いので、ついつい取材時間が長くなってしまう。準決勝後の富山選手の場合、囲んだ時間はおよそ30分間に及んだ。取材に応じてくれた人々に、すべてを記すことができない非礼を詫びるとともに、あらためて礼を述べたいと思う。
みなさんありがとうございました。

さて、インカレ決勝がいよいよあすに迫った。
早稲田大学は富山が語る通り、ハードワークとひたむきさが持ち味だ。そして自分たちからアクションを起こす。
福岡大学も真剣さ、運動量という点では似ているが、どちらかというと上がりを自重してバランスを保つ「がまん」の姿勢が目立つ。
この似て非なる両チームのスタイルのぶつかり合いが、そのまま見どころとなるだろう。

とにかく福岡大学は規律が整っている。誰ひとりとして勝手な選手はおらず、フィールドプレーヤー全員がポジションを調節してブロックに隙間を空けないし、後方によけいなスペースをつくらない。
前述のとおり、攻め上がりも自重する。唯一、清武がボールを持ったときだけは、失う心配がないのでほぼ攻撃参加は自由になるが、基本的にはバランスを崩さない。

そして隙をつくらないので、相手に先に隙ができる。福岡大学イレヴンは前線から勤勉にディフェンスを繰り返し、一瞬の隙を衝いてゴールに迫ってしまう。準々決勝の4点目が典型だ。
また隙がなくとも、崩さずとも、セットプレーのチャンスがあれば身長185センチ以上の大型選手に合わせて強引にゴールを奪ってしまう。

そう考えると福岡大学のほうが有利だが、しかし早稲田大学は最強の壁となるだろう。
明治大学も阪南大学も技術的に優れた選手が多かったが、反面、精神面に若干の脆さを見せていた。ところが早稲田大学の優勝にかける執念や、メンタルの強さは福岡大学にも勝るとも劣らない。
早稲田はナンバーワンでなければならない、ファイナリストになっただけでは意味がないと、富山をはじめ早稲田イレヴンのモチベーションは非常に高い。そして試合に出られない選手も積極的に準備や片づけにいそしむなど、結束の強さも見せている。

決勝は技術云々ではなく、メンタルスポーツとしてのサッカーを観ることになるだろう。その、一戦にかける気持ちの強さは、サッカーの根源だ。
Jリーグとはまたちがった光景が、国立のピッチに待ち受けるにちがいない。

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