青赤20倍!トーキョーたっぷり蹴球マガジン

【今週の小平/1月11日お別れの会レポート第3弾】FC東京「感謝のごあいさつ」塩田仁史に訊く「悔いだけ残してサッカー人生を終わらせたくないという気持ちが強かった」(2015/1/12)

今週の小平/1月11日お別れの会レポート第3弾◆FC東京「感謝のごあいさつ」塩田仁史に訊く

 

DSC_2674_R

5時間30分を超えるファンとのお別れを終えた塩田仁史がクラブハウス内の記者室にやってくると、すでにとっぷりと日が暮れていた。集まってくれた800名のファン、サポーターには、こうして感謝の気持ちをあらわすことができた。

そしてこの場には来られなかったファン、サポーターに、間接的にではあるが気持ちを伝えるべく、塩田は取材に応じた。
お疲れのところ着席してもらい、報道陣も座り、ゆっくりと話をすると、これも時の経つのが早く、必要と思われることを訊ねただけで、時計の分針が23分も進んでしまった。
気配りのひとらしく、最後は笑いも兼ねて「ありがとうございました。お世話になりました、11年間。みなさんも11歳も年を食いましたね」と、こちらにも感謝の言葉を贈ってくれた。

いくつかかいつまんでお伝えすると、まず、この「感謝のごあいさつ」は、塩田が起案したものではなく、クラブから提案されたものであったのだという。
もちろん、塩田には、こうした機会を設けてファン、サポーター一人ひとりにしっかりと挨拶したいという気持ちはあったが、他クラブへと移籍する立場で自分からは言い出しにくい。そこへクラブの配慮があり、実現したお別れ会だったのだ。

開始に先立ち、FC東京広報からのアナウンスもふるったもので、塩田たち四人の選手と最後のふれあいをするその内容に対して、いっさいの注文をつけないという。
多くのファン、サポーターがつめかけた関係で、たとえばカードを何十枚と取り出して際限なくサインを求めるような場合は、クラブ側から制限をかける「かもしれない」が、横槍はそこまで。アイドルの握手会にあるような運営側の「剥がし」はない。心ゆくまで別れを惜しんでほしいという趣旨の催しで、選手たちはじっくりと言葉を交わした。
運営がこの姿勢だから、選手もいわゆる「塩対応」はしない。休憩を挟まずもちろん食事も盗らず、列が途絶えるまで対応した。

そんなわけで選手たちは疲労困憊のはずだが、不思議と表情そのものは充実していた。よい切り換えになったのだろうか。
塩田も疲れを見せず、取材に応じてくれた。

挨拶にあった「ぼくらは別々の路を歩みますが、残ったサッカー人生、全力で、最後まで、ぼろぼろになるまで、がんばっていきたいと思います」などの名言は、涙があふれて考えてきたことがすべて吹っ飛んでしまい、心のなかにあることが素直に出た結果だったという。さらに遡ると、土肥洋一に言われた言葉が、脳裏に刻み込まれていたようだ。土肥は塩田に「しっかりした覚悟を持って、最後はぼろぼろになるまでがんばれ」という言葉を贈っていた。

移籍の決断にあたっては「いろいろな理由が交錯した」(塩田)。
ただ、やはり、出場機会が少なかった、あったときもそれを勝ち試合にできなかったという悔しさが募ったことが、移籍の理由としては大きいようだ。
塩田は言う。
「ベンチに座っていて、悔しい気持ちであったり、やるせない強い気持ちがわいてくるということは、(自分は)やっぱりプロサッカー選手なんだなとあらためて実感しました。それがなかったらサッカー選手をやめたほうがいいと思うし」
「悔いだけ残してサッカー人生を終わらせたくないという気持ちが強かったです。
これでだめなら悔いはないと自分でも思えるし、この状況のなかでFC東京で引退するほうが悔いが残ると思ったから、決断しました」

大宮アルディージャを選んだ理由は、もちろんオファーがあったからだが、これからのクラブだから、ということもある。
大宮をJ1に昇格させる。そのために経験と前向きな情熱を注ぎ込む。それはちょうど、昨年、モンテディオ山形で山岸範宏がなし遂げたことだ。

ベテランと呼ばれる年齢に差し掛かり、いっそうチームをけん引し、はげます役割がふさわしくなってきた。
まして、ひとを包み込むような陽性の雰囲気、おおらかさがにじみ出ている。このオーラで新しいチームを充たし、新しいシーズンを実りあるものにしてほしいと思う。

 

◯塩田仁史の談話

最後だから、一人ひとりになるべくゆっくり気持ちを伝えたいと思っていて。
まさか5時間半になるとは思わなかった(笑)。いつの間にか西日になっていた。
でも、一人ひとりと話ができてよかったし、みんなが思いを伝えてくれるのはすごくありがたかったです。

一年(単年での勝負)と思いながら毎年をすごしてきて、ファン、サポーターのひとたちの応援があって、ここまで11年もひとつのクラブでやってこれたのだと思います。
サポーター席に走っていくときのみんなの声が、ほんとうに好きで。そういうものもモチベーションになって11年やってこれたのだと思うし、とにかくいま11年が経って、感謝の言葉しかないです。

順風満帆なサッカー人生ではなかったと思いますけれど。

(残り 4908文字/全文: 6924文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