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【無料記事】最速Review◆酷暑の総力戦を制した青赤軍団、ACLラウンド16進出決定。気迫を感じさせる2得点は復調の兆しか(2016/05/04)

1引き分けを挟み4連敗、公式戦の黒星街道に終止符を打つ1-2の勝利で、FC東京がビン・ズオンを下し、ACLグループEの突破を決めた。猛暑にもかかわらず体力のつづくかぎり走り、最後まで立ち止まらずに戦った結果だった。

全北現代モータースに0-3で敗れたACL第5戦をはじめとして、最近、事前の対策がハマっていない印象のある東京だが、この対ビン・ズオン戦では準備が有効に作用していた。
東京は立ち上がり、高い位置からプレッシャーをかける積極策に出た。一見すると気温34℃、湿度49パーセント(※体感上、湿度をこの数値の倍近くに感じたという証言もあり、公式の計測が誤っている可能性もある)の環境では無謀であるようにも見えるが、城福浩監督が「われわれのポゼッションは、最終的には、相手陣で奪い返してショートカウンターで点を獲るところが究極の目標」と言っていたように、これが今シーズンにめざしていたそもそもの戦い方。ACLプレーオフで見せた、相手陣内に押し込み、ボールを奪い返しつづける永久機関的なサッカーで主導権を奪いに出た。
もちろん、酷暑の下では、これを90分間つづけることはできない。先制点を奪ったあとはうしろめでブロックを形成する守り方が多くなった。現実的な判断だろう。これも城福監督が「高い位置からずっとコンパクトを保つのはなかなか難しいので、メリハリをきかせ、うしろに合わせたコンパクトも時にはやらないと、おそらく消耗戦になる」と予期していたとおりの展開だった。

後半30分に東慶悟が脚を攣らせて阿部拓馬と交替したように、猛烈に体力を消耗する環境下、90分間ハードワークをつづけるのは困難だ。先発メンバーをJ1前節の対アビスパ福岡戦から大幅に替えたのも、スタミナと運動量を考えれば妥当な選択だった。
4月29日に54分間出場しただけのネイサン バーンズ、ゴールキーパーの秋元陽太、ディフェンスラインの森重真人、丸山祐市、小川諒也を残し、6人を入れ替え。結果的に長い時間ハードワークできる前田遼一と飛び出しに長けたバーンズの2トップとなり、これが攻守ともに、有効に働いた。両サイドハーフの水沼宏太と東慶悟ももちろん運動量豊富な選手であり、この日の肉体労働に向いた人選であったことは言うまでもない。
出ずっぱりだった徳永悠平と米本拓司を休ませ、橋本拳人と高橋秀人を出場させたことも同様。前半、ヘンリー・キセッカをしつこくマークしていた高橋は、終盤アディショナルタイムには相手のカウンターをスライディングで阻止。守備面で最後まで有効に作用した。ハ デソンも守備に重きを置いたようで、米本にバトンを渡したこともあり、中盤の強度は落ちなかった。

しかし日本とまるで異なる厳しい環境で、すべてが完璧というわけにはいかない。PKを獲られたシーンでは中盤からペナルティボックスまでの花道がぽっかりと空いてしまい、丸山も反則の危険を承知で止めに行かざるをえなかったし、レ・コン・ビンに3本の決定的なシュートを許すだけの隙はできてしまっていた。
もとより、どんな試合でも事故的な1失点は常に起こりうる。その意味では、2得点できたことは、今後の東京にとって大きな意味を持つ。2-1から逆転された対川崎フロンターレ戦はともかく、柏、甲府、福岡には、2点を獲れば勝てていた。この対ビン・ズオン戦で、ボールを握って押し込み、高い位置から思いきりよく奪い、仕掛けていく(1点めはハーフウエーラインを越えた左サイドでの高橋のカットが起点、2点めは前田が相手のミスパスをカットしてそのまま)というリズムと気迫を思い出したなかでの2得点は、次の試合以降、どのように戦うべきかと考える際の指針になるはずだ。
いいところが散見される試合だったが、秋元陽太にも好材料があった。何かと批判されがちなポジションだが、枠内に飛んでいた前半22分のレ・コン・ビンのシュートを防いだプレーは、自信になり、信頼を得られるものであったはずだ。チームのムードを押し上げるいち要素となるだろう。

ただ、この試合はあくまでも暑熱下の特殊な試合。そのシチュエーションに合わせた態勢を整えつつ根本を思い出し、気持ちが伝わるような全力プレーが出来、チームとしてコミュニケーションがとれたことを、そしてこまかい戦術というよりは戦局判断がまともに出来たことを、まずは喜ぶべきなのかもしれない。
本格的な修正はムリキも合流するだろうJ1次節対湘南ベルマーレ戦からになるはず。このビン・ズオンとの試合で燃え尽き、あるいは疲労を引きずることのないよう、せっかく思い出しためざすサッカーの基本と闘志の表現を忘れずに、平塚の試合に向けて準備を進めてもらいたい。

 

 

 

 

 

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