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【無料記事】コラム◆観戦時、サッカーファンが頭の片隅に置いておきたいスポーツメンタルトレーニングの基礎(2015/1/15)

◆観戦時、サッカーファンが頭の片隅に置いておきたいスポーツメンタルトレーニングの基礎

大昔の日本のスポーツは根性論が幅を利かせていた。現代の常識からすれば非合理的な面もあり、それらへの反省から、より質の高いパフォーマンスを求め競技力を向上させようと改善、研鑽を重ねるうちに、スポーツのトレーニングは合理的なものに変容してきている。

フィジカルの鍛え方に於いては、水を呑まずにうさぎ跳びをする光景は消えている。しかし理論に基づくメンタルトレーニングについては、サッカークラブや代表チームにメンタルコーチまたはメンタルトレーナーが存在するドイツなどスポーツ先進国のようには浸透していないようだ。
それでもスポーツの現場ではスポーツメンタルトレーニングの導入が進み、当事者はある程度の知識に基づいて相応のトレーニングをおこなっているか、または取り入れようと検討している。ハビエル・アギーレ監督がサッカー日本代表にメンタルコーチの導入を希望したのもその一端だろう。これから少しずつ取り組みが広がっていくのではないだろうか。

ここではそうした「応用スポーツ心理学」と「スポーツメンタルトレーニング」の基礎、主にサッカーファン、観戦者にとって知っておくとよいことについて述べてみたい。子どもにどうアドバイスしたらよいかの判断がつき、プロの試合を観る際の前提ともなると思うからだ。各Jクラブが新体制で始動しようとするこの時期、自らが応援するクラブとトップチームを分析する眼を持つ一助になるだろう。
執筆にあたっては、作新学院大学准教授でプロスポーツメンタルコンサルタントの笠原彰氏の講義を受講した際の知識と、同氏の著書『誰でもできる最新スポーツメンタルトレーニング』(学研パブリッシング、URL: http://hon.gakken.jp/book/2380037500)を参考にさせていただいた。

 

MentalBOOK-cover

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たとえばJ1を見渡したとき、素質の点でプロレベルに及ばない選手が存在しないことに気づく。みなプロに必要な最低限の能力を有しているわけで、基本的には、戦力は均衡する。
しかし総当りリーグ戦のシステムでは、首位から最下位まで、なだらかに勝点の差がつく。力の差がない場合でも、わずかの差で上下関係が出来上がる。
つまり、そのわずかの差を生み出してほかのチームを上回るために、ありとあらゆる方法で勝つ可能性を上げていく必要がある。

同じ能力、同じ人数の集団同士でも、
・適材適所ができているチームとできていないチーム
・戦術が浸透しているチームとしていないチーム
・連携がいいチームと悪いチーム
・フィジカルコンディションが整っているチームといないチーム
・施設が豪奢なクラブのチームと貧弱なクラブのチーム
それぞれのあいだに、チーム力の差が生まれる。
スポーツメンタルトレーニングは、こうした差を生む、勝つためのツールとして捉えられている。

ではスポーツ心理学に基づいてメンタルを鍛え、整えることによって何が変わるのか?

まず認識しておかなければならないのは、スポーツメンタルトレーニングは魔法ではないということ。奇蹟や即効性はない。
本来備えていない地力を大幅に伸ばすことはなく、あくまでも能力を存分に引き出す手助けをするためのものだ。そして、フィジカル、スキル、戦術などと同様にこつこつと数カ月、数年単位で根気強く積み重ねなければならない。

そのうえで、メンタルを鍛えることで、そこまで培ってきた最高の能力を試合で発揮することができる、と考えられている。数値としては最大20%の「実力発揮性」の向上が期待できる。これは競技レベルが高くなればなるほど作用しやすい。

地力の部分をすくすくと伸ばしていくべき育成段階の子どもにも応用はきく。スポーツメンタルトレーニングによって練習の質を向上させることができ、結果として地力を高めることにつながる。

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具体的にどうすればいいのか。
人間の精神状態が影響をおよぼす領域を、スポーツ心理学では、思考、感情、身体反応(※動悸、発汗、ふるえといった現象)、行動――に分けている。このうち、感情の動きや身体反応を抑えたいと思うのがひとの性だが、残念ながら感情も身体反応も一足飛びにコントロールしにくいものだ。
そこで、スポーツメンタルトレーニングではまず意図的に変えていける部分、思考と行動を変え、その結果として感情や身体反応を抑制しようと考える。端的には、下を向いてしょんぼりしているときに、上を向くことで気持ちを好転させようとするケースがわかりやすい。「下を向くな」とは経験則的に導き出されたコーチングなのかもしれないが、これは理論上も正しい声かけだ。

また、ひとくちにメンタルと言っても一様ではなく個人差がある。スポーツに関係する精神力「心理的競技能力」の診断は、競技意欲、安定と集中、自信、作戦能力、チームに於ける協調性といった因子ごとの能力を判定するが、この検査をすると、一人ひとり、どの項目が強くてどの項目が弱いかが明確になる。そのように、いま自分のメンタルがどうなっているのかを具体的に把握して鍛えていくことが重要だ。

