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冷静かつ前向きな篠原新汰「カシマの失意」からの逆転劇【プレミア最終節第2報】

試合開始直前、篠原新汰の表情。

新たな歴史に向けた歩み。

試合後、篠原の眼は既にチャンピオンシップを見据えていた。

人工芝の東京ガス武蔵野苑多目的グランドで、ベンチと選手入場地点がコートの奥側に設けられたのは初めてのことだった。整列した選手からは、周囲をすし詰めのファン、サポーターが取り囲んだ景色を一望にできる。FC東京U-18のゲームキャプテン篠原新汰は「壮観だな」という意味の言葉を発し、審判団を先頭にセンターサークルへと向かっていった。彼の表情には、既に笑顔があった。

試合開始時点で、東京に自力優勝の可能性はなかった。前節、アウエーで鹿島アントラーズユースと引き分け、勝点3を獲得できず、ほぼ優勝争いから脱落するところだったが、首位の清水エスパルスユースが3位の青森山田高校と4-4という壮絶な撃ち合いの末に引き分けたことで、首の皮一枚残った状況。最終節で東京が勝っても、清水が引き分けるかまたは敗れないかぎり優勝はない。しかし胃がきりきりするような舞台設定にも、篠原は前向きで、表情はあかるかった。

「鹿島戦の結果(0-0の引き分け)については、勝点1を積み上げられたことをポジティヴに捉えていました。勝点1を積めば第17節時点での優勝決定はないとわかっていましたし、うしろ(守備陣)としては失点ゼロで終わることができていました。次に向けて切り換えることが、可能性の残っているチームとしてやるべきことだと思いましたし、それがきょうにつながったと思います」
右サイドの暴れん坊、横山塁が悔しさのあまり泣いたカシマの失意。その場にあっても、篠原は次を見据えていた。

最終節、清水は柏レイソルU-18に敗れ、青森山田に勝った東京が高円宮杯U-18プレミアリーグEAST優勝を成し遂げた。試合前の笑みともちがう、爆発的な歓喜がチーム全体を包み、篠原も破顔した。
「自分がこのチームに三年間いて見たことがなかった(EAST)優勝を自分の代で果たしたことにはすごくうれしいものがあります。J1で2位の川崎が逆転優勝したのを見て、運も味方してくれるかな――とも思っていましたけれども、まずは眼の前の山田戦をしっかりと戦いきることだけに集中していたので、試合終了のホイッスルが鳴ったあとに『優勝!』との言葉を聞いたときはうれしさ爆発でしたね。けっこう頭が真っ白で何も考えられなかったですね。ほんとうにうれしかったです」

しかしそのあとにつづく言葉がすごかった。
「まあでも、このあとにチャンピオンシップがあるので、きょうは喜んでもいいかなと思いますけど、あしたからまた頭を切り換えて、東の10チームの代表として恥じることのないようにしっかりと戦って優勝できたらいいと思います」
緊張からつかの間解放された佐藤一樹監督は、半ば冗談まじりに、チャンピオンシップも「選手がやってくれます」と言っていたが、その信頼の厚さもうなずける。おとながあれこれと注文をつけずとも、やるべきことを正しく選択できるのだろう。

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1月22日から2月11日にかけておこなわれた新人戦を前に取材したときも、篠原の受け答えはしっかりとしていた。チームについて

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