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【前半無料公開(後半有料範囲)】根源的な動機と義務に気づき、“危機”に際してパズルのピースがハマり始めた東京。羽生直剛が伝えるファンへの気持ち、そして多摩川クラシコに向けてやるべきことを整理した秋元陽太、小川諒也、城福浩監督の声(2016/07/21)

◆変化の前提

米本拓司が本日21日から全体練習に復帰。先発出場の可能性が出てきた。一方、橋本拳人の状態は現時点では完調といかないようで、中盤とサイドバックの組み合わせは不透明だ。加えて阿部拓馬は違和感が長引き、前田遼一は今週の練習に参加できず。
「思いの外、ぎりぎりの人数」(城福浩監督)という状況で、メンバーの選択肢にかぎりがある。
もとより、降格圏でこそないものの、セカンドステージ4試合で1勝3敗と成績不振、しかも終盤の逆転負けを繰り返してチームのムードは暗く、それに何倍も輪をかけてチームを取り巻く空気は最悪だ。しかも、もはや1敗も許されなくなった状態で迎える相手はリーグ屈指の攻撃力を誇る川崎フロンターレ。これ以上厳しい状況設定はないだろう。

しかしその“縛り”がさいわいしたのか、土俵際に追い込まれ、ようやく東京は現実に対処するべく、脳内が研ぎ澄まされつつあるようだ。選手と監督の口からは、川崎フロンターレと戦うにあたって具体的なサッカーの話が理路整然と紡ぎ出されてきた。しかもそれらは、もともと言葉数が少なかった秋元陽太、自らを知性派ではないと自認する小川諒也、シーズンが進むにつれ秘匿する口調の割合が増えてきた城福浩監督によるものだったから、少々驚かされる。

この変化の前提に、やはり話し合いを重ねた今週最初の二日間があったのではないか。19日火曜の始動日には、既に練習に、開き直ったかのような激しさが漂っていた。その発生源は、同日、練習前におこなわれた選手だけのミーティングによるものなのか? 森重真人に訊ねると、彼は「いろいろな話をしたので。観ている側がそのように感じたのであれば、効果はあったのかなと思います」と答えた。
翌日20日には、ピッチに出る前に、通常の全体ミーティングがあったようだが、当然のことながら、ここでも現状に対して改善を促す言葉がかわされた。羽生直剛はその様子を「活を入れる、ということはなかったですよ。でも、自分たちがやらないといけないという危機感はあった。ここがもう一回踏ん張りどころというか……まあ、そうですね。勝ちに行く、という感じですよ」と伝えてくれた。

城福監督は“理論”とならぶ柱として、この激しさに対して“パッション”という表現を使っていた。パッションには理由がある。
クラブやチームの内情、個々人の事情がどうあろうと、プロとしてやらなければいけない義務に眼を向けたのか。この問いに対する羽生の答えには、プロサッカーとは何かという根源的な考察が込められていた。
「選手間のミーティングでも出たんですが、お金を払って観に来てくれているひとは“味スタで起こっていることしか知らない”し、味スタで見えているものがそのひとたちの評価につながるわけだから、そこについては、なんの言い訳もできない。少なからず何かを見せなければいけないと思う。その見せるものが、すごくきれいなサッカーができないのだとしたら、戦う姿勢だったりね、ひたむきな姿勢を見せるのが、せめてできることだと思うし。そのことで、仕事がうまくいっていないひとに、明日がんばろうって思ってもらえるかもしれないし、そのように生活の一部になっているわけだから、示さなければいけない。
ブーイングをしたとしても、次の試合には勝つことを期待して観に来てくれているわけだし、自分たちのプライドをかけてやらないといけない。
もっと言えば、試合に出ていない、ベンチにいる、スタンドで観ている仲間たちに、ピッチに出るひとはそれを示さないといけない、責任をもってやらないといけないということを、もう一回確認して。なんとなく試合をやって、なんとなく負けて(嘆息)、試合になんとなく出るのは、ナシかな、と。
同じ相手に二回負けるのはね。負けず嫌いでなくとも、1勝1敗にしたいと思うでしょ(笑)、ふつうは。それだけでもモチベーションに変えられる」

◆川崎に勝つために

意識の変革を遂げたのち、冷静に川崎のストロングポイントを精査し、自分たちに劣るところがあるならばそれ以外で通用する部分を探し、対抗策を練るという具体的な手順を経て、多摩川クラシコの戦い方は定まった。

◯小川諒也の談話

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