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【U-18総括】2017シーズンのFC東京U-18を振り返る~佐藤一樹FC東京U-18監督<後篇>

(前篇からのつづき)

佐藤一樹監督体制初年度の2014年はプリンス関東1部からプレミアEASTへの昇格を果たした年だったが、このシーズンも楽ではなかった。夏のクラブユース選手権ではノックアウトラウンドに入ってからPK方式で2試合を突破、準決勝では悪天候(雷雨)に見舞われ試合が1時間も中断し、延長戦に入ることができず最終的に抽選で決勝進出を決めた。その決勝では三菱養和SCユースに完封負け。佐々木渉や蓮川雄大を擁した3-4-3のチームは魅力十分だったが、何が足りなかったのか。プレミア参入戦はまたも悪天候(積雪)の影響で第1戦が翌日に順延となり、終了間際に佐々木のゴールでからくも初戦を突破。中ゼロ日の連戦で臨んだ第2戦では古豪の清水桜が丘高校(旧清水商業高校)を相手に2点のリードを保って勝ち、プレミア復帰を決めたものの、中4日で臨んだJユースカップ準決勝ではガンバ大阪ユースに敗れ、ベスト4で涙を呑んだ。
個が強くてもチームとしての勝利が約束されているわけではない。この地点から“カズ東京”は、チャンピオンシップを制するまでに進歩を遂げた。
「そういうことも思い出し、選手に話したりもします。いい加減なプレーはできない、いい加減な立ち居振る舞いは許されないという気風が年々積み重なってきてのいまだと思うんです。サッカーをやればいいというだけではなく、どういう方々に支えられてサッカーができているかということを噛み締めて日々を過ごさないといけない」
佐藤監督の言葉に重さがあった。

◯勝ち運が転がってこないと勝てない

サッカーにはいくつもの不思議が横たわっている。論理だけでは割り切れない何かを感じながらの指導になる。計算できない未知の領域が残るにしろ、現実的に計量化できる要素を練習に落とし込み、できるだけの努力を尽くしたうえで天命を待つしかない。
「サッカーの実力があっても、勝ち運が転がってきてくれないと勝てないという感覚はあるんです。でもそれを引き寄せるにはやっぱり日々の積み重ねが必要。ことし(2017年)のチームには一体感があり、試合に出ていない選手も紅白戦ですばらしいプレーをしていました。ふだんの生活、学校の生活にもアンテナを張り巡らせ、さまざまな物事に感謝をする。加えて、過去の歴史にも思いを馳せる。あらゆる要素が最後のゴールを生むことにつながるのだと思います。もちろん力が突出すれば全部勝ちきれるとは思いますが、われわれへの当たりが厳しくなる来年を勝ち切るには相手の1.5倍くらいの力がないとねじ伏せられない。連覇となると、勝ち運が転がってこないと難しい。清水エスパルスユースはことしの最後に優勝を逃して、次こそはという意気込みで2018年度のプレミアに入ってくる。われわれにしても昨年(2016年)に優勝を逃しての今回の優勝でしたし、そういう悔しさが力に変わるということもありますから、すべてのバランスが整わないとプレミアを制覇することは難しいと思います」

Jユースカップを除けばリーグ戦で敗れた試合は3試合。ホームでの敗戦はプレミア開幕のvs.清水エスパルスユース戦だけだった。第2節で浦和レッズユースに勝っていなかったらどうなっていたかわからない。結果的にはEAST優勝を果たしているものの、拮抗したリーグで、もっと順位が下がっている可能性もあった。黒星に身を引き締め、連敗を防いだおかげの王座奪取だったとも言える。
「すべての敗戦には意味があり、その都度『しっかりしなきゃ』という想いが頭をもたげます。そして大味なゲームが少ない。ことしのチームは現実的なおとなのサッカーができる。ちゃんとゲームを運んでサッカーを構築できるという意味では、いままでの歴史のなかでも突出したチームになったと思います。アウエーの清水エスパルスユース戦でも2-0から2-2に持っていった引き分けの勝点1にすごく意味があると思いますし、ぎりぎりの試合をものにする、チャンピオンシップもそうですがここだというところで出力を高めて点を獲り、ここだというところで全消しでブロックしてコーナーでキープする。賢いチームだったと思います。賢くというと策に溺れるという面もありがちですが、大胆だったり緻密だったり、熱かったり冷静だったり、針がフラットな状態でピッチに立っていられる選手が多かった。バランスがいいですよね。攻撃も守備も、ゲーム運びも、と。オフでも人間的にあかるく、仲が良くて楽しい。優勝するに値する、よかったねと言ってもらえるチームだったと思います」

◯体験から生じた指導論

小林幹に佐藤一樹監督から学んだことを訊ねると、次のように答えた。
「振り返るといろいろなことを教えていただき、ひとことで言い表すのは難しいのですが、挙げるとするとメンタル。サッカーに対する姿勢と言いますか、そこが成長できたと思います」
佐藤監督の指導論を的確に言い表している言葉かもしれない。論理で割り切れない何かを認め、技術や戦術以外の人間性を大事にする“カズキ流”を、選手なりに感じるところがあるのだろう。

佐藤監督は言う。
「高校のときはやっぱりきつかったという記憶があります。サッカーに関してはあまり学べなかった。ただ、人間として筋を通す、どんな状況でもブレずにあるべき方向に進んでいく力は身についた。あの高校時代がなかったら、

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