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平山相太さん、現役引退。セレモニー後の囲み取材を締めくくる言葉は「最後ですね。がんばってください」【J1第2節/無料記事】

スーツを着てマイクスタンドを握りしめる平山相太さんは、ロックアーティストのように恰好よかった。
Photo by Ayano Miura (C)三浦彩乃

ベガルタ仙台とFC東京双方のファン、サポーターに向かい引退に際しての決意を述べた平山相太さん。引退セレモニーの終わりには羽生直剛、石川直宏の両氏から花束を渡された。
「やめると決めて、自分が引退すると話して。ふたりも直前に引退したタイミングで。そのときは『まだやれる』と、いろいろ引き止めてくれたんですけど、きょうはもう『おつかれさま』という言葉をいただきました」
少し訊ねただけで多くの答えが返ってくる。爽やかで自然な受け答えだった。

写真を提供してくれたカメラマンの三浦彩乃さんによれば、引退セレモニーに臨むピッチ上の平山相太さんは感極まる様子だったという。しかし味の素スタジアムのミックスゾーンへと姿をあらわしたときには、平山さんはもうすっかり穏やかな表情になっていた。
第一声は「最後の囲みですね」。久しぶりに味の素スタジアムで大勢の記者に囲まれることを懐かしく思っているようだった。
囲み取材中、いちばんの爆笑は、自身のチャントが久保建英に受け継がれていることについて「恐縮です」と答えたとき。「巧いというか、才能があるなと思いました」。
がんばれ、と送り出される立場なのに、囲みの輪が解けるときに発した言葉は「最後ですね。がんばってください」。
この日の平山さんは終始、あらゆる人々に気を配っていた。

「(挨拶の文言は事前に)ある程度考えて。ベガルタは一年だけ、東京は長いこと在籍していましたが、両クラブに感謝の気持ちがあるので、それは半々というか。ちゃんと伝わったかわかりませんけれども」
平山さんによれば、涙はなかったという。
「泣くかな、とかはありましたけど、全然泣かないというか。緊張していました。緊張しすぎて、ちゃんと話さなきゃ、というのがいちばんでした」

仙台に移籍後は負傷により試合に出ることすらままならず、帰ってきた味の素スタジアムで、スーツを着てピッチを踏みしめることになった。
「サッカー以外で味の素スタジアムのピッチに立つことはありませんでした。もう最後、ほんとうに最後、自分が家族だと思っていた場所に立てたので、とてもうれしかったです。(平山コールは)すごく懐かしい。(移籍後)一年しか経っていないんですけど、その一年がすごく長く感じ、懐かしく感じました」
人生初だという胴上げでは「みんなに重いと言われました」。ともかくも、平山さんはこの一日をうれしく思っているようだった。
「ああいう映像をつくっていただいたり、こういう引退セレモニーを催していただいたり、それはサッカーをやっていてよかったと思います」

話し方もかなり上達したように思えるが、謙遜なのか「自分は話すことが下手なので」と前置きして、平山さんはこれからの学生生活に向けた心境を語った。
「これから話す勉強と、サッカーの勉強と、勉強しなければいけないことがたくさんあり、ひとつずつやっていければと思っているので、お手柔らかにお願いします」

セレモニーの映像にもあったように、国立競技場で多くの印象に残るゴールを積み重ねた巨人は、自身が国立男であることをあらためて問われると、それを認め、そして後進に期待を寄せた。
「(思い出に残る試合を)ひとつだけ挙げるとすればナビスコ優勝。まあ、新国立になるので、東京オリンピックからまた“新国立男”が出てくると思います」
国立男から新国立男へ。青赤の、そして日の丸の歴史はつづいていく。

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『青赤20倍!トーキョーたっぷり蹴球マガジン』は、長年FC東京の取材を継続しているフリーライター後藤勝が編集し、FC東京を中心としたサッカーの「いま」をお伝えするウェブマガジンです。コロナ禍にあっても他媒体とはひと味ちがう質と量を追い求め、情報をお届けします。

 

 

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●MATCH 試合後の取材も加味した観戦記など
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●新東京書簡 かつての専門紙での連載記事をルーツに持つ、ライター海江田哲朗と後藤勝のリレーコラムです。独特の何かが生まれてきます

そのほかコラム、ニュース、などなど……
新聞等はその都度「点」でマスの読者に届けるためのネタを選択せざるをえませんが、自由度が高い青赤20倍!トーキョーたっぷり蹴球マガジンでは、より少数の東京ファンに向け、他媒体では載らないような情報でもお伝えしていくことができます。すべての記事をならべると、その一年の移り変わりを体感できるはず。あなたもワッショイで激動のシーズンを体感しよう!

 

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◎後藤勝(ごとう・まさる)
東京都出身のライター兼編集者。FC東京を中心に日本サッカーの現在を追う。サカつくとリアルサッカーの雑誌だった『サッカルチョ』そして半田雄一さん編集長時代の『サッカー批評』でサッカーライターとしてのキャリアを始め、現在はさまざまな媒体に寄稿。著書に、2004年までのFC東京をファンと記者双方の視点で追った観戦記ルポ『トーキョーワッショイ!プレミアム』(双葉社)、佐川急便東京SCなどの東京社会人サッカー的なホームタウン分割を意識した近未来SFエンタテインメント小説『エンダーズ・デッドリードライヴ』(カンゼン)がある。2011年にメールマガジンとして『トーキョーワッショイ!MM』を開始したのち、2012年秋にタグマへ移行し『トーキョーワッショイ!プレミアム』に装いをあらためウェブマガジンとして再スタートを切った。

 

■J論でのインタビュー
「ライターと編集者。”二足の草鞋”を履くことになった動機とは?」後藤勝/前編【オレたちのライター道】

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