青赤20倍!トーキョーたっぷり蹴球マガジン

J3最終節、守備陣が語る充実。ビッグセーブにも守備組織づくりを反省する廣末陸、堅実な跳ね返しで貢献しながらも応援の不思議を実感する岡崎慎。来季の飛躍につなげたい才能の萌芽

1対1の場面を制し、失点の危機からチームを救った廣末陸。

強さを見せた岡崎慎。堅実なディフェンスで貢献した。

駒沢最終戦でのFC東京U-23は、決して完全な守備を披露していたわけではなかった。前線からの猛烈かつ果敢なプレッシングでセレッソ大阪U-23を封じ込めようとしてはいたが、自陣ゴール付近、あるいはペナルティボックスまでボールを運び込まれてしまう場面も目立った。それでも2点のリードを奪うまで無失点で耐えたことが、相手の反撃を1点に抑える勝利につながった。
勝ちたい、勝たなければという気持ちの強さと、オーガナイズ――守備組織づくりの未熟、そしてゴールキーパーとディフェンダーの幸運が織りなす試合展開が観る者を熱くさせた。

差し込まれてからのセーブが多かったが――と訊ねると、廣末は素直な喜びと深い思索の跡が混ざったような表情で、自信を漂わせながら反省の弁を述べた。
「けっこう(シュートの)コースが甘かったからよかったです。(前半28分、最初に脚で防いだ、危険な場面であった)1本めのヘディングもきついところに来たらノーチャンスだったものを、たまたま相手が外してくれただけで、その辺りのオーガナイズをして事前に防げていないと、だめだったなと思います。最後の失点もコーナーキックから。相手はセットプレーが強いとわかっていたけど、またやられたというのは、大きな課題だと思いますし、相手のいいところを消すというのは、もっとチームとしてやっていかないといけないなと思いました」

至近距離で1対1のシュートを止める反射神経が光ったのはもちろん、正確なフィードもすばらしかった。前半13分には、左サイドの高い位置にいた小川諒也に蹴ったボールがあまりに速く精度の高いものであったために、場内が大きくどよめいた。これを活かして全体を押し上げ、相手を押し込むことができていたのは事実だが、しかし前線との連携に、ここでも組織的な課題を残していたこともまたゴールキーパーとしては気にしなければならず、廣末はまたも反省した。
「この試合に関してはキーパーにバックパスが来る回数が非常に少なかった。そのなかでチームメイトが苦しくてキーパーにまで出して相手がぼくにプレッシャーをかけてきているなかで、フォワードがウラに要求してきたり、足許にくれとか、そういう意思表示がうまくできていなくて、ぼくもどこに出していいのかよくわからない状況があったので、そこをもう少し詰めることができれば、もっとマイボールの時間は増えたんじゃないかと思います」

苦渋の表情ではない。シーズン最後の公式戦だというのに、まだまだ課題が出てくる。真剣勝負をするからこそ浮かび上がってくる課題を早く次の練習と試合で克服したいのに、もう間もなくシーズンが終わってしまう、そんなはやる気持ちすら感じさせるような、前向きな反省だった。サッカーをしたいという気持ちは、引退する試合にもかかわらず課題を見つけて現役をつづけたそうな石川直宏の気持ちともリンクしていたかもしれない。課題の発見と修正のサイクルからなかなか逃れらないサッカー選手の性(さが)なのか。

岡崎慎もゴール前でよく守っていた。フィードにも攻撃参加にも自信を持つ新世代のディフェンダーだが、この日は跳ね返しなど、古色蒼然たるプレースタイルで強さと頼もしさで観衆を魅了した。
この戦い方にははっきりとした狙いがあった。
「鈴木(喜丈)選手が横だったので、集中できたというか。柳(貴博)選手も鈴木選手もけっこう攻撃が好きだと思うので、どうにかして自分が守らないと、と思いました。どちらかというと守備を重視してプレーしていたと思います」
最終ラインに残ることを意識していた?
「そうですね、3バックでもサイドだと攻撃に行きたくなっちゃうんですけど、

(残り 2656文字/全文: 4353文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