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Interview 近藤祐介さん/その1「小学5年生で中学生の試合に出始めたときは血だらけでした」

かつてFC東京などでプレーし、2016シーズンかぎりで現役を退いた近藤祐介さん。現在はスクールで少年の指導をしながらときおり応援番組『Ole! FC東京U-23』(レインボータウンFM)の解説のためにFC東京U-23のホームゲームを訪れている。その近藤さんを、昨年末に直撃。ご自身のことから育成の現場、そしてFC東京U-23について、いろいろとお話をうかがった。第1回はプロ選手としての近藤祐介がいかに育まれたかというところを無料公開。それではどうぞ。

――J1初ゴールが2003年セカンドステージ第6節、アウエーのvs.ベガルタ仙台戦でした。
近藤祐介 ミヤさん(宮沢正史)がフリーキックを蹴った、あれですよね。疑惑のゴールと言われた。
――疑惑のゴールと言われた。当たっていなかったんじゃないか説もあったという。試合後は「フリーキックに走り込んで、被ってしまったと思ったら、かすって入った」と言っていますが。
近藤祐介 すごいことを言っていますね。ミヤさんには「おれのゴールだ」と言われました。
――さわった感触は?
近藤祐介 さわった感触はありました。
――ああいう“かすった”ゴールは、コースが大きく変わらないと、最後にフィニッシャーが触れているのか否か、わかりにくいですよね。
近藤祐介 まあ、冗談めかして言えば“喜んだもの勝ち”だとも思います。
――ほかのゴールも調べ直すと、ボールの落ち際にうまく入り込んでいたり、やはり点を獲れるポジショニングや動きを心がけていたようです。だから結果的に疑惑のゴールと言われるような場面が出てきたのではないかなと思っているんですが。
近藤祐介 そこにいることが大事ですね。でもフォワードの感覚があったかどうかと言われると、あまり自信はないですよ。
――高校のときにコンバートされたという話でしたね。
近藤祐介 1年のときにはボランチで試合に出ていました。遡ればセンターバックもやりましたし、すべてのポジションを経験しています。足許のテクニックがあるというよりは、ロングキックで遠くに飛ばすことができ、走るスピードが速い選手でした。あまり遠くに蹴ることができないチームメイトが多いなかで、両足で蹴ることができた点はバックスで起用される理由になったと思います。ボランチでの起用もたぶん、対人に強く、ひとを潰せる、というところがあったんでしょうね。ある程度つなげるし。
――身体能力が高かったのと同時に、習得した基礎技術のおかげでしょうか。
近藤祐介 練習をだいぶやりましたから。下手だったので、ぼく。ひとの10倍練習しないとだめだと言われながら、それをすなおに実践して。高校に入った時点で、トラップとパスだけは自分がいちばん巧いと思っていました。
――基本に関しては才能云々よりもやはり練習量?
近藤祐介 練習です。もともと巧い選手もいるかもしれないですけど、でもそれはひと握りだし。ちょっとやったらすぐできる天才はいるけど、でも基本は反復ですよ。やらないと巧くならないです。自分では何もできないと思うくらいに下手だったんですけれども、それでもある程度の技術は身に付けましたからね。いまの子たちは、なかなかそれができない。
――それというのは反復練習のことですか。
近藤祐介 はい。親御さんの影響もあるかもしれないですね。たとえば、トラップとパスをやるのと、ドリブルとシュートをやるのとどっちがいいですか。親の視点で。
――地味じゃなくて見た目にわかりやすいのは、ドリブルとシュートですね。
近藤祐介 ですよね。そういうことなんです。マーカーを置いてドリブルからのシュートをやらせておけば、派手ですし、上達の度合いもわかりやすい。対して、トラップは一つひとつやっていかないといけないから時間がかかるんですよ。ドリブルは目立つし、子どもも親御さんも喜びますけれども。
――やった気になれるのは確かです。
近藤祐介 シュートが決まればやっぱりうれしくて場も沸きますしね。ぼくのときはそういう環境ではなかったから、トラップとパスの反復練習をしていました。結果はなかなか出ないですけど、でも、一度身に付いたら一生忘れないと思います。小学校のときに、どんなパスでもトラップできましたし。3メートル、4メートルくらいの距離の強シュートも抑えられた。それができなかったらサッカーはできないと、素人のおやじが言っていたので(笑)。ウチはおやじがスパルタだったから。
――お父さんに感謝ですね。
近藤祐介 そのときはまったく感謝の気持ちなんてなかったですよ。ブチきれそう、みたいな。でも自分から「サッカーをやる」と言ってしまったから、サッカー自体をやめることはできなかったし。というか、サッカーをやめようと思ったことは一度もないですよ。ただ、逃げたいと思ったことはあります。
――「逃げたい」というのは、いつ?
近藤祐介 小学校のとき。中一まではさんざんだったので。理由はあるんですよ。試合に勝っても自分のプレーが悪かったら怒られる。チームとして云々ではなく自分ありきで、親に褒められるか否かが重要だったので、監督にどう評価されるかとは別の問題でした。でも結果として、そのおかげで伸びたと思います。滅多に褒められたことはないですよ。ほんとうに。全然。中二くらいからかな、あまり怒られなくなったのは。中一で県のトレセンに行ったときは敵なしでした(笑)。それで、最後に試合をしたんですけど、自分のチームに、ちょっと力の落ちる選手が3人入ってきて、3点獲られて負けたんです。ぼくは負けていいとは教わっていなかったので、試合後、トレセンの監督さんに、生意気にも「どうしてあの3人を入れたんですか」と言いに行ったんですよ。まあ、その監督さんには「おまえならジェフでもレイソルでもやれる」とは言っていただきましたけれども。そういう感じでした。
――県トレセンよりもふだんの環境のほうが水準が高かったのでは?
近藤祐介 そう思います。なんなら、小学5年生のときから中学生の試合に出ていたくらいですから。チームの人数が足りなかったという事情もあるんですけど、やっぱり、上でやらないと天狗になるじゃないですか。小学校で、自分の所属チームでいちばん巧い、それを鼻にかけていたら伸びないし。それが嫌だったから。小学生で体格がでかいと言っても、さすがに中学生にまじると血だらけになる(笑)。最初は擦り傷、切り傷、打撲とかふつうにありましたよ。でもおやじはそっちのほうがうれしいんです、戦っているから。なにしろ、ふだん弾き飛ばされない自分が10メートルくらい飛ばされるんですよ。ちょっと大袈裟かもしれないですけど。その時期がいちばん伸びたと自負していますし、おやじもそう言っていました。
<つづく>

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◎後藤勝(ごとう・まさる)
東京都出身のライター兼編集者。FC東京を中心に日本サッカーの現在を追う。サカつくとリアルサッカーの雑誌だった『サッカルチョ』そして半田雄一さん編集長時代の『サッカー批評』でサッカーライターとしてのキャリアを始め、現在はさまざまな媒体に寄稿。著書に、2004年までのFC東京をファンと記者双方の視点で追った観戦記ルポ『トーキョーワッショイ!プレミアム』(双葉社)、佐川急便東京SCなどの東京社会人サッカー的なホームタウン分割を意識した近未来SFエンタテインメント小説『エンダーズ・デッドリードライヴ』(カンゼン)がある。2011年にメールマガジンとして『トーキョーワッショイ!MM』を開始したのち、2012年秋にタグマへ移行し『トーキョーワッショイ!プレミアム』に装いをあらためウェブマガジンとして再スタートを切った。

 

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