後藤勝責任編集「トーキョーワッショイ!プレミアム」

第三十六信『観客動員を考える』海江田【無料記事】【新東京書簡】

激寒だったアビスパ福岡戦、試合30分前のコンコース。この日はつらかった。

第三十六信 観客動員を考える

■クラブを離れても
子どもの頃、広場で野球やサッカーをやっていると、いきなり入ってきて混ざりたがる近所のおっさんがいたものだ。後藤さんは都会っこだから、ちょっと環境面が違うかもしれない。おれの育った福岡の田舎町では珍しくなかった。

闖入者の登場によって一時的に盛り上がったりするけれども、次第にじゃまくせえと煩わしくなるのが常だった。まるで宇宙人を見るような感じで、自分はああはならないだろうと思った。

ところが、わからないものだね。いまのおれ、あのときの怪しいおっさんとメンタル的にはたぶん70%くらい一致している。その自覚がはっきりとある。

ある日、クラブハウスの前にサイン待ちの小学生がふたりいた。非公開練習が日常となり、練習場に訪れるファンはめっきり減っている。なおさら貴重に思え、誰を待ってんの? と声をかけた。

聞けば、ふたりはこの春から中学に上がり、ひとりはこないだまでヴェルディジュニアにいたという。そのへんの詳しい事情に触れるのは憚られた。アカデミーの生存競争の結果、あるいは自分の意志か。仮に失望があるとすれば、その大きさはいくら子どもでも大人より小さなものとは限らない。生きる世界が狭いぶん、小さな身体いっぱいに満たしている可能性も考えられた。

ベンチに座っておしゃべりをしているうち、共通の知り合いの存在が判明し、一気に距離が縮まった。そして、「(井上)潮音くんと林(昇吾)くん、まだかなあ。ちょっと、何してるのか見てきてくださいよ」などと、ぬかしやがる。これだからガキは。気を許せばすぐにつけ上がると舌打ちするが、先に接触を図ったのはこちらのほうだ。おれも内部には入れないんだ、と説明してやった。

なんの気なしに先の目標を訊ねると、「全国大会!」と少年は胸を張る。ランド通いの日々が終わっても、トップの選手に憧れ、変わらずにファンでいてくれるのはありがたいことだ。もし自分だったら、背を向けてしまう気がする。

ロティーナ監督は、たとえばFCバルセロナのようなクラブを目指して発展していくために、何が大切なのかを問われ、こう語った。

「バルサは明確なプレーモデルを導入し、プレーの方法を世界基準で捉えています。ただし、そのすばらしさは、ピッチ内だけにとどまりません。選手に与える連帯や協力の価値観がすばらしく、スペイン全土によい影響を及ぼしています。選手として、さらには人としても一流になるように価値観を植えつけているのです。現時点でひとつ言えるとすれば、アカデミーの選手、プロの選手を問わず、クラブを離れたあともずっとファンでいてもらえる場所にしていくことでしょうね」

最後の言葉が重く響く。これまで東京ヴェルディでは、長い歴史のなかで数え切れないほどの少年少女、プロ選手がプレーしてきた。この思想を実現できていれば、違った現在があったに違いない。

■J1への準備はいまから始めないと

2月25日 J2第1節 ジェフユナイテッド千葉戦 9,400人
3月11日 J2第3節 松本山雅FC戦 8,812人
3月21日 J2第5節 アビスパ福岡戦 3,048人
3月25日 J2第6節 モンテディオ山形戦 4,336人
※1試合平均6,399人、会場はすべて味の素スタジアム。

これが現時点の今季入場者数だ。福岡戦は雨に加えて気温4.0の寒さだったから参考外として、その次の山形戦も4,000人台にとどまった。人気カードの千葉戦、松本戦をすでに消化し、残りで集客の見込めるアルビレックス新潟戦はあいにくの平日開催。このままではまずいという気がしている。

なお、2017シーズンは前年比+800の1試合平均6,206人。現在、チームは5位につけており、昨季と同様に昇格争いに絡んでいくだろう。この数字を下回るようなことがあれば、クラブのマイナス成長を意味する。

今年の新体制発表会見で、観客動員の目標、および施策について羽生英之社長に訊ねた。

「年々、微増、微増ではありますけど、応援してくださる方が増え、ホームタウンの後押しも大きくなっているのを感じます。観客動員数の目標は、ここまでやらなければいけないというのは、いまのところは正直思っていません。継続的に少しずつ輪が広がっていくことが大切だと思います。取り巻く環境が変わってきていて、スポンサーになっていただける方、応援してくださる方が増えている実感があります。私たちがブレずに同じコンセプトを持ってクラブ運営をしてきた成果であり、それを変えるつもりはありません。お答えになっていないかもしれませんけど、引き続き継続してコツコツと歩んでいきたいと思います」

言いたいことは理解でき、継続の重要性は論をまたない。だが、チームは明確な目標を掲げ、それに向かって邁進する。プロとして、最終的に結果で評価を下される。であるなら、経営サイドも具体的にわかりやすい指針を示すのが筋だと思う。

Jクラブの成功例の多くは、目標を広い範囲で共有し、未達に終わった場合は何が不足していたのか、または過剰だったのかを究明し、リトライの繰り返しだ。しゃにむにJ1を目指すのはいいとして、いざ上がったときに備え、いまから手をつけておかなければ間に合わない。そこがはっきりすれば、知恵を絞って協力を買って出るだろうサポーターをおれは何人も知っている。

後藤さんに聞きたい。FC東京も近年は入場者数が頭打ちの様子ですけど、このあたりの移り変わりや対策はどうなんですかね。

『スタンド・バイ・グリーン』海江田哲朗

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「近未来の東京を舞台にしたサッカー小説・・・ですが、かなり意欲的なSF作品としても鑑賞に耐える作品です」
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「クラブ経営から監督目線の戦術論、ピッチレベルで起こる試合の描写までフットボールの醍醐味を余すことなく盛り込んだ近未来フットボール・フィクション。サイドストーリーとしての群青叶の恋の展開もお楽しみ」
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◎後藤勝(ごとう・まさる)
東京都出身のライター兼編集者。FC東京を中心に日本サッカーの現在を追う。サカつくとリアルサッカーの雑誌だった『サッカルチョ』そして半田雄一さん編集長時代の『サッカー批評』でサッカーライターとしてのキャリアを始め、現在はさまざまな媒体に寄稿。著書に、2004年までのFC東京をファンと記者双方の視点で追った観戦記ルポ『トーキョーワッショイ!プレミアム』(双葉社)、佐川急便東京SCなどの東京社会人サッカー的なホームタウン分割を意識した近未来SFエンタテインメント小説『エンダーズ・デッドリードライヴ』(カンゼン)がある。2011年にメールマガジンとして『トーキョーワッショイ!MM』を開始したのち、2012年秋にタグマへ移行し『トーキョーワッショイ!プレミアム』に装いをあらためウェブマガジンとして再スタートを切った。

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