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【無料記事】コラム◆対横浜F・マリノス戦後選手コメントについての補足(2014/12/07)

コラム◆対横浜F・マリノス戦後選手コメントについての補足
対横浜F・マリノス戦後のミックスゾーンで高橋秀人がいいことを言っていたので伝えておきたい。
アンカーとしての自身と、アンカーのあるフォーメーションを導入したチームの収穫について問われた髙橋は、要約すれば、ひとつのポジションが持つ役割や機能の仕方は、たとえ同じポジション名でも、どの選手が担当するかによって異なるだけでなく、同じフォーメーションの場合でも試合ごとの対戦相手とのマッチングやラインの高さ・プレス網・ボールの獲りどころの設定によっても異なるし、フォーメーションが異なればもちろんちがったものになる、そうした差異を考えることが必然的に求められるシーズンで、自分はそのことについて学べた、自分を含む選手もメディアのみなさんもそうしたところに考えが及ぶようであってほしい――という意味のことを言っていた。

より厳密には一問一答式に書き起こしたコメント部分をお読みいただきたいのだが、サッカーの見方を考えるヒントの提示という意味では、濃い発言になっているのではないかと思う。

標準的な4-4-2でサッカー観が固まっている場合には、2トップ、サイドハーフ、ボランチ、サイドバック、センターバック、ゴールキーパーに対して「こんなもんでしょ」という紋切型の捉え方があるはずだ。
しかしもともとサッカーが瞬間、瞬間で局面ががらりと変わっていくスポーツだからということもあるが、そうした固定的な、厳しく言えば怠惰な見方では、試合の全容は捉えきれない。

固定観念の話で言えば、おそらく大衆やマスメディアの求めるアンカー像と、高橋秀人、梶山陽平、森重真人、野澤英之のプレーには隔たりがある。理想的なアンカー像を思い浮かべて採点するのは勝手だが、なんでもできるアンカーがワンパターンのプレーでどの試合のどの時間帯もこなすなどという静止した状態はありえないのだから、理想像からの引き算だけで査定しても意味は薄い。

分析や評価をするときには、組織が個をどう取り込んで活かしているか、あるいは個が組織にどう貢献しようとしているかを見ないといけない。
渡邉千真とエドゥーが2トップを組む場合と、武藤嘉紀と中島翔哉が2トップを組む場合とでは、ほかの選手が同じ顔ぶれだったにしろ、2トップ以外の動き方は変わってくるはずである。
そもそも河野広貴がウイングに向いていないからトップ下のある4-3-1-2を採り入れたり、武藤嘉紀のコンディションがあまりよくないことを考慮して4-3-3を回避、4-4-2(4-4-1-1)に変更したりするくらい、選手個々と戦い方(機能、システム、フォーメーション)には密接な関係がある。

最終節ではアンカー1とインサイドハーフ2ではなく、中央のミッドフィールダーがボランチ2枚になった。
それでいてサイドハーフがサイドアタッカー的なワイドへの張り出しだけでなく中への絞りも志向しているから、単純に真ん中が薄いとも言えない。また4-4-2状態のときには、梶山陽平の言うようにトップ下のスペースが空いてフォワードとボランチの距離が空くものの、4-4-1-1状態で河野広貴がエドゥーとタテ関係になりエドゥーに当たったボールを拾うポジションにいるときには、トップ下に近いところまで下がってきている。
標準的な4-4-2を思い浮かべて「ああだよね」ということがはばかられる試合だった。

梶山はボランチ同士のパス交換を課題に挙げた。急ごしらえのフォーメーションにしてはよくやったが、コンビネーションを熟させるだけの時間はない。足りないところが浮かび上がるのも道理である。
ボランチ同士のパス交換からボールが廻り出す典型例はガンバ大阪で、遠藤保仁と今野泰幸のプレーが、トップから下りたりサイドに顔を出す宇佐美貴史や両サイドハーフが動いてピクチャーを描く時間をつくっている。4-4-2が遠藤と宇佐美のいるガンバ流にカスタマイズされたシステムだ。

その意味では、こと4-3-3(4-1-2-3)に於いては、ある程度、高橋秀人を組織が活かし、組織に高橋秀人が貢献する関係が出来上がっていたように思う。
本人が言うようにミドルシュートを撃つときのコツの部分など攻撃面に足りないところはあるだろうが、いっぽうで、センターバックやサイドバックと協力して最終局面でゴールを守るという面ではかなりいいグループになっていた。
端的にわかりやすい例を挙げれば、4バックのうち3を残そうと思うならサイドバックのひとりは攻め上がりを自重してひとりが残り、つるべの動きをとらなければならないが「アンカーの」高橋秀人が下がることによって両サイドバックが同時に上がることが可能になる。さらに言えばインサイドハーフが下がれば、高橋秀人が両サイドバックと同時に上がることが可能になる。

個人、グループ、11人が複合的に絡み合うからサッカーはおもしろい(個人戦術、グループ戦術、チーム戦術と「戦術」の前に枕がつく理由だ)。
マッシモ道場で脳を鍛えてきた東京の選手たちは、オフのあいだ、さらにサッカー観を深めるだろうから、観る側も負けじとサッカー観を深めないといけない。感情レベルでは「シュート撃て!」式の発散をしながらも、冷静に局面を判断する思考回路も別系統で確保できるようになると、よりサッカーをおもしろく感じられることだろう。

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