後藤勝責任編集「トーキョーワッショイ!プレミアム」

【無料記事】植田朝日氏緊急インタビュー◆「いちばん近いタイトル、ナビスコを獲ろう!」すべての東京ファンへの呼びかけ(2016/05/28)

5月24日、上海体育場前のバーを占拠し、適度に騒いだFC東京ファン。約50元のビールをガンガン頼み、店主も大喜びだったとか。

5月24日、上海体育場前のバーを占拠し、適度に騒いだFC東京ファン。約50元のビールをガンガン頼み、店主も大喜びだったとか。

――きょうはACLのアウエーすべてに遠征してきたFC東京ファンの植田朝日さんに、特別にお話をうかがいたいと思います。よろしくお願いいたします。
植田朝日 よろしくお願いいたします。

――まず、FC東京はラウンド16で敗退したわけなのですが、これをどう評価しますか? ベスト16までしか行けなかったと残念に思うのか、それともアジアの16強であることを誇るべきなのか。
植田朝日 俺が、いま思っているのは、悔しい思いは当然ある。あるけれど、あまたある(※AFCには47の国と地域が加盟)アジアのクラブのなかでベスト16に入ったことに、胸を張らなきゃだめだよね。あの試合内容でアディショナルタイムに1点獲られて上に行けなかったことは、そりゃ悔しい。向こうも新興チーム(上海上港は2005年に活動を開始)だから(東京としては)十分戦えたと思う。それがあの、上海上港がぎりぎりのスコアで勝ったときに大喜びにつながったと思うし。俺たちにとっても大きな試合になったけれども、向こう目線で見ても歴史に残るようなゲームだったと思う。またすぐに戻りたいよね。

――あらためてアジアの頂点をめざすACL決勝ラウンドに行きたいと思わせてくれるゲームでしたね。
植田朝日 前回(2012年)に広州恒大とやったとき、のちにアジアの君主となる彼らもACLに初出場で、いわば同期? アジアの同期である広州恒大に負けたわけだけれど、あのときもコンカとかクレオ、ムリキがいて、外国人にやられた感があった。今回ちがったのは、ウー レイにやられたこと。ナショナルチームだったら日本が中国に負けるなんて毛頭ない。外国人がいる中国のクラブチームは手強いけれども、外国人を引いたら中国でしょ、という思いは一般的にはある。だけど中国を代表する選手たちを相手にFC東京の戦力が確実に上回っているかと言えば、そうではない、と。(決勝点をマークしたウー レイという)スーパースター誕生の瞬間を見ちゃった感じだよね。

――中国のキング?
植田朝日 に、なるんじゃないかな、と。俺があのとき思ったのは、1992年のアジアカップで、カズが後半43分、イランを相手にゴールを決めて、グループリーグ最終戦をぎりぎり突破してその後の優勝につなげた姿。あの姿がウー レイに重なる。日本のチームを、あの状況で、最後の最後に倒すゴールを決めた。サッカーファン、アジアサッカー好き、相手チームの立場で言えば、すごいものに立ち会っちゃったなというのが実感なんですよ。

――外国人がすごいのかと思っていたら、中国人のアタッカーにやられた。まちがいなく上海上港で最高の働きをしていましたものね。
植田朝日 ファーストレグのときに前日公式会見で、日本の記者はコンカやエウケソンはどうかとか、ギャンは出るのか、そういう質問だった。中国の記者がようやく「ウチのエースである7番のウー レイをどう思うか」という質問をして、城福(浩監督)さんは「江蘇蘇寧よりも中国人選手のレベルが高い。ウー レイは自分たちも警戒していて、そこへのパスを断たないといけない」という意味の話をした、あそこからストーリーがつながっていたのかな、と。

――勝敗を分けたファーストレグのアウエーゴールもウー レイでした。
植田朝日 俺も「ウー レイが要注意だ」ってTwitterに上げていたし、セカンドレグで上海に行ったときには、コンカかウー レイか迷ってウー レイのユニフォームを買ってしまった。買っちゃったし、全北の試合のときはイ ドングクの買って点決められてるし……。

――敗因はそれかもしれないと言いたくなる(笑)。
植田朝日 まあ、うん。だけど、アジアに出て行ったら、ちゃんと相手をリスペクトしたうえで自分がその地に行った、という足跡を残さないと。話は変わるけれど、東京は今回、上に上がれて、上がれたなりの戦い方をすればもっと上に上がれたかもしれない。でもここまで来られたこともすごいと思うし、単純に監督の采配がどうとか、そんな話ではないと思う。相手もある話だから。プレーオフからこの舞台に上がっているチームなんだから、謙虚にならないと。もっと上に行けたとは思うよ。だけど、ここまで来られたことに関しては胸を張るべきだと思うし、これを思い出にしてはいけないから、またチャレンジして、ここ(ACL)に戻れるようにしないといけないよね。

――早くて次のACLは来年になるのだけれども……いまファンも選手も監督も終わったばかりで、心の整理は完全にはついていないと思うんですよ。この状況から何を目標にやっていったらいいと思います?
植田朝日 いちばんダメなのは“ACLロス”になって、気持ちがふわっとなってモチベーションがなくなり、ファーストステージ優勝もないし……という精神状態になること。このあと最初の試合だからこそガンバ戦がいちばん大事だという気もするし。ACLを振り返ると、サポーターとしてはいろいろなことを仕掛けて“勝った”気はするんだよね。

