後藤勝責任編集「トーキョーワッショイ!プレミアム」

「負けず嫌いなんですよ、単純に」。己をけしかける能力を持つ室屋成はどこまで飛び出していくのか【今週の小平】

 

気の強さはプロ向きだ。


◆逆境をきっかけに
 
 速さ、高さといった身体的な特長。足許の技術。戦術眼。判断力。そのような項目ではなく、ふだん選手を評価するときになかなか用いられない指標で長友佑都を褒めたのは、ヴァンフォーレ甲府時代の城福浩監督だった。いわく、長友には、己の成長を促し、目標に到達するよう自身を動かしていく“能力”がある、と。
 言われてみれば、明治大学で確固たるポジションを得られない状況から日本代表に定着するまでになり、あるいはイタリアに渡ってから左足のクロスを磨いて左サイドバックとして立った過程には、後天的な努力がある。活躍の場を得ていない現状を打破するためにどうなるべきかという着想があり、そこに到達するまで諦めずにトレーニングを継続するよう己を仕向けられること自体を能力として捉えて評価するべきという考えは理解できる。
 もちろん、一定以上の水準に昇りつめるアスリートならば誰でも備わっているものなのだろうが、長友の場合はそれが顕著で、肉体的な強さよりも先に語られるほどのものだったということなのだと思う。
 
 長友とまったく同じではないのかもしれないが、室屋成にも似た性質があると感じていた。
 明治大学在籍時に特別指定選手としてFC東京に参加、年代別代表の肩書があり、容易に出場機会を得られるかと思ったら、まったくプレーする機会がなかった。そこから東京に正式加入し、ポジションを獲得するまでの猛反省。そして今春、リーグ戦の先発メンバーから一度外れ、長谷川健太監督の要求を充たし、超攻撃的なプレースタイルを磨き上げて先発に復帰するまでの巻き返し。
 
 こうした期間の起点と過程に何があるのか。あらためて室屋に訊ねると、飾りのない言葉が返ってきた。
「けっこうぼく、目標を立てないタイプで。うまくいかなかったときは、そこで落ち込むのではなく――負けず嫌いなんですよ、単純に。試合に出られないであるとか、逆境に陥ったときに『こんなところで終わりたくない。絶対、見返したる!』という気持ちがすごくわき出てくる性格なんです」
 
 まず目標を立てるのかと思っていたので、これは予想外だった。
 室屋はさらに言葉をつづけた。

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