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【有料記事】【新東京書簡】第二十三信『止めてギャップをつくろう』後藤(2017/8/03)

ヴェルディ出身なのにFC東京のために働いている中村忠FC東京トップチームコーチ兼U-23監督。

第二十三信 止めてギャップをつくろう

■自分の間合い

先日、FC東京を長年追っているライターの藤原夕さんに連れられて、さる会合に行ってきた。集まったのは社会人、Jを問わず東京のサッカークラブで運営や記録に携わっているみなさん。縁の下の力持ちだ。純粋にサッカーが好きで、自然と話が盛り上がる。都リーグ関係の方が多いので「自分は1921年の第1回天皇杯で優勝した東京蹴球団と1923年の第3回天皇杯で優勝したアストラ・クラブをリスペクトしている」と述べると、なんとアストラの方がいて、これまた話が弾んだ。

この会は半年に一回のペースでかれこれ20年以上つづいているらしい。SNS全盛の時代に、連絡はつい最近までFAXや封書を使っていたというから時代錯誤の部類に入るのかもしれない。味のある付き合いをしていると思う。
「いい感じでしょう」と藤原さんに言われて気がついた。
サッカークラブが地域に根ざし、垣根なく人々が交流している南米、あるいは欧州の下部カテゴリー辺りにありそうな雰囲気だ。スローライフというカタカナが頭に浮かんだ。

海江田さんは「時代のスピード感についていけない」と見出しを立てて「ためらってばかりですよ」と言ったけれど、まあ同感なところはある。たとえばだけど、自分がJ3の試合後の記者会見で中村忠監督に何か質問して有用な答えをもらったとするでしょ。取材終了後、さあどうしようかなと考えているときに、どこかのひとはそれをTwitterにPostしていて、そのすぐあとには所属媒体に速報の記事を出しているといった塩梅だから、もう周回遅れなんだよね。

ただ、止まることも大事だと思うんだ。
昔の讀賣クラブでは、ラモス瑠偉さんだけ時間の感覚がちがって、ひとりだけ止まっているように見えたらしい。プレーメーカーっていうのは時の魔術師なのかね。いまのFC東京で言えば大久保嘉人が「メリハリをつけろ」と言っているけれど、いくら速くても、同じテンポで全員が走ってしかも相手が同じテンポでついてきたとしたら、マッチしたまま膠着するでしょ。周りが走っているときに止まるから、ギャップなりコースができてチャンスが生まれるんじゃないかな。

たとえば、6月末に契約が満了したネイサン バーンズが東京最後の日を迎える前に、彼のまとめ記事をいち早くフットボールチャンネルが掲載していた。そつなくまとまっていたし、バーンズの2年間を振り返るにはいい記事だったと思う。
じゃあ、もうバーンズに関してやることがないかというと、足りないなあというものがいろいろと見えてきたんだよね。それで伴和曉通訳に話を訊いて書いたところ、けっこうな反響を頂戴した。
石川直宏の記事もそう。某議員のニュースが大量に出回ったあと、トップチームのドイツ遠征についていかなかった自分が小平に脚を運んだら、石川選手が対応してくれた。
いずれも取材対象者が時間を割いてくれたことにまず感謝するべき案件であるのは大前提で、あえて言えば、あれらは止まって考えて生まれたものなんだ。

なんでもかんでも自分のタイミングだけじゃだめなんだろうけど、プレッシャーをいなしつつ自分の間合いで止めて蹴ると、自分のサッカーができる。最近はそんな感覚で仕事をしている。以前は焦りすぎて内容が伴っていなかった気がするから、しばらくこうするつもりだ。

■もっと言い合う集団に

なんかメールっぽくなるけど前回の第二十二信から引用させてもらうね。

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