◆ポポ東京、冒険の終わり◆チャン ヒョンス、未来への飛翔【速報/ストーリー/試合経過ほか】第93回天皇杯全日本サッカー選手権大会 準決勝 FC東京対サンフレッチェ広島(12/29)[5,960文字](2013/12/29)
◆ストーリー/ポポ東京、冒険の終わり
PKを外して涙にくれる三田啓貴を励ますことが、ランコ ポポヴィッチ監督最後の仕事となった。選手を育ててチーム力を向上させるポポヴィッチ監督にふさわしい光景であったと言えるかもしれない。
ポポヴィッチ監督は試合後の共同記者会見で「わたしが築いてきたものは、きょうお見せしたものではなく、攻撃的で魅力的なサッカー」だと言った。しかし決勝に進むためには、このサンフレッチェ広島との一戦は絶対に負けられない試合だった。少しでも隙を見せたら失点を喫し、負けてしまう。だから少しの隙もつくらず、広島の速攻に耐えつづける戦いを選択した。
たとえ得点できなくても失点さえしなければ、延長戦で勝つチャンスがある。120分間が0-0ならPK方式で決勝に進める可能性がある。その意味では、最後まで守りきった120分間に関しては、ゲームプランどおりだった。
先発メンバーの選択は超守備的と言ってもよいものだった。
長身のチャン ヒョンスを3バックの中央に置き、左右のストッパーには運動性能の高い森重真人と加賀健一。森重は延長前半に野津田岳人の突進を食い止めたし、加賀はカウンターでウラへと走るファン ソッコや石原直樹の速攻を何度となく食い止めた。奪ってからが早い速攻や参加人数の多い波状攻撃にも屈しなかったディフェンスは成功と言っていいだろう。
PK戦は三巡目までは東京がリードしていた。すべては決勝に進み元日を国立競技場で迎えるため、そしてタイトルを獲るための策だったが、それが報われることはなかった。懸命に涙を拭う三田の姿が、東京にかかわるすべての人々の悔しさを代弁していた。慎重にカップファイナルの切符を掴もうとしていたのに、あと少しというところで掌から、するりと落ちてしまった。
共同記者会見が終わったあと、囲み取材の場でポポヴィッチ監督に訊ねた。
「しんみりはしたくないと会見でおっしゃっていましたけれども、FC東京で、シーズンの初めからJ1クラブの指揮を執る経験をして、この二年間、どんな冒険の日々でしたか」。
ポポヴィッチ監督は次のように答えた。
「すばらしい二年間でした。
わたしが就任当初から目標として掲げてきたものは、ここまで順調にやってこれたと思っています。
サッカーの質、積み上げてきたもの、スタイルはしっかりとつくることができました。ただ、勝点にそれがつながらなかったというところに関しては、もちろん満足はできません。
わたしはここの監督に就任したとき、長期的な成功、継続的な結果を得るチームをつくると話しました。それについてはいいチームづくりができたと思っています。自分たちのアイデアを持って戦うことができたということ、自分たちのスタイルを持って戦うことができたということは、誇りに思っています。
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