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「ゾーン」または「フロー」という言葉はご存知だろう。集中力がほどよく高まり、競技に際して実力を発揮できる理想的な心理状態のことだ。ここでは「フロー」に統一して説明する。

スポーツメンタルトレーニングは、そのメンタルを含めて練習全般で鍛え上げた能力をなるべく高い水準で、公式の試合で発揮することを目標にしている。
したがって試合のときにフロー状態になるよう、試合に向けて何をするかという行動プランを作成することが、メンタルを整える起点になる。言い換えると、プランを作成することで、それ以外の問題が解決しやすくなる。人間は何もしないと不安になるものなので、あらかじめ好影響をもたらすだろう行動を決めておくとよい。
ふだんとちがったことをすると悪影響が出る場合は、もし夜にゲームをする習慣があるなら、最近遊んでいるゲームで遊ぶなど、あえて同じことをすればいい。

試合の前の日は緊張して眠れないこともあるだろうが、それは気にしなくてよいものとされている。眠れなかったからといって、地力が損なわれることはないからだ。
寝つけないという感覚が強くなるのは、寝床についてから眠りに落ちるまでに時間がかかるから。これには、眠くなってからふとんやベッドに入るようにしたり、あるいは確実に眠くなるように前々日から徹夜で起きていたり、対策の立てようはある。
こうして一段階ごとに問題点をつぶしていくと、不安が解消されてプレーに集中しやすくなる。

プランと言っても、遡るのは前日まで。ただし、
・前日の晩
・当日の朝
・会場入りするまで
・アップ
・会場の練習スペース
・競技前の待機時
・Decision Line(ディシジョンライン)
・試合開始前
・ハーフタイム
このようにこまかく考える。プロの場合は、試合会場がテロリストに襲撃されたらどうするかなど、実現する可能性が低い「危急のもしも」も想定して万全の準備をする。サッカーの場合は、誤審や負傷などのアクシデントはありうるものとして織り込み済みでなければならないだろう。この場合はこうする、と対応策をまとめた「コーピングリスト」をつくっておくと、そのリストをつくる行動自体が、精神の鎮静につながる。

Decision Lineとは耳慣れない言葉だが、ここを越えたら競技に入るとプレーヤーが決めた仮想の線のことだ。仮想だから、どことは決まっていない。その選手が「よし」と、気持ちを切り換えられるのならどこに設定してもいい。

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プラン作成のあとにも、フロー状態に入るために、いろいろな理論や技術がある。
・セルフトーク
・楽観的思考と悲観的思考
・CSバランス(目標と技能のバランス)
・行動目標と結果目標
・集中力を高める方法
・試合中のデンジャラスタイム(失点、または荒れる時間帯)対策
・ルーティン
・70%の力でなるべくよいプレーをする方法
・内発性モチベーションと外発性モチベーション
これらは試合だけでなく日頃から取り入れていかないと意味がないので、結局は試合と試合のあいだの時期の練習や日常生活でも取り組むことになる。
残念ながらそのすべてを書くには紙数が足りない。ここから先に興味のある方は、ご自身で調べていただければと思う。

最後にあらためて述べておくと、メンタルとは抽象的で捉えどころのないものではなく、具体的な問題の解消法や鍛え方がある。
たとえば、サッカーの試合で問題になるのは、俗に言う「入り」、立ち上がりの悪さだが、これもそのハーフに入るときに集中するだんどりを踏んでいるか否かで結果が変わってくる。
ハーフタイムのミーティングがこまかすぎる戦術の指示で長引き、急いでピッチに入り、そわそわしたまま中途半端な円陣でキックオフを迎えると、非常に出来の悪いパフォーマンスを披露してしまう可能性が高まってしまう。

よけいな感情の昂ぶりを抑えるために、一定の動作を入れる「ルーティン」というものがある。そのように平常心を保つことも大事だが、いっぽうで、鹿島アントラーズのように平常心で臨みながら意図的にあるタイミングにかぎって試合を荒れさせるコントロールをするチームもあり、いちがいにこれが正解とは言いきれない。

モチベーションひとつとっても、ブラジルのスラムで育ち貧困から脱出するためにサッカーでの出世をもくろむハングリー精神(外発的モチベーション)の塊のような選手と、日本の裕福な家庭で育ち自己実現(内発的モチベーション)のためにサッカーの技術を磨く選手とでは、目標設定の仕方や割合が異なってくる。

繰り返しになるが、なにかひとつの魔法やチートを使えばたちどころに強くなるという即効性は、スポーツメンタルトレーニングには存在しない。
一人ひとりが自分を知りながら、適切な対策を考え、日々実行して習慣化していくこと。これはスポーツだけでなく仕事や日常生活にも応用できることだ。あのサッカー選手やチームはメンタルをどう整え、鍛えているのだろうかと推し量りながら、自らに活かすと、より観戦が楽しくなるのではないかと思う。

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