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【多摩川クラシコ第3報】分析◆主導権を握ったのは、後半に浮遊した中村憲剛の川崎。前半に守備が一定の成果を上げた東京は、結局は後手にまわった(2015/07/12)

分析◆主導権を握ったのは、後半に浮遊した中村憲剛の川崎。前半に守備が一定の成果を上げた東京は、結局は後手にまわった

7月7日におこなわれた川崎フロンターレとボルシア・ドルトムントの試合をご覧になった方も多いだろう。ドルトムントが守備組織を築くと、川崎はビルドアップに苦慮し、パスをゴールキーパーに返すしかなくなった。タテにパスを通そうとすると引っかかり、さりとて中盤に運ぼうとすると数人に囲まれてボールを奪われるからだ。
無理やりタテに入っていくこともできたが、バイタルエリア辺りまで運んだとしても次の受け手のところで奪われてしまう。川崎の選手たちは躊躇した。ドルトムントの選手の判断とプレッシングを上回る速さで守備網を切り裂いていけるレナトの突破を除いては攻略法はほとんどないに等しかった。

ドルトムントと同じサッカーをすれば勝てると思ったのはFC東京も同じだったようだ。ただし、同じように実行するには力が足りなかった。
石川直宏は試合後「獲ったあとの、精度と、やりきるところが、ちょっとできなかった」と言った。前半13分、ボールを奪ったあとにゴールまで向かっていく前田遼一には、たしかにロイスのそれと重ね合わせられる迫力があった。ただしシュートは枠を逸れた。ドルトムントのすごいところは、技術も戦術もフィジカルもメンタルも高い水準にある欧州トップクラスの選手たちが、極度に戦術的なプロビンチャのように、生真面目に組織的なサッカーを遂行できるところにある。東京も生真面目に組織的なサッカーを遂行できるメンタリティは持っているが、残念ながら技術その他がドルトムントには及ばない。

それでもフラットな4-3-3に近い4-3-1-2で積極的にプレッシャーをかけていき、高い位置でボールを奪いその勢いのまま攻め込むサッカーで、ファーストハーフの45分間を0-0に抑えることはできていた。最初の5分間は川崎。そのあと、18分までは東京。19分からは再び川崎がペースを握り、30分過ぎからは交互に攻め合った。試合は拮抗していた。
Jリーグから見てドルトムントが規格外であっただけで、Jリーグのなかでは川崎は最高クラスのチーム。彼らのホームに乗り込み、0-0なら、悪くはない。
ただし、点を獲れるときに獲らないと、あとで高いつけを払うことになるという法則は、この試合にも活きていた。

後半、川崎の中村憲剛が、所定のトップ下からボランチの位置まで落ちるようになった。以前にもやっていたことではあるが、この日の新しい4バックシステムを採用してからは初めてだ。監督の指示によるものではなく、自らの判断によるものだという。

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