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【無料記事】【新東京書簡】第六信『昔ながらのシウマイ15個入 620円(税込)』後藤(2016/09/14)

第六信 昔ながらのシウマイ15個入 620円(税込)

過去二年間、練習試合にすら出場できなかった圍謙太朗のような選手にとっては、J3参戦は追い風となった。

過去二年間、練習試合にすら出場できなかった圍謙太朗のような選手にとっては、J3参戦は追い風となった。

■容器にくっつくべきごはん粒がない『昔ながらのシウマイ15個入 620円(税込)』

炭水化物がよけいだなあ。
そう思っていつも『昔ながらのシウマイ15個入 620円(税込)』を買う自分には、蓋にごはん粒がくっついて悪戦苦闘しながらも文句を言わないという機会がない。

昔は海江田さんみたいにシウマイ弁当買ってたよ。やっぱりごはんがあってお弁当っぽいものを食べたいと思っていたからさ。だけど、おとなになると、お米食べなくなるじゃん。炭水化物に胃のスペースをとられるのがもったいなくて、まあお酒とか呑むものと、歯ごたえのある何かだけにする。
そんなわけで、新横浜駅とかで買う駅弁は、ある時期からシウマイ弁当ではなく、シウマイ単品になった。だから、蓋にごはん粒がくっついてめんどくさいなと感じる経験をしなくなった。

探せば不満や違和感も出てくるかもしれないよ。
匂いが強いからすぐ食べないと居心地が悪いとか、なんで醤油がとっくりの半身みたいなせとものに入ってんの注ぎにくい、とかさ。
でも概ね不満がないんだよね。

これは東京ヴェルディとFC東京のちがいなんじゃないかな。厄介なヴェルディを選んじゃった海江田哲朗と、手間の掛からないFC東京を選んだ後藤勝との。

厄介なクラブでそれを受容するほうが忍耐力はつくと思う。
FC東京の場合は、あれこれ問題があっても総じて波風が少なかったところに、大きな波風が来たから、ファン、サポーターはもちろん、ビジネススタッフ、コーチングスタッフ、選手、メディアも面食らって、上へ下への大騒ぎになっちゃったところはあると思う。

海江田さんは「ただ、許容できることと看過できないことの区別は大事だと思う。肝心のシウマイが不味くなったら、誰も崎陽軒買わないでしょ」と書いた。いみじくも、なのかなぁ。ぼくはシウマイ自体がまずくなったとは感じないんだよね。ことしのうまくいかなかった一連の物事を喩えるとすれば、パッケージがわかりにくくなったとか、値段が上がったとか、駅で売ってないとか、外身、プロデュースのまずさだったんじゃないのかな。だから崎陽軒=FC東京から離れるという選択肢はいっこうに浮かんでこない。

■2周めのゲーム

一カ月前、『MCタツのロスタイムTV』に出演させてもらった。
http://ch.nicovideo.jp/loss-time/live

そのとき、城福浩前監督についての評価の話になっていたんだけど、視聴している方から「そもそも論として、マッシモ フィッカデンティ元監督との契約を更新しなかったのは正しかったのか?」という趣旨のコメントが書き込まれたらしく、MCタツさんがその話をふってきた。
で、この「そもそも論」を辿ると、問題点にたどり着くという話でしょ。そうすると企業体質そのものを容認できないから変えなさいという見方か、企業体質を見越してやり方を変えようという見方か、対処法が分かれると思う。

体質を欠点とみなすか個性とみなすか、によって判断が分かれるんじゃないかな。社内の公用語を英語にしてうまくいく企業とそうでない企業があるとしたら、根本に東京ガスがあるFC東京は、それを無理に変えてうまくいくんだろうか。

件の『MCタツのロスタイムTV』では、ありがたいことに拙著『エンダーズ・デッドリードライヴ』の続編は出ないんですか、という質問も頂戴した。あれは2014年夏の時点で書いたものなのに、東京のどこかのクラブで外国籍の監督が不可解なかたちで解雇され、その翌日ライバルクラブに掠め取られるように電撃移籍、日本人監督に交替した東京のどこかのクラブはチームが崩壊して残留争いに巻き込まれ、新しい監督の許で1部残留をめざすという、どこかで聞いたような筋書きの「予言の書」なんですよ! と力説したら、その番組の配信時間内でさっそくポチってくれた方がいた。ありがとうございます。その小説ではね、更迭される監督と、クビにした側の常務が、互いに相手を悪く言わずに静かに別れる描写もあるんですよ。今後の就職があるから、と。それもどこかで聞いた話でしょ。

要はね、日本の社会で日本のサッカークラブに起こりうる普遍的な出来事を書いたんだ。
そもそも論を辿っていくと、意思決定システムが合議制のような何かで、若い社長はそこで悪戦苦闘して、役職の上ではトップでも必ずしも自分の意見は通用しないしむしろ矢面に立たされるだけ、という描写もある。
クラブとかリーグの先の社会構造とか歴史は、お話だからファンタジーの部分もあるけどっていうか多いけど、陰謀論的に日本会議についての本も出るくらいの世の中だし、まあアリかなという感じでそれも書いた。

話を戻すと、FC東京の一連の出来事は、日本のサッカー界ならどこにでも起こりうる話なんだと思う。でもそれが大きいレベルで起きたときにどう対応していいのかわからなかったのは、東京界隈に大事件の経験が少なかったからなのかもしれないね。
2000年シーズンの終わりにアマラオさんを引き留めたようにマッシモ フィッカデンティ元監督を強引にでも引き留めようという熱さはなかったし、新体制発表で「頂戦」をぶち上げてみたクラブに「またまた、この状態で優勝できるわけないでしょ」とたしなめる余裕もなかった。翻弄されてしまったな、という気がする。

いまの気持ちは、根本については不満を抱かずに容認するけど(たとえば好きになった相手が外国人だったらそのひとの国籍は変えられても民族は変えられないから、それは要求できない)、事件が起きたときの対処に不満アリ、というところ。
次に何か事件があるとしたら、2周めのゲームのように、今度はうまく対応してほしいし、自分ももっとうまく対応したいと思っている。

ヴェルディなんて、運営母体が読売→日本テレビ→新しい会社みたいな感じで何度も変わっていて2周めのゲームどころじゃないよね。何周め? 今度はクリアできそう?
いま最新のヴェルディがめざしているのはどこなんだろう。東京23区を制するクラブなのか、それとも立川や多摩に特化したクラブなのか。某人気映画の頭脳部分のみの遷都よろしく、そこら辺りにこだわってみるのも手だと思うけど。

『トーキョーワッショイ!プレミアム』後藤勝

 

 

 

 

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■後藤勝渾身の一撃、フットボールを主題とした近未来SFエンタテインメント小説『エンダーズ・デッドリードライヴ』(装画:シャン・ジャン、挿画:高田桂)カンゼンより発売中!
◆書評
http://thurinus.exblog.jp/21938532/
「近未来の東京を舞台にしたサッカー小説・・・ですが、かなり意欲的なSF作品としても鑑賞に耐える作品です」
http://goo.gl/XlssTg
「クラブ経営から監督目線の戦術論、ピッチレベルで起こる試合の描写までフットボールの醍醐味を余すことなく盛り込んだ近未来フットボール・フィクション。サイドストーリーとしての群青叶の恋の展開もお楽しみ」
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