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ハラハラドキドキ、水溜りでボールが止まる雨中の決戦で見えてきたものとは何か~吉本一謙、室屋成、大久保択生【レポート/Review】

10月29日、FC東京は味の素スタジアムでJ1第31節に臨み、0-0で清水エスパルスと引き分けた。台風22号の影響による強い雨で試合が進むにつれピッチのあちらこちらに水溜りができ、グラウンダーのパスをつなぐサッカーができない状況で、双方とも積極的にゴールを狙う展開となったが、互いに好守を見せ、あるいはシュートがポストに当たる場面が多く、得点することができなかった。後半32分にはウラに抜け出した永井謙佑が決定的な強いシュートを放ったが左ポストに当たってしまい、決勝点を奪うことはできなかった。この結果勝点1を得た東京は、15位のヴァンフォーレ甲府と16位のサンフレッチェ広島が敗れたこともありJ1残留を確定させた。

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2012年11月17日に、やはり同じ味の素スタジアムで開催されたJ1第32節vs.ヴィッセル神戸戦を思い起こさせるような、強い雨の下での試合だった。試合前に水を除去したことで序盤はある程度パスをつなぐことができていたが、前半20分過ぎから雨の勢いは猛烈なものとなり、5年前同様に水溜りでボールが止まるピッチコンディションでの試合となった。
ボールが転がりにくいために浮き球や放り込みを多用する状況。強く撃てば守備側のミスが起こる可能性もあり、攻撃側は思いきりクロスを放ちシュートを放つ。守備側はミスをしないようにはっきりしたプレーを心がける。雨のおかげで消極性が消失し、互いが積極的にゴールを狙う試合になった。両チームのファン、サポーターにとっては胃が痛くなるような試合だったとも言えるが、客観的にはゴール前のきわどいシーンが多くエンタテインメントとして成立する試合だったのではないか。

この試合で見えたよい点は、上記の積極性、そして前節までよりも鮮やかに浮かび上がった戦う気持ちだった。

後半7分、至近距離で相手シュートをブロック、昏倒した吉本一謙は「みぞおちに入った。肋(あばら)に当たった感じでした」と振り返った。担架で運ばれながらピッチに戻った吉本は、このシーンにかぎらずからだを投げ出すようにして守りつづけた。後半36分にはチアゴ アウベスにその捨て身のタックルをかわされる場面もあったが、ゴールキーパーの大久保択生が防いだ。吉本は自身と仲間たちの働きを次のように振り返った。
「難しい状態の試合でしたが、これもサッカー。いままではこういう試合を取りこぼしてきた。勝点1獲れたことをプラスに考えたいと思います。丸山(祐市)選手も徳永(悠平)選手も(水際で)1点ずつ防いでくれました。自分はからだを張るプレーしかできない。全員でゼロに抑えるという気持ちを見せたかった。いままでの結果は期待に応えられなくて申し訳ない気持ちが強い。ラスト、ここからやっていきたいなと思います」

気持ちの強さがあってこそなのかもしれないが、たとえ冷静に考えていても、ある程度リスクを覚悟して大胆な行動に出なければ得点できず失点を防げないという状況で、どの選手もおしなべてそのようなプレーができていた。
「雨だからということもあるのかもしれないが、みな大胆にクロスやシュートを狙っていたようだが?」と訊ねると、右ウイングバックで好調を取り戻してきた室屋成は次のように答えた。
「シンプルにやっていました。雨が降っていない状況でもあのくらいシンプルにやることも大事かなと思いますけど、きょうはひとつのことに徹してチームとしてやろうとしていたので、そこはよかったんじゃないかと思います」
マシーンのように遂行するべきプレーを徹底していく粘りがあった。「声は全然聞こえなかった。(半袖の選択は)ミスりました(苦笑)」と雨に戸惑いながらも最適な選択肢を探していった。
「少し変わった試合。これだけ水溜りができることもなかなかない。自分のなかでは、やるべきことはセカンドボールを拾って前のスペースに送り込むということだと判断してそれを徹底してやっていたし、

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