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Interview 久保征一郎「ユースからJ3に来ることができるという幸せを噛み締めながら、できることを精一杯やる」【J3第29節第2報/無料公開】

 
◆連戦となった久保
 
 J3第29節に臨むメンバー表に、驚くべき名前があった。
 久保征一郎。
 昨日27日、延長戦までもつれ込んだJユースカップ3回戦に先発し、10分ハーフの延長戦を含む110分間にフル出場したFC東京U-18の2年生フォワードだ。しかもPK2発に敗れるという負け方で大会から去らねばならない悔しさを味わった直後。短い途中出場でも心身の疲労が堪えて厳しいパフォーマンスになるのではないかと思われたが、久保の動きはハーフタイムの練習でもキビキビとしていて、実際に後半29分からの20分弱、何事もなかったかのように平然とプレーしていた。もちろん、これで3試合めの出場となるJ3の水準に戸惑うこともない。
 

連戦の疲労を感じさせなかった久保征一郎。


 185センチの長身を誇る久保は、U-18で途中出場する場合は、高さを活かしてボールを呼び込み、チームに勢いをつけ、流れを変えるスーパーサブとして機能する。昨日の試合では、ピッチ状態を考慮して久保にボールを集める作戦を採ったことで先発し、最後までピッチに立っていた。
 この28日のJ3では、富樫を前に出すためだろう、左サイドハーフで出場したが、違和感はまったくなかった。
 
 試合後の久保に、西が丘にやってくるにあたり、どういう心境だったのかを訊ねた。
 
◆「ユースでできるけどこっちではできないということが、自分としてもいちばん悔しい」
 
――昨日110分出ての疲れはどうだったんですか?
久保征一郎 その面については安間(貴義トップチームコーチ兼FC東京U-23監督)さんと話しました。そこ(疲労)に関しては、自分自身のからだと相談しながらになりますけれども、自分はユースからこっち(J3)に来ることができるという幸せを噛み締めながら、できることを精一杯やろうと心がけています。
――悔しい思いをしたことはモチベーションになっていますか。
久保征一郎 昨日、ほんとうに悔しい思いをして。でもそれを引きずってJ3に来るのではなく、ここではまた自分がいいプレーをするのだという気持ちで、この試合にかぎらず毎試合取り組んでいるつもりなので。そこはしっかり切り替えることができたのではないかな、と思います。
 こっちはこっちでいい刺激になりますし、それをユースに帰って還元することが自分の仕事だと思っています。チームのプラスになるように働きかけていきたい。
――ユースで途中出場をしたときにはボールを呼び込める、チームの雰囲気を変えられると思います。J3でもあのような活躍をしていきたいですか。
久保征一郎 そうですね、J3でももっとパワーを持ってゴールに向かっていけるような選手になれば、トップの長谷川健太監督に見てもらえたり、いろいろなひとに評価してもらえるようになるのではないか、と思っています。ユースでできるけどこっちではできないということが自分としてもいちばん悔しいので、日頃の練習から自分の技術を高めてやっていきたいですね。
 
 芳賀日陽もJ3に来たとたん、アウエーのときのvs.藤枝MYFC戦で相手をきりきり舞いさせたことがあった。高円宮杯プレミアリーグは社会人や下手をすれば大学とも渡り合える水準に来ていて、JFLとあまりレベルに差がないJ3でも、ユースの選手がよく戦えているケースは珍しくない。ユースサッカーは久保がこうした考えを持ってむしろ当然の状況にある。
 高円宮杯の制度改革が成果を生んでいることは、U-19日本代表やU-16日本代表の戦いぶりを見てもあきらかだ。
 
――こちらでサイドハーフをやることは、それはそれで経験になりますか。
久保征一郎 やっぱり自分の持ち味はゴール前での仕事だったり、前を向いたときにいろいろなアイデアを出せること、攻撃にスイッチを入れられることだと思っているので、前めで使ってもらえることはありがたいです。サイドハーフというポジションですけど、自由に動けるといういい面もあるので、あまり窮屈だとは感じていません。どこのポジションでも自分のよさを出せる選手になりたいです、これからは。
 
 鹿児島の太陽SC U-15でプレーしていた中学時代とは異なり、からだの使い方など、FC東京U-18で学んだことが多いという。九州から東京にやって来て、プレミアとJ3で成長を実感し、それがやる気につながっているようだ。
 U-18に戻ったら、2年であっても学年に関係なく周囲に語りかけ、チームを引っ張っていきたいと、責任感を抱く久保。残るプレミア3試合での活躍にも期待したい。
 
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