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【初勝利記念無料記事/マッチレポート】レポート◆敵地で劇的な1勝。権田PKストップを境に猛攻の青赤軍団、降格圏脱出/リザルト◆J1第5節清水対東京(2014/03/29)

レポート◆敵地で劇的な1勝。青赤軍団、降格圏脱出

前日に川崎フロンターレ対名古屋グランパスの一試合を消化したあとの3月29日、全国各地でJリーグディビジョン1第5節が開催された。清水エスパルスの本拠地、IAIスタジアム日本平に乗り込んだFC東京は、ここまでのリーグ戦メンバーとカップ戦メンバーをミックスしたかのような構成で先発イレヴンを形成。センターバックに吉本一謙が入り、中盤は野澤英之、米本拓司、三田啓貴の三人。フォワードのかたちが3トップに戻り、エドゥーをセンターフォワードに、両翼を突破型のドリブラー河野広貴と武藤嘉紀が占めた。
対する清水エスパルスはヤマザキナビスコカップとJ1第4節の対浦和レッズ無観客試合で連続ゴールを決めここまで好調の長沢駿、そしてノヴァコヴィッチ、大前元紀、高木俊幸の四枚を前線に揃え、東京を迎え撃つ。

前半5分、いきなり東京がゴールをプレゼントしてしまう。
ペナルティボックス右に進入した大前元紀を森重真人が止めきれず、ふたりとももつれて転んでしまい、ボールが前にこぼれたところを長沢駿に蹴り込まれた。この試合もまた「プレゼントゴール」での失点スタート。大前と森重の交錯したそのウラのスペースのカバーと長沢のマークはどうなっていたのか。

不安な立ち上がり。しかし清水はこの得点の余勢をかっての優位な時間帯に追加点を挙げることができず、徐々に主導権を東京に譲りわたしてしまう。23分頃からは清水がリトリートし、東京が押し込む光景が目につくようになった。

エドゥーのタメからのスルーパスに河野広貴と武藤嘉紀が飛び出すなど精度の高いカウンターを繰り返したのち、ファーストハーフ終了間際に東京が同点に追いつく。清水ゴールキーパー櫛引政敏が弾いたボールを河野広貴が蹴り込んで1-1。清水の先制点同様、気持ちで挙げたゴールによって、東京はタイスコアの状態でセカンドハーフを迎えることができた。

50分にPKのピンチを迎えた東京はこの場面で権田修一が大殊勲のPKストップ! がぜん意気上がる東京は57分、ピッチ右側でフリーキックを得る。これを蹴った太田宏介のボールは左足から美しい弧を描いてゴール前へ。ここにどんぴしゃのタイミングで森重が飛び込みヘディング、ゴールネットを揺らし、ついに東京が1-2と逆転に成功した。

追い詰められた清水は64分、ボランチの竹内涼に替えて高木善朗を送り込み、布陣を4-2-2-2から4-1-3-2に変更。高木兄弟の両サイドハーフと大前元紀のトップ下で二列目を形成し、前線を五枚にして勝負をかけてきた。
しかしその後もメンバー交替を繰り返す清水に焦りの色が浮かぶ反面、東京は落ち着いて試合を進め、82分には右サイドからのパスに対し、ファーサイドにフリーで走り込んできた米本拓司がシュート! これを確実に流し込んで1-3とし、試合を決めた。前節、自らのミスで失点を招いた米本が、守備もさることながら攻撃でも効果的な働きをしての汚名返上ゴールに、東京ゴール裏も「オレたちのヨネモト」と、佐藤由紀彦のメロディを応用したチャントで応える。

試合はこのままのスコアで終了。東京は今シーズンのリーグ戦初勝利を挙げ、敵地で降格圏脱出を果たした。
移籍以来苦節二年、ようやくブレイクスルーを果たしかけている河野広貴の同点ゴール。「あわてずに落ち着いてやれば勝てる」と戦前に語っていた権田修一のPKストップ。セットプレーで獲りたいと言っていた太田宏介のフリーキックから、序盤の失点に絡んだ森重真人の名誉回復ゴール。そして前節のミスに絡み「4失点負けは全部自分のせいです」と言い残した米本拓司のダメ押し点。苦しいながらも役者が仕事をして強引に勝ちへと持っていった。

決して手放しで喜べる内容ではなかった。14位と15位の対戦にふさわしい試合と言えばそれまで。どっちもどっち、という感はある。
それでも勝ったことはいいことだ。勝っているからこそ反省ができる。

「相手が引いてくれた。だから、自分たちがボールを持ち、リズムを持ってこれるはずなのに、そこでなかなか自分たちのリズムにできなかったことはきょうのいちばんの反省です」
勝利の立役者、権ちゃん劇場を演出した当の権田修一が言うのだからまちがいない。特に前半の前半はかなり危うい状況だった。

それでも気持ちで勝ったことは収穫だ。一因に、下部組織出身者の存在があった。
吉本が言う。
「タマ(三田啓貴)が“(いま)苦しいときに、自分たちはユースで育ってきているから、絶対やってやろう”って言っていたから、タマ成長したなと思って(笑)」
権田修一、吉本一謙、野澤英之、三田啓貴、武藤嘉紀。五人の孝行息子が窮地を救った。

取材者個人として言えば、チームとしてはまだまだ完成度は低い。正直、勝っても素直にうれしい気持ちにはなれない。しかし勝ったこと自体は喜べる。おそらく選手もほぼ同じ気持ちなのではないか。

「すごくポジティヴな考えになれる」(平山相太)
「かなり喜んでいました(笑)、ロッカールーム。こっからですね、だから。勝ってよかったです」(河野広貴)

これでようやくスタートラインに立つことができた。これからは勝って勝点を重ねながら内容を反省し、質を追求してもらいたい。

リザルト◆Jリーグ ディビジョン1  第5節 清水対東京

2014 Jリーグ ディビジョン1 第5節第2日
2014年3月29日 15:04キックオフ IAIスタジアム日本平
清水エスパルス 対 FC東京
【マッチコミッショナー】森津陽太郎
【主審】今村義朗(1級審判)【副審】大川直也(1級審判)、村上孝治(1級審判)
【天候】晴、弱風、気温20.5℃ 湿度47% 【ピッチ】全面良芝、乾燥
【入場者数】14,420人

<勝点4→4>清水エスパルス 1-3(1st:1-1)FC東京<勝点2→5>
【得点者】長沢駿(5分=清水エスパルス)、河野広貴(44分=FC東京)、森重真人(57分=FC東京)、米本拓司(82分=FC東京)
【警告】エドゥー(48分=FC東京、ラフプレー)、森重真人(50分=FC東京、ラフプレー)、竹内涼(56分=清水エスパルス、ラフプレー)、イ キジェ(71分=清水エスパルス、ラフプレー)

○ハーフタイムコメント

マッシモ フィッカデンティ監督(FC東京)
・中央へのクロスに気をつけよう。
・サイドバックがボールを持った時MFは広がってボールを受ける事。
・FWは1人中盤でボールを受けてもう1人は裏を狙おう。

アフシン ゴトビ監督(清水エスパルス)
・エキサイティングな前半だった。その点は満足だ。だが、追加点取れたよな。
・行ったり来たりの展開で広がり過ぎている。もって押し上げよう!
・攻げきはあせり過ぎないこと。頭の中はクールに!

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