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晒される素の力でどちらが上回るのか。疲労のピークで迎える多摩川クラシコ、長谷川健太監督は「ぶっ倒れるまで戦ってもらうしかない」【J1第13節多摩川クラシコ前日レポート】

対策により若干の上積みをしたとしても蓄積疲労によるパフォーマンスの低下がプラスぶんを上回ってしまうなら、その策の意味は薄れる。リーグ戦のみの連戦の最後となるJ1第13節で、真の力が試される。

川崎フロンターレは多くのメンバーを入れ替える可能性が高いという情報も伝わってきている。もしそうなった場合は、控えの選手にまで十二分にコンセプトが浸透しレギュラーと同等のパフォーマンスができるか否かという意味で川崎の底力が試されることになる。森重真人は「フロンターレには負けたくない」と気持ちを見せながらも「相手が誰が出ても質が高いチーム」と警戒した。フレッシュな選手であれば、疲弊したレギュラーよりも高いクオリティを示すのかもしれない。大久保嘉人は特に脅威となるだろう。

いっぽう、一部、疲労が懸念されるポジションを入れ替える可能性があったFC東京は、長谷川健太監督が「リーグ戦5連戦の最後なので、ぶっ倒れるまで戦ってもらうしかないかなと思っています」と発言したことも考え合わせると、ほぼ前節までのメンバーを中心にした11人でキックオフに臨むことが濃厚になってきた。東京の場合は、極度に疲れたなかでも最低限必要なチーム力を維持、ベンチスタートのサブメンバーが支えになるか否かという意味で、底力が試されることになる。
いずれにしても試験前の一夜漬けのような策を講じたところで勝率が大きく変動することはないだろう。これまでどれだけ鍛えてきたのか、日頃の努力が問われる一戦だ。

「戦術がない」と長谷川監督を批評する言説も一部にはあるようだが、戦術がよかったとしても技術とフィジカルとメンタルが欠けていれば高い水準の試合で戦術を正しく遂行して勝利を得ることはできない。だからそもそも批判するポイントがずれているように思えるが、これを少々訂正して「長谷川監督の戦術は複雑ではない」とすれば、まだ話は通じそうだ。タスクが多かったとしても何をすればよいかが理解しやすく、用意されている約束事が個を完全には阻害しないものであれば、個を発揮する余地が残る。だから現状のチームは個の力を最大限に引き出し、活かす戦い方を実践できている。
もっともわかりやすいのはもちろん2トップだ。彼らの高い守備意識、勤勉さ、スピード、動き出しと動き直し、サポート、連動、パスワーク、ドリブル、フィニッシュ――を、ディエゴ オリヴェイラと永井謙佑は互いに活かし合っている。永井は言う。
「ディエゴとはお互いのよさもわかっている。推進力をもったディエゴのよさを出せるようにしたい。周りが活かしてくれるパスで二次攻撃、三次攻撃を重ねる」
戦術をどう定義するかにもよるが、選手の力を引き出し組み合わせて集団としての力も確実に高めるすべであれば、ケンタ東京は備えている。それを評論家がなんと形容しようが、勝ちつづけるかぎり内実が存在する証明になる。

巧い選手であれ攻撃の選手であれ激しくプレッシャーをかけて守る現代サッカーに2トップとサイドハーフが適応している東京は、いま戦術と技術とフィジカルとメンタルが調和している状態にある。だが、能力値を下げる材料、つまり

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