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【特別無料記事/J1第1節第1報】鬼門カシマで10年ぶりの勝利! この鹿角軍団撃破からFC東京の変身が始まる(2017/02/25)

◯貴重な1勝
2月25日、FC東京は県立カシマサッカースタジアムでJ1第1節に臨み、鹿島アントラーズを相手に0-1の完封勝利を収めた。カシマでのリーグ戦勝利は2007年6月30日のJ1第18節(マルキーニョスが1点を挙げた鹿島に対し、ルーカスと鈴木規郎が得点、1-2)以来、9年と8カ月ぶり。後半37分、左サイドから切れ込んできた中島翔哉のシュートを鹿島ゴールキーパーのクォン スンテが弾いたところ、詰めていた永井謙佑と大久保嘉人に挟まれるようにプレッシャーを受けた途中出場の鹿島サイドバック三竿雄斗がオウンゴール。この1点が決勝点となった。ファーストハーフはじっくりとビルドアップして不用意な反撃を避け、セカンドハーフは鹿島に攻め込まれながらも守備組織を維持して耐えるなど、90分間を通しての試合運びに対する意識を向上させたことで得られた、貴重な1勝だった。

◯中島翔哉がスイッチに
試合後の共同記者会見で得点のきっかけとなった中島について訊ねると、篠田善之監督は次のように答えた。
「(中島)翔哉はやはり自分でボールを運べるし、攻撃のスイッチを入れられる選手。なかなか球離れがどうとか、いろいろありますが、結果的にああいうシュートのこぼれを詰めたわけですから。彼の特長を尊重しつつ、周りとのかかわりと(を深め)、肝心なところで自分が(パスを)出してまた出ていけば、よりインパクトのあるいやな選手になると思う。ここから彼が、チームが、どうやってそれをつくり上げていくかを、しっかりトレーニングで今後もやっていきたい。仕掛けることは、引きつづき彼にやってもらいたいと思っています」

ボールを持ったら自分で撃ちにいくことを優先的に選択する中島。この試合では、試合終了間際、コーナーキックにつながったシュートも含め、結果的にほとんどがいい方向に転がった。中島本人は「自分が出ていたら自分がゴールをすることを考えています。(得点につながったシーンのシュートは)ふだんから練習していますし、自信があったのでファーサイドに速いシュートを狙って撃ったんですけど、あまりいいシュートではなかった。次の試合はもっと自分でちゃんとゴールを決められるようにしたい」と言い、まず自分で仕掛けて自分で撃つ原則を貫く姿勢に変わりはないようだが、交替直後の後半20分にはパス&ゴーで抜け出す場面もつくっていた。今後は篠田監督が言うような方向の進化もありうるのかもしれない。いままであったよい部分を活かしながら、個人としてもチームとしても変身を遂げ、成長していけるのなら、それが望ましい。

◯変革の始まり
後半14分、足場の悪いゴール前で、スピンのかかったボールに対して打ち上げるのが精一杯となってしまい、自身の今シーズン初ゴールはならなかった大久保は「ほっとした。やっぱり不安だったから。しかも鹿島だし。どんな勝ち方でもいいから勝ちたいと思ったので、勝ててほっとしました」と、安堵の表情。
またキャプテンの森重真人も「この相手で、この場所でしっかり勝点3を獲れたことがまずうれしい」と、緊張を残しながらもほっとした様子を見せた。いまは、新しくやってきた選手たちに刺激を受け、以前から所属している選手たちも変化を求めてもがき苦しんでいるところだと、森重は言う。まだチーム変革の端緒についたばかりということなのだろう。カシマスタジアムでの勝利は森重が言うように重要なものだが、真に根底からチームを変えるのは、そう容易なことではない。あと33試合が経ったのちにいたるまで、この“変えよう”とする姿勢がつづいていれば、あるいはいままでのメンタリティや気風から脱し、強いチームに生まれ変われるのかもしれない。
喜ぶのはまだ早い。鹿島に勝っても、東京はまだリーグ優勝を達成したわけではない。

森重によれば、篠田監督は今シーズンの始動から開幕のvs.鹿島アントラーズ戦を目標に、逆算していかに準備するかについて言いつづけていたという。選手たちが90分間、がまん強く戦う姿勢を徹底できた背景には、指揮官の粘り強さも関係しているのだろう。
「(鹿島を相手に)フィニッシュまでこじ開けるのは難しいですが、とにかく一歩前進したなと感じています。サポーターのみなさんにたくさん来ていただいて選手を後押ししてくれたし、われわれにとってこの勝点3は新たな一歩。ここからまた次に向けて、全員でしっかり準備したいと考えています」
篠田監督はこう言った。難関中の難関を突破した喜び、重圧から開放されたやすらぎに浸りながらも、この成功体験を一度きりに終わらせないよう、前進をつづけたい。

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