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【緊急無料記事/J1(2nd)第1節第1報】ショートレポート+Review◆最悪の結末。最後のワンプレーにかけた鳥栖と、最終盤に失点した東京の差(2016/07/02)

○ショートレポート

【J1第1節】7月2日、各地でJ1リーグセカンドステージが開幕。FC東京はアウエーの地、ベストアメニティスタジアムでサガン鳥栖と対戦、3-2で敗れた。前半10分にネイサン バーンズの右からのクロスにムリキが合わせて東京が先制。しかし後半13分、富山貴光が蹴った低い軌道の左コーナーキックに対し、橋本拳人と米本拓司、そして鳥栖の谷口博之がコースに入ってブラインドとなり、秋元陽太がボールに触れず失点。東京は1-1の同点に追いつかれてしまう。
東京は4分後の後半17分、左サイド奥に入り込んだネイサン バーンズのマイナスのクロスに河野広貴が合わせて1-2と勝ち越すが、アディショナルタイムに2失点を喫して3-2の逆転負け。後半49分、右サイドを駆け上がった早坂良太が小川諒也をかわしてゴール前にボールを送り、池田圭が合わせて再び同点に追いつかれ、直後に左サイドを高橋義希に突破され、豊田陽平のヘディングシュートでとどめを刺された。ゴール後、センターサークルで主審が笛を吹き、試合は再開されないまま終了。タイムアップの時点で実際に経過した時間は49分30秒台。体力の問題なのか意識の問題なのか、45分を過ぎたあとの5分間をうまく使えなかった東京と、最後のワンプレーまで得点と勝利を諦めなかった鳥栖の差が明確にあらわれた一戦だった。

○Review

アディショナルタイムの2失点については、ゴール前への進入を許す前のところでのボールの獲られ方が悪い、ボールを支配して時間を使えなかったのか、交代枠ふたつのみの使用で90分まで行けたのだから疲弊したディフェンダーの交替に最後の1枠を割くべきではなかったのかと、ざっと考えただけでもいくつかの問題点が思い浮かぶ。
90分間を思い返せば、長い距離のパスを正確に蹴るムリキと、パスがずれる、あるいは短い距離のパスしか正確に蹴ることができない日本人選手の精度の差に観ていて多少苛立つところはあったが、それでも1点リードでアディショナルタイムを迎えたのだから、極端に悪い内容ではなかった。
たとえば浦和レッズとの試合と比較すると、不用意な食いつきの割合はやや少なく、相手を誘い込んで受けるように守備網にかけてからボールを奪い、ペースを握っていた。鳥栖がこだわるパス廻しが拙いこともあり、東京はおもしろいように反撃できていた。
監督の采配も、対浦和戦や対横浜F・マリノス戦のようにアクシデント(各々、徳永悠平とネイサン バーンズを替えざるをえなかった)がなかったこともあるが、交替枠1を残してネイサン バーンズを90分まで引っ張るなど、ここまでを反省しながら慎重に試合を運んでいるように映った。

技術や戦術が十分ではなくとも、決して悪くはない。そして1点リード。この状態でアディショナルタイムに入ったのなら、負けてはいけない。しかし東京は負けてしまった。
試合後の共同記者会見で、センターバックを含む選手たちのコンディションの問題なのか、それとも注意力の問題なのかと訊ねると、城福浩監督は次のように答えた。
「勝点ゼロに終わったことには必ず理由があるので、把握していますけど、これをいまこの場で言うべきではないと思います。チームとして反省するべきところと、個人として受け止めなきゃいけないところは、われわれはプロである以上結果を求められるので、チームの結果はわたしが負いますけれども、局面の結果は選手が負わなきゃいけない。そこを次の修正ポイントとして、チームとしてもっとレベルアップして次に向かいたいと思います」

あえて言うならば、最後の5分間に鳥栖と東京の差があらわれた。おそらく鳥栖はこれまでも、タイムアップの笛が鳴るまであきらめないという姿勢と、最後は放り込んででもゴールを決めるという試合を、幾度となく繰り返してきたにちがいない。しかし東京にはそのような姿勢は薄く、積み上げてきたはずの継続性も鳥栖ほどには感じることはできなかった。監督、選手、彼らを揃えていくクラブ、それぞれが鳥栖に優っていなかったというシンプルな結論にいたらざるをえない。

1ゴールを挙げて交替したあとにアディショナルタイムの2失点を見届けた河野広貴は「最後のところ、もっとからだを張らないといけなかった。もう一回やり直すしかない」と反省の弁を述べた。
同じくベンチで最後の戦況を見つめていた2アシストのネイサン バーンズは「勝たなければいけない試合を落としてしまった。最後の5分を自分たちで難しくしてしまった。次の試合に向けて気持ちを切り換えてやっていかないといけない」。先制ゴールを挙げ、中盤に下がって組み立てに加わり、最終盤には試合を閉じようというメッセージを発しているように見えたムリキは「何がいけなかったかは非常に難しい。残りの2、3分があのまま終わったら、わたしたちは勝ったわけですから。その2、3分でやられてしまって、もちろんそのなかでたくさんのミスがあったから点を獲られた。個人的な責任もあるかもしれませんが、負けたときはチーム全体の責任だと思います。もし個人にミスがあれば、それはみんなの前で話して解決したいと思っています。一週間かけて次の甲府戦がある。まだ始まったばかりでステージ優勝をあきらめていない。切り換えて次の一週間を過ごしたいと思います」。

そして「最後の5分に眼がいくけれども、そこまでの90分間にも問題があって最後にしわ寄せが行ったのか?」と訊ねると、橋本拳人は次のように答えた。
「どんな内容であれ、最後の最後で勝っている状況で(リードを保って)終わらせられなかったというのは、一人ひとりがワンプレーにこだわれば抑えられた失点だと思うし、最後の詰めは、もちろん90分を通しての戦い方だったりを各自がしっかりと考えないといけないですけど、最後は割りきって戦うのも大事だし、いまは結果が大事なので、もったいないなと思います」

試合が終わって冷静に考えれば何が問題かはわかるのだろう。しかし心身ともに疲れ果てている状態でも、考えて即応できなければ、この日の鳥栖のような最終盤のラッシュに太刀打ち出来ない。いかにして試合を閉じるか。反省に反省をつづけて90分まではリードできるようになってきた東京は何分与えられれば勝てるのか、最終的な課題を突きつけられている。

 

 

 

 

 

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