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【有料記事/J1第1節第3報】開幕戦の勝因<2>~90分間の集中と忍耐。セカンドボールを拾いつづけ、焦れなかった試合運び。高萩洋次郎、橋本拳人、林彰洋(2017/02/28)

Jリーグチャンピオンシップに勝った勢いのまま、レアル・マドリーを苦しめてのFIFAクラブワールドカップ2位。天皇杯を制し、ゼロックススーパーカップを獲り、ACL初戦を勝利で飾り――と、この世の春を謳歌していた鹿島アントラーズに、FC東京はカシマスタジアムで勝ち、あらゆるものをひっくり返してしまった。
効果的な大型補強、ファンとのふれあいやメディア対応を排した鉄のカーテンの実施、反面メリハリをつけての渋谷109前でのイベント開催など、クラブとしても変化の兆しを見せていたが、それらを受け、ピッチ内で志した変革が勝利を呼んだ。

◯90分間の忍耐

「守備の部分もみんながまん強く、失点ゼロだった。最後に林(彰洋)が止めてくれた場面もあったし、チーム全体として失点ゼロで試合を進めたからこの勝利がこぼれてきたのだと思います」
この高萩洋次郎の言葉がすべてをあらわしている。がまん強さ。それは昨年までのFC東京に足りないものだった。
かつての東京には、いい意味でもよくない意味でも学生のような若々しさがあった。イキがよく、自分たちの時間帯にはとてもいい表情をするが、反面、苦境に陥り失態を演じると、とたんに落胆の色が濃くなる。ある時間帯にいいプレーをして喜んだとしても、最後に勝っていなければ意味が失われる。90分間を通してじっくりと試合を進めるということができないために、喜びが色あせる試合を繰り返してきた。
何事かに偏らず、落ち着いてふつうの――ふつうのと言って悪ければ、おとなのサッカーができたのは、もしかしたら今シーズンの開幕戦が初めてかもしれない。

ビルドアップはときに、慎重でゆっくりとしたものだった。マイボールになったからと言ってあわてない。ディフェンスラインで廻し、ボランチ辺りにつけても、出しどころがなければ無理に攻めず、後方に戻す。早く点が欲しいというような焦りは見せなかった。不用意なパスを出して相手に有利な状態でボールを奪われないよう、リスクを避ける。落ち着くべき時間帯では、相手のバランスが崩れるまでタテに入れようとはしなかった。
この点を指摘すると、橋本拳人は頷いた。手応えを感じていたようだ。
「そうですね、ほんとうに焦れずに廻す時間もあると思いますし。うしろでつくっているあいだに前がいい動きをしてくれるので、いい動きをしたときは、ウラ、背後をとっていこうと、チームとして共通理解のもとやれていたので、ほんとうにスムーズにできたかなと思います」

◯意識したバランスとコントロール

「自分も周りもいい位置にひとを置けるように意識しました」とは高萩の弁。ポジショニングや距離感への気遣いがうかがえる。全体的なバランスがいいといいことは、局所的なバランスもいいということだ。こまかく分けたグループやコンビでもそうした関係を構築しようとしていた。
ボランチ同士の関係を、橋本は次のように語る。
「(高萩)洋次郎くんも、前に奪いに行ったり、カヴァーしてくれたりと、すごくいい関係でできたと思う。自分としては、もっともっと奪って前に出ていく回数を増やしたいと思いました。
ポジショニングのところでバランスを常に意識。(高萩)洋次郎くんが前に行けばぼくが残るなど、基本的なことを常に確認しながらできました」
他のポジションとも連動していた。橋本が一列落ちてゴール前――バイタルエリアを埋めると、

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