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「記録達成のキングカズに歩み寄られた男」ジャンボ大久保もまた、カリスマへの路を歩むのか【2018 Jリーグキックオフカンファレンス/トーキョーワッショイ!J+】

最年長ゴールのギネス認定セレモニーで登壇したカズこと三浦知良。

カズの姿を見届けようとやってきたジャンボに、カズから歩み寄ってきた。

群馬のユニフォームに袖を通した大久保哲哉。

横浜FCの“カズ”三浦知良が昨年3月12日のJ2第3節vs.ザスパクサツ群馬戦で決めたJリーグ最年長得点がギネス記録に認定され、そのセレモニーが2月15日の「2018 Jリーグキックオフカンファレンス」でおこなわれた。その姿をひと目見ようと、メディアが大勢押しかけている仕切りの右端に、今シーズン、群馬に移籍した“ジャンボ”大久保哲哉が歩を進めると、カズはそれに気づいて眼で合図を送る。そして舞台袖に下がっていくときには、自ら大久保に歩み寄り、挨拶を交わした。カリスマ性あふれるカズのふるまいに感激の面持ちだった大久保に、群馬ブースで話を訊いた。
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降格してきたザスパクサツ群馬を昇格させる、いわば逆境のシチュエーション。かつてJFLの企業チーム、佐川急便東京SCのエースストライカーとして天皇杯でJクラブに立ち向かったときの雄々しさを思えば、このような状況には期するものがあり、心中に燃えるものがあることは明白だった。
「そうですね、言い方を変えるとそのこと(昇格)しか考えていない。チームとして昇格という目標から逆算してやらなければいけない一年です。厳しいシーズンになると思いますけれども、一試合一試合、懸命にやりたい」
まだ190cm級の日本人ストライカーが存在しなかった時代の釜本邦茂、1994年の米国ワールドカップをめざした日本代表でポスト役となった高木琢也など、チームが劣勢でも前線で収めて時間をつくることができ、頼りになる強さを持つフォワードは一定の頻度で出現する。大久保哲哉もその類だ。加えて、JFLの佐川急便東京SC時代に発現した得点感覚や決定力はどのカテゴリーでも通用してきた。群馬でもその能力が求められているのではないか――と訊ねると、大久保は認めた。
「まずは試合の展開でチームが苦しい状況のときにもボールを収められるか。おっしゃるとおり、それをマイボールにできるかできないか、味方につなげられるかつなげられないか、些細なところで勝敗の行方が決まると思います。そこは強く意識したい。自分はフォワードですから、ゴールを決めることがいちばんの仕事になりますけれども、味方の選手を活かすプレーであったり、それ以外にも献身的な前線守備、あるいはセットプレーでの守備など、そういうところも毎試合しっかりやっていって。それが最終的に、昇格につながればいいと思いますし、昇格しなければいけないと思います」
プレーの面のみならず、献身的な姿勢に見られるように、キャリアを積んできてチーム全体について考えることができるようになった彼に対しては、人間的な面での期待も大きい。
「年齢的にもチーム内でいちばん上ですから。それを意識しすぎることなくやらなきゃな、とも思う反面、周りからそういう見方をされることも承知しています。やはりチームがぼくを必要として獲得してくれたということの一端に、そういう(年長者としてのよさ)ところも少しは入っていると思うので、若い選手がプレーしやすいように、特長を出しやすいようなチームにしていきたいですね。要求だけではいけないんですが、要求ができる環境をつくれればよい集団になる。そういう雰囲気を醸成していきたい」
ギネスの表彰で登壇したカズが、ジャンボさんがステージ右端に来るなりすぐに気づいて目配せをし、下がるときにはわざわざ挨拶に来てくれたことに話題を変えると「破顔一笑」と言っていい笑顔が広がった。
「いやもう、ほんとうにありがたいです。カズさんには横浜FC時代にお世話になっただけでなく、いまだにお世話になっていますし、あのひとを毎日見ているうちに、そのサッカーへの情熱に接して考えさせられることが何度もありました。自分でもサッカーに対する情熱を持っているつもりだったんですけれども、こんなもんじゃだめだ、と思うくらいにカズさんはひたむきです。あの年齢までJリーグという日本の最高峰リーグで試合に出ていることもすごいのですが、それ以前に、試合に出るためのからだを毎日の練習で維持していること自体が、まずすごい。その努力、情熱があれば、あれだけできるんだな、と。それ以外にもすばらしいところは、もちろんたくさんあると思いますけれども、あのひとのサッカーに対する情熱は周りを動かしていくほどですから。kズさんの姿を目の当たりにして、ぼくらももっともっとやらなければと思い刺激になりますし、常にそういう熱い気持ちにさせていただける大きな存在です」
さらに「追いかけられる背中があるというのは、いいことですね」と水を向けると、大久保は熱い気持ちをJ2昇格にあらためて結びつけた。
「そうですね、毎日いっしょに二人組で練習をしましたし。何かを言うというよりは、カズさんは黙々と取り組むタイプですけど、そこに感じさせられるところがありました。いまた他チームの選手同士になりましたけれども、カテゴリーはちがえど同じJリーグでやらせていただいているなかこの刺激を受け、来年は同じ舞台で戦いたい」
いきなりJFLからJ1へと二階級上げるかたちで柏レイソルへと移籍した大久保のことを、いまだに佐川急便東京SCのファンは気にかけている。佐川東京とそのファンについて語るジャンボは、カズについて語るのにも劣らぬうれしそうな顔でかつての記憶を辿った。
「(佐川急便東京SCと佐川急便大阪SCが)合併してSAGAWA SHIGA FC(初年度のみ佐川急便SC)となって以降のことは詳しくは知りませんけれども、2005年と06年に佐川東京でプレーして、06年には得点王となり、自分のサッカーキャリア、自分の人生のなかでも、佐川急便東京というチームに所属したことはプラス以外の何ものでもない。個人的に思い入れのあるクラブなので、なくなってほしくなかった。会社の都合もありますし仕方のないことですけど、いい思い出。あのときのことを常に思い起こしながら、サッカーの日々を過ごしています」
企業チームの佐川東京から再出発を果たし、カズの薫陶を受け、来る3月9日に38歳の誕生日を迎える大久保も、いまや立派なカリスマだ。その存在感で群馬を浮上させられるか。重ねてきたキャリアが醸し出す味に注目だ。

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◎後藤勝(ごとう・まさる)
東京都出身のライター兼編集者。FC東京を中心に日本サッカーの現在を追う。サカつくとリアルサッカーの雑誌だった『サッカルチョ』そして半田雄一さん編集長時代の『サッカー批評』でサッカーライターとしてのキャリアを始め、現在はさまざまな媒体に寄稿。著書に、2004年までのFC東京をファンと記者双方の視点で追った観戦記ルポ『トーキョーワッショイ!プレミアム』(双葉社)、佐川急便東京SCなどの東京社会人サッカー的なホームタウン分割を意識した近未来SFエンタテインメント小説『エンダーズ・デッドリードライヴ』(カンゼン)がある。2011年にメールマガジンとして『トーキョーワッショイ!MM』を開始したのち、2012年秋にタグマへ移行し『トーキョーワッショイ!プレミアム』に装いをあらためウェブマガジンとして再スタートを切った。

 

■J論でのインタビュー
「ライターと編集者。”二足の草鞋”を履くことになった動機とは?」後藤勝/前編【オレたちのライター道】

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