――仕掛けというのは?
植田朝日 たとえば、上海上港との試合前日に、急にスタジアムにいちばん近いバーに集まれ! って呼びかけて占拠してみて、バーで大騒ぎしているサッカーファンという画をつくったりね。現地の連中も喜んだし、東京ファンのテンションも上がった。ぴりぴりムードだけでなく、楽しんで、笑顔で、FC東京のサポーターのキャラクターをアジアに示してしけたと思う。ベトナムのときには前日にノンラー(円錐形の笠)を買って「我が国をリスペクトして東京のサポーターたちがノンラーを被って応援してくれた」という特集記事になったりしたじゃない。いままでACLでそういう事例がいくつあったかわからないけれど、そういったものをつくれるのが東京だと思う。江蘇蘇寧のときに東京を好きになったという中国人が、今回の上海上港のときにチケットを買って東京側のゴール裏に来てくれたりね。東京ファンと交換したっていうマフラーを巻いて。ということは、アジアでも東京のファンを増やせる可能性がある。

――チームバスを迎えるときなんか、上海のファンも警備員もこぞって東京のファン、サポーターの写真を撮っていたましたし。
植田朝日 トヨタカップで海外のサポーターが騒いでいる光景に興味津々だったかつての朝日少年が近くで見ていっしょにやっていたのと同じことなんだよね。
あと……これは言っていいことなのかどうなのかわからないけれど……今回ね、すごく安価にツアーを組んだこともあって、多くの、いろいろなひとに参加してもらえたんですよ。で、俺はそのみんなに向かって「負けて悔しい気持ちもあるけれど、俺たちはまたここに戻ってこないといけない。リーグ優勝もしたいけれどもそれより、毎年このアジアの舞台に立てるようになりたいよね、みんな来年来ようよ」と言った。それはみんなの気持ちを上げるためにも必要で、ほんとうに可能か不可能かは抜きにして行こうよって思いたいし、そういうメッセージを発信しないといけないなと思ったから。ところが翌日帰国すると、ツアー事務局に「今回は力をもらった。もっとがんばれそうだ」という意味の、参加者からのメールが届いていた。重い病気と闘っているひとからだったんです。負けて悔しいけれどFC東京がここまで私を連れてきてくれた、そのうちアジアの頂点に立ってほしい――という思いもあったようで、それを聞くと、「また来年」と言ってしまっていいのか、と考えさせられた。一戦一戦大切にしないといけないという思いもあらためてよぎり、胸を締め付けられるようだった。

――……もし自分がそういう立場だったら、せめて近い試合の勝利は観たいと思うでしょうね。
植田朝日 それで思ったのが、Jリーグで3位以内に入ることと、天皇杯で優勝すること。アジアを考えたらわかりやすいのはそこだから。だけど、「もっとがんばれそうだ」というポジティヴなそのメールを送ってきてくれたひとのことを考えると、がんばっている東京を見せたい。気安く言ってはいけないのかもしれないけれど、いい方向に向かうのかもしれないから。そう考えると、いちばん早くやってくるタイトルのかかった試合がナビスコ決勝だから、ナビスコを狙いたい。いまは正直、FC東京ファンのなかでもプライオリティが低いかもしれない大会――アジアを戦ったあとの青筋立てて「次はナビスコだ!」っていうやつはいないと思うけど。

――ACLには関係ないし。
植田朝日 うん。だけど、ACLをめざすのは前提としても、いちばん近いタイトルを獲りに行って、そのひとに観てもらいたいよね。そんなの俺ががんばってもどうなることでもないし、選手にどう伝わるかもわからないし、そんなこと言わないでくださいよと思われるかもしれないけれど……「また来年」とかんたんに切り換えられている自分に悔しさを感じているんですよ。いい経験が次につながるなんて、安っちいことは言わない。いままでつながっていないから。来年ACLに行くためには悔しい気持ちを持つことは大切だと思う。けど、それだけじゃないんだな、と。そのことを帰ってきて、直接言われたわけでもないけれど、耳に入ってしまって、眼の前の試合に勝ちたい、眼先のタイトルが欲しいと思った。

――ナビスコのことが念頭からなくなっているファンも多かったと思う。
植田朝日 予選を戦っていないしね。どこが勝ち上がってくるのかわからないファンもいるでしょう。俺たちが言うところの“クラブ世界一決定戦”コパ・スルガへの挑戦権だとは思っていても。でもそういうメールが来たときに、絶対に獲りたいと思ってしまった。

――いまの話を聞いて、安っぽい感傷かもしれないけれども、自分もナビスコを獲りたいと思いました。
植田朝日 ナビスコの価値が、色が変わるよね。ナビスコカップを絶対に獲りたくなった。理由は、いちばん直近のタイトルマッチだから。自分がそれを観たい気持ちが第一だけれど、メールをくれたひとを喜ばせたい気持ちもある。

――我々はライバル、上海上港や全北現代の勝ち上がりを観ながら、眼の前の試合を戦う、と。
植田朝日 観たくないけど、観なきゃダメだよ。この悔しさを忘れないために。上海上港と全北現代の勝敗が、これからのFC東京のものさしだから。いちばん難しいのは国内を勝ち抜くこと。棚ボタで上に行ったのは大学で言ったら裏口入学みたいなものだしね。

――で、いまできるのは、あしたの試合(5/29対ガンバ大阪)。
植田朝日 まずはそこからリスタートだね。ACLロスでおとなしくなるんじゃなくて、俺たちはまたここから始まるんだ、ついているべきものがついているぞ、というところを示さないといけない。

 

 

 

 

 

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